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米議会がUAP対策条項可決。「リバースエンジニアリングもやりなさい」!?

米国議会は15日、7700億ドルの国防予算を決める、2022年度の国防権限法(NDAA)を可決。大統領署名を待つのみとなっている。
(追記:27日、署名された。)

日本の主流メディアは、前記事で取り上げた国防総省の発表の時とは違い、スルーを決め込んでいるが、NDAAには、最終的に以下のUAP(UFO)対策条項が含まれる事となった。
(読みやすいよう、文言を若干書き換えています。)
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セクション1683. 未確認航空現象に対処するための、対策室の設置、組織構造、及び権限

(a) 対策室の設置
 本法律成立の日から180日以内に、国防長官は国家情報長官と連携して、国防長官室の各部門内、又は国防総省と国家情報長官室の合同組織内に、本法律成立の日の前日に施行されていた、未確認航空現象(訳注:以下、「UAP」)タスクフォースの任務と、本セクションで要求される他の任務を遂行する、オフィス(訳注:以下、「対策室」)を設置するものとする。

(b) 任務
 対策室の任務は、以下を含むものとする。
(1) UAPに関する事件の、収集、報告、及び生理的悪影響を含む分析を、同期化及び標準化するための手順を、国防総省及び情報機関コミュニティで、策定する。
(2) 国防総省の各部門、及び情報機関コミュニティの各機関から、当該事件が確実に報告され、集中保管場所に組み込まれるような、プロセス及び手順を策定する。
(3) 当該事件の、適時かつ一貫した報告を求める、手続きを確立する。
(4) UAPと、敵対する外国政府、その他の外国政府、又は非国家主体との、関連性を評価する。
(5) 当該事件が米国にもたらす脅威を評価する。
(6) 必要に応じて、連邦航空局、航空宇宙局、国土安全保障省、海洋大気庁、エネルギー省を含む、連邦政府の他の省庁と連携する。
(7) UAPの性質と程度をより良く評価するために、必要に応じて、米国の同盟国及びパートナー(訳注:企業等)と連携する。
(8) 第(i)項に基づくものを含む、機密及び非機密の両形式の、議会に対する報告書を作成する。

(c) UAPへの対応と現地調査
(1) 指定
 国防長官は国家情報長官と連携して、対策室の長の指揮の下に、UAPに関わる事件に迅速に対応し、その現地調査を実施するため、適切な専門知識、権限、アクセス、データ、システム、プラットフォーム及び能力を有する、一つ以上のライン組織(訳注:第(l)項参照)を、国防総省及び情報機関コミュニティ内に指定するものとする。
(2) 対応能力
 国防長官は国家情報長官と連携して、対策室が認識した、UAPに関わる、事件又は観測パターンに迅速に対応するために必要な、要求される専門知識、機器、輸送及びその他のリソースを有する、適切な人員を、(1)項に基づき指定された各ライン組織に確保するものとする。

(d) UAPに関するデータの、科学的、技術的、作戦運用的分析
(1) 指定
 国防長官は国家情報長官と連携して、UAPをより良く理解し説明するため、第(c)項に従って行われた現地調査により集められたデータ、及び、材料試験、医学研究、理論モデルの開発に関するものを含む他の情報源からのデータの、科学的、技術的、及び作戦運用的分析を主に担当する、一つ以上のライン組織を指定するものとする。
(2) 権限
 国防長官及び国家情報長官は、(1)項に基づいて指定された各ライン組織が、適切なセキュリティ・クリアランスを有する、連邦政府の外部の者の、特別な専門知識を利用する権限を持てるようにするため、必要な指示をそれぞれ出すものとする。

(e) データ; 情報収集
(1) UAPに関するデータ入手と報告
 国家情報長官及び国防長官は、それぞれ、相互に連携して、以下を確保するものとする。
  (A) UAPに関するデータを有する情報機関コミュニティの各機関は、対策室、又は、当該データを受領できるよう国防長官及び国家情報長官が指定した団体に、当該データを直ちに利用できるようにする。
  (B) 国防総省又は情報機関コミュニティの機関の軍人及び文民職員、ならびに、国防総省又は当該機関の請負業者の職員が、UAPに関連する、生理的悪影響を含む事件又は情報を、直接対策室に、又は、当該情報を受領できるよう国防長官及び国家情報長官が指定した団体に、報告する手続きを利用できるようにする。
(2) 情報収集及び分析計画
 対策室の長は、国防長官及び国家情報長官に代わって、UAPの探知、識別及び科学的特徴付けに必要な、技術的収集能力の、開発、取得、展開、及び作戦運用に関するものを含めて、UAPの、技術的及び作戦運用的特徴、起源及び意図に関する、可能な限りの知識を得るため、情報収集及び分析計画の、策定及び実施を監督するものとする。
(3) 資源及び能力の使用
 (2)項に基づく計画の策定において、対策室の長は、国防総省及び情報機関コミュニティの、あらゆる資源、能力、資産、又はプロセスの使用を、長が適切と判断する場合、検討し提案するものとする。

