〜〜波待ち日記〜〜 ニューボード許可の難易度はダブルオーバー
9月5日(日)
ロックダウンによる外出規制のためノーサーフ
僕の誕生日まであとひと月ちょっと。密かに「今か今か」と待ち望んでいた質問を、妻が投げかけてきた——
「誕生日プレゼント、何がいいの?」
——そして、僕はこれまで脳内で何度も練習を繰り返してきた答えを返す。なるべくナチュラルに聞こえるように。
欲しいのは、サーフボード ではなく……
「んー、新しいサーフボードを自腹で買っていい権利かな(テヘペロ)」
よし。うまく言えた。
ありがとう、気持ちは嬉しいよ、でも僕が欲しいものは割と高価だし、だけど本当に喉から手が出るほど欲しいものだから、「自腹で買う権利」という、謙虚な姿勢で提示させてもらったよ、という僕の真意が、これで痛いほど伝わったはずだ。
ところが——
「え?今1本あるよね?あれじゃダメなの?おまけに日本にもあと5本ぐらいあるよね?まだ買う気なの?どこに置くつもりなの?日本にあるやつはどうするの?」
怒涛のような妻の口撃を浴びながら、僕は、謙虚な本音など1ミリも伝わらなかったことを悟ったのである。
今のサーフボードだけじゃ、ダメじゃないけどダメなんだよ
という言葉は、妻にはおそらく一生理解してはもらえないだろう。
特に、パートナーがサーフィンをやらない家族持ちサーファーにとって、おニューのボードの購入許可は、驚くほどハードルが高い。波で例えれば軽くダブルオーバーである。
サーフボード新調がなかなか許してもらえない理由
それはそうだろう。
サーフボードは決して安くない。家のローンやら学費やらやりくりしている家庭から、それを購入する費用を捻出するのは簡単じゃない。
おまけにサーフボードはデカい。例えショートボードでも、180cm前後の硬い物質の存在感たるや、都内のマンション室内などでは相当な圧迫感となるだろう。
そして、サーフィンをやらない人からしたら、サーフボードの違いはもちろん、波によってサーフボードを使い分けたいサーファーの心理など、永遠に理解できないだろう。
そもそも、自分の現在のスキルで、サーフボードの違いをシェーパーが意図するほど感じ取れているのか、という疑惑はある。それでもやっぱり、サーフボードを換えるたびに新たなサーフィンの世界が目の前に広がることを知っているから、我々家族持ちサーファーは、おニューボード入手の許可という、ぐりぐりに掘れたダブルオーバーの荒波に挑み続けるのである。
それにしてもみんな、どんな手を使って許可を取付けているのか、気になるところだ。
ダマテン
そもそもパートナーがサーフィンをやらない場合、家で使用ボードをソフトケースから出すことはほとんどない、という人も多いのではないだろうか。
そんな場合、おニューのボードをダマテンで買って、古いボードはショップに引き取ってもらい、同じソフトケースに新しいボードを入れて持って帰ってしまえばバレない、という人も結構いると思う。実際、自分の友人にもその手で定期的にボードを入手しているサーファーがいた。
かくいう僕も、何回かやったことがあることをここに告白する。
毎回、仕上がりをクリアに
さらに付け加えて言えば、この際見た目へのこだわりは一切放棄して、仕上がりを毎回クリアにしてしまえば、例え自宅でソフトケースからボードを堂々と剥き出しにしても、サーファーではないパートナーの目はごまかせるに違いない。
もちろん、この場合はデッキパッドは常に同じカラーリングにしなくちゃいけないとか、フィンのセッティングも毎回同じにする必要があるなど、デメリットも多いだろう。
パートナーに対するポイント稼ぎ
だが、ここまで挙げてきたやり方は、パートナーを騙すことが前提になった、非常にネガティブな方法と言わざるを得ない。
結局のところ、一番有効なのは、普段から常にパートナーに対して尽くせるか、それによって信頼を勝ち取れるか、ということに帰結するのかもしれない。
料理、洗濯、掃除、育児など義務めいたことだけではなく、パートナーをいかに幸せな気持ちにできるか。
これができていれば、家計が崩壊しない範囲であれば、自分が欲しいと思っったタイミングで、欲しいボードを入手できるようになるのかもしれない。
かもしれない、というのは、僕はまだまだ修行が足りないらしく、そうなれていないからに他ならない。
さて、今年の誕生日、本当に他のプレゼントは要らない僕は、「自腹でニューボードを買う権利」を手に入れることができるのだろうか——?
乞うご期待。
〜〜波待ち日記〜〜
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