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有休を使った旅行先でバイトした話

出張で京都に行った。
京都は大学生だった4年間を過ごした街である、
せっかくなのでまだ3日も取らなければならない有休を使って、3日間滞在することにした。

当時、実家のある横浜から京都に向かうときは夜行バスだったが、それが新幹線の自由席になり、指定席になり、今では会社の経費でビジネスマン向けの席(パソコンと電話が気兼ねなくつかえるらしい)に座って向かっている。
出世したものだ、偉そうに。
当時の自分がみたらガッカリするであろう。
きっとお金がないと言いながらまともにバイトもせず、喫茶店で御託を並べる人生を望んでいる。

そんなこんなで仕事の方はあっさりと終わり、大学6年生を向かえようとしている後輩を待っている。
6年目を向かえるだけのことはあり、普通の人とは時間の流れが全然違う。
まず集合の1時間前に「ちゃんと起きれました!」という報告が入る。そして、集合の2時間後に「すみません、寝てました!」出かける準備をしながらなのであろう、慌てた声色で電話が入る。
そして、なぜかその2時間後に現れる。
空白の数時間について言及することはない、これにイライラするような余裕のない人間はダサい思っている。懐の深い男でありたい。
新幹線の指定席で仕事をするような男に成り下がった今、苛立ちを感じるのも時間の問題かもしれないが。

現れるやいなや、彼がかつて働いていた飲食店の人手が足りてないという話を始めた。
今日、団体客が入っておりホールの人が足りてないからヘルプに来てほしいのとの連絡があったのだという。
せっかく先輩が京都に来たのにバイトしたいということか…彼にも生活があるのだから仕方がない。
話し合いの結果、二人でヘルプに入ることにした。会社員が有休を使って飲食店で働く。なんか違法っぽい匂いがしたので無給にしてもらった。
ビールを注いで顔にもタトゥーを入れちゃってる人に震えながら渡すというのが、主な仕事だった。
先輩も加わり、なんやかんやで6時間ほど働いた。人と話ながら、賄いを食べて、ビールを飲んで、タバコを吸って帰った。普段の仕事では味わえない圧倒的温かみ。誰かと一緒に食事するのってこんなに楽しかったっけ?

翌日、例の後輩はやっぱり来ない。
「このバイト代で誕プレ買います!」と意気込んでいたのに、最高の後輩である。
せっかくなので三条あたりを散歩することにした。
公園のシーソーで遊ぶカップルが目に入った。
当時、一番仲の良かった同期と2ヶ月前にフラれた元カノの三人で毎日のように遊んでいた。
同期と真顔でシーソーを永遠にこぎ、彼女がそれを見てゲラゲラ笑っていた。
僕もそいつも彼女を笑わせるのが好きだった。
同期は大学を辞め、疎遠になってしまった。
元カノのほぼ連絡をとっていない。
最後のやりとりは僕が間違えて彼女のカードを使ってアマゾンを支払ってしまい、身に覚えのない彼女は当然カード会社に連絡をして支払いを拒否。アマゾンからの連絡で気がつき、彼女とやりとりをとった。
結局、うまく連携が取れずアマゾンアカウントはBANされ、めでたくブラックリスト入りである。

シーソーでゲラゲラ笑えるほど仲が良かったのに、なぜ疎遠にになってしまったのだろう?
やはり新幹線の指定席で仕事をする男に成り下がったからだろうか。
まずい泣けてきた、The Birthdayでいうところの「涙がこぼれそう」である。
こんなことを考えてしまうのも、ヤツが今日も遅刻しているからだ。

さっき電話があったから1時間後には来るだろう。
早く来てくれと思ったのは初めてだ。

誕プレを買ってもらって、新幹線で帰ろう。
自由席だったらみんな許してくれるかな。

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