(f) 科学計画
 対策室の長は、国防長官及び国家情報長官に代わって、科学的理論を、可能な限り開発し試験するための科学計画の、策定及び実施を監督するものとし、その目的は以下の通り。
(1) 推進力、空力制御、痕跡、構造、材料、センサー、対抗策、武器、電子工学、発電の分野を含む、科学又は科学技術における既知の技術状態を超えた、UAPの特性及び性能を説明する。
(2) そのような高度な特性や性能を再現するため、将来の潜在的な投資のための基礎を提供する。

(g) 優先度の割り当て
 国家情報長官は、国防長官と協議して勧告を受け、国家情報優先度枠組みの中で、UAPに対する理解、特性化、対応の要求に、適切な優先度を割り当てるものとする。

(h) 年次報告書
(1) 要求
 2022年10月31日まで、及びその後2026年10月31日までの毎年、国家情報長官は、国防長官と協議して、UAPに関する報告書を、議会の適切な委員会(訳注:第(l)項参照)に提出するものとする。
(2) 要素
 (1)項に基づく各報告書は、報告書の対象となる年に関して、以下の情報を含むものとする。
  (A) その1年間に発生し報告された、全てのUAP関連事件。
  (B) その1年間以外の期間に発生し、以前の報告書に含まれていない、報告された全てのUAP関連事件。
  (C) 報告された各UAP関連事件を通じて受領した、データ及び情報の分析。
  (D) 以下を通じて収集された、UAPに関連するデータの分析。
  (i)   地理空間情報
  (ii)  シグナル・インテリジェンス
  (iii) ヒューマン・インテリジェンス
  (iv) 測定及び痕跡情報
  (E) 1年間における米国の制限空域上空での、UAP報告件数。
  (F) (E)号に基づき識別された当該事件の分析。
  (G) UAPが米国の国家安全保障にもたらす、潜在的な航空宇宙又はその他の脅威の識別。
  (H) 一つ以上の敵対する外国政府に起因する、UAPに関するあらゆる活動の評価。
  (I) 潜在的な敵対的外国政府が、画期的な航空宇宙能力を達成した可能性を示す、UAPに関連する、あらゆる事件又はパターンの識別。
  (J) UAPを追跡し、理解し、対処するための努力に関する、同盟国及びパートナーとの、米国による協調に関する最新情報。
  (K) 発見されたUAPを捕捉又は利用する能力に関して、進行中のあらゆる努力の最新情報。
  (L) UAPに遭遇した個人に対する健康関連の影響の評価。
  (M) 戦略核兵器、原子力船及び原子力潜水艦を含む、軍事核資産に関連する、UAPの報告件数及びその記述。
  (N) 核安全保障局長と協議の上、核兵器又はその構成要素の、製造、輸送又は貯蔵に関連する施設又は資産に関連する、UAPの報告件数及びその記述。
  (O) 原子力規制委員長と協議の上、原子力発電所、核燃料貯蔵所、又は原子力規制委員会が規制する他の場所又は施設に関連する、UAP又は起源不明のドローンの報告件数及びその記述。
  (P) 第(c)及び(d)項に基づく特定の機能を果たすために指定された、ライン組織の名称、及び当該各ライン組織が、主たる責任を負わされている特定の機能。
(3) 形式
 (1)項に基づき提出される各報告書は、非機密形式で提出されるものとするが、機密の附属書を含むことができる。

(i) 半年ごとのブリーフィング
(1) 要求
 本法律制定日から90日以内、及びその後2026年12月31日まで半年に一度以上の頻度で、対策室の長は、第(l)項(1)の(A)(B)(D)に規定する議会委員会に、UAPに関する機密のブリーフィングを提供するものとする。
(2) 初回ブリーフィング
 初回ブリーフィングは、事件の発生日に関わらず、2021年6月24日以降にUAPタスクフォース又は対策室に報告された、UAPに関するすべての事件を含むものとする。
(3) 以降のブリーフィング
 初回ブリーフィング以降の各ブリーフィングは、少なくとも、過去180日間に発生したUAPに関する全ての事件、及びそれ以前のブリーフィングに含まれなかったUAPに関する事件を含むものとする。
(4) データが共有されなかった場合
 各ブリーフィング期間において、対策室の長は、第(k)項(1)の(A)及び(D)に規定する議会委員会の議長、及び少数派議員又は副議長に、当該データの機密制限又は他の理由により、UAPに関するデータが対策室に提供されなかった事例の一覧を、併せて提供するものとする。

