#5 びっくりすると、転んで動けなくなってしてしまう「気絶ヤギ」
気絶ヤギと呼ばれるヤギがいます。
アメリカのテネシー州が原産のヤギの品種で、英語では、fainting goats(フェインティング ゴート)と呼ばれます。
このヤギは、驚くと筋肉が10秒ほど凍りついたように動かなくなってしまうという特性を持っています。足がまっすぐにピンと伸びたままになってしまい、横向きにごろんと倒れてしまうのです。
これ、実は気絶しているわけではなく、意識はちゃんとあるんです。痛みはなく、10秒ほど転んだ後は、何事もなかったかのように普通に動けるようになります。
遺伝的の疾患
この特徴は、先天性ミオトニーと呼ばれる遺伝的の疾患が原因です。ミオトニーとは、「筋肉が一時的にこわばったままになる」という意味です。気絶ヤギは「ミオトニック・ゴート」とも呼ばれます。
そして大人のヤギより、子供のヤギのほうが倒れやすいんです。大人のヤギは長年ミオトニーを経験しており、慣れているので、ぎこちない足どりでも走りつづけることもあります。
先天性ミオトニーと呼ばれる、このような遺伝的性質は、ヤギに限らず、馬、犬、猫や人間にも起ることがあります。
なぜ絶滅していないのか?
びっくりすると動けなくなるということは、天敵に捕まりやすいと言うことです。天敵にすぐに食べられてしまうこの性質を持ったヤギが、なぜ生き残ってきたのでしょう?
1つめの理由は、羊を育てていた農家が気絶ヤギのびっくりすると動けなくなる性質を利用したからです。
羊の群れといっしょに気絶山羊を置いて、狼やコヨーテに襲われた場合の引きつけ役にしました。気絶ヤギは驚いて動けなくなり天敵に食べられてしまうのですが、そのあいだに羊は逃げることができます。
2つめの理由は、何かに登ったりジャンプしたりすることでも失神を引き起こすことが多いため、牧場や飼育小屋のフェンスを越えて脱走する可能性がとても低いからです。ペットや家畜として飼育しやすいんですね。
この2つの理由から、気絶ヤギは人の立場から見て都合が良かったので、繁殖を助けられました。
見世物
また、今では気絶ヤギが気絶する姿が見世物として注目されています。私たちは思わず笑ってしまいますが、ヤギたちにとってはとんだ迷惑ですね。気絶ヤギのYouTube動画は一千万回以上も再生されているものもあります。
こちらが「気絶ヤギ」が倒れている動画です。
気絶ヤギをペットにして見世物にすることに反対する人もいますが、人間が家畜やペットとして保護しながら飼育していなければ、天敵に殺されて絶滅してしまいます。
気絶ヤギの見たさに人が集まることによって、牧場の利益につながり、ヤギが保護できています。ここは、難しい問題ですね。
以上、かわいらしくも悲しい気絶ヤギのお話しでした。
他の記事、参考資料
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参考資料
『図説 世界史を変えた50の動物 』 エリック シャリーン (著)、甲斐 理恵子 (翻訳)
使用させて頂いた画像
Ashley Jaynes on Unsplash
bill fairs on Unsplash
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