(j) 予算枠の承認
 対策室の業務を遂行するために必要な、以下を含む金額を、充当することができる。
(1) 一般的な情報収集及び情報分析
(2) 戦略的防衛、宇宙防衛、管理空域の防衛、地上・航空・海軍資産の防衛、及び関連目的。

(k) タスクフォースの終了
 国防長官が対策室を設置する日までに、国防長官はUAPタスクフォースを終了させるものとする。

(l) 定義
 本セクションにおいて:
(1) 「議会の適切な委員会」とは、以下を意味する。
 (A) 下院及び上院の軍事委員会。
 (B) 下院及び上院の歳出委員会
 (C) 下院の外務委員会及び上院の外交委員会
 (D) 下院の情報特別委員会及び上院の情報特別委員会。
(2) 「情報機関コミュニティ」とは、1947年国家安全保障法第3条(50 U.S.C. 3003)で与えられている意味を持つ。
(3) 「ライン組織」とは、連邦政府の部局又は機関に関して、その組織が従属する部局又は機関の、中核的な機能及び使命を、直接推進するための、プログラム及び活動を実行する組織をいうが、国防総省に関しては、国防長官室の構成要素は含まない。
(4) 「トランスメディアム物体又は装置」とは、宇宙と大気との間、又は大気と水域との間の移行が観測される物体又は装置で、直ちに識別できないものをいう。
(5)「未確認航空現象」とは、以下をいう。
 (A) 直ちに識別できない空中の物体。
 (B) トランスメディアム物体又は装置。
 (C) 直ちに識別できない水中の物体又は装置で、(A)又は(B)に記載された物体又は装置との関連を示唆する、挙動又は性能特性を示すもの。
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まず条項(e)によると、CIAなど情報機関が保有するUAPデータを、対策室に提供するよう指示しているのも凄いが、特に注目すべきは条項(f)で、これは、UAPのリバース・エンジニアリングを促すものだと、もっぱらの評判。
墜落UFOの残骸、又はUAPが「落とした」物とされる、エキゾチック金属については、地球の金属とは同位体比率が異なる事が、最近のスタンフォード大学の研究で分かったそうで、UAP遭遇による人体の生理的影響についても、研究されている。

また、10月に退役空軍将校らが記者会見で訴えた、核兵器の懸念に対しても、明確に報告が規定されている。
さらに、条項(j)により、正式な予算が使用可能になっているのも画期的で、報告先に歳出委員会も含まれている事から、会計的にも議会の監視対象になってくるだろう。

一方、法案に追加されていた、
・民間人によるUAP諮問委員会の設立
・UAP対策室の命名規則
の2点は、結局削除された。
恐らく対策室の名称は、"ASTRO"という聞こえの良いものから、"AOIMSG"という「ダサい」ものになるだろうが、ペンタゴンの顔を立てるという意味で仕方がないかもしれない。
ただ、エリゾンド、メロン両氏が参加予定だった諮問委員会の不成立は、現在および将来の政権に大きく影を落とすものだという悲観的な意見もある。
しかし民間の専門家を利用する可能性が、条項(d)の(2)に残されているし、
諮問委員会を差し引いたとしても、十分に画期的な法律になっているのは、
ペンタゴンの中途半端な実行計画と比べれば一目瞭然である。
さらに当の本人達がさほど残念そうにしていない様子なのを見ると、前記事のような国防総省の反対行動を見越した、いわば陽動的な「削りしろ」だった可能性もあるかもしれない。
そもそも軍にはこれ以上期待していないような感じだったし、データさえ出してくれれば、あとはNASAやガリレオ計画のローブ教授ら、科学陣に主導させたいのだろう。



奇しくも、法案が可決されたのと時期をほぼ同じくして、欧州宇宙機関(ESA)とロシア企業の協同によるエクソマーズ探査機が、火星の円周の4分の1にも及ぶマリネリス峡谷で、オランダの面積に匹敵する大量の水反応を検出したと、まるで待っていたかのように報道。
赤道地表付近だから液体だろうという。

果たして、多くの人が内心期待しているであろう、地球外生命の発見が、
地球の空になるのか、火星の地下や、木星の衛星エウロパなどの海中になるのか。
ようやく法的な整備が整ったということで、来年からは、今度こそ本格的なディスクロージャーが始まるかどうか、期待して待ちたい。


以上、私の記事を初めて読まれた方は、マガジンの過去記事も参照してください。

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