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AIの芸術作品に著作権なし、写真から高精度3D、サザエさんち高額物件な話ほか(コンワダさん26)

 こんにちは、株式会社アーキロイドの津久井です。今週も社内で話題になった事例からいくつかを紹介します。バックナンバーはこちら

ピックアップ事例:AIが作った芸術作品に著作権はない in USA

概要

―――アメリカでAIが描いた絵の著作権申請が却下された
 昨今のAIブームにより、アートを生成するAI、音楽を作曲するAIなどが登場しました。これらの作品の著作権は誰に帰属するのでしょうか。アメリカ合衆国著作権局は2022/2/14に、「Creativity Machine」と名付けられたアルゴリズムが生成した絵画に著作権を認めるよう求めた申請を却下したことを発表しました。「AIが生成した画像には著作権によって保護されるのに必要な基準である『人間の著作権』の要素が含まれていない」と決定したそうです。

AI研究者のスティーブン・セイラー氏が著作権保護を求めたCreativity Machineの作品「A Recent Entrance to Paradise」(出典:記事より)

―――「人間の著作権」の要素がないと判断されたポイント
①人間の介入がゼロではないが最小限になっているという点
②著作権の重要な構成要素である「人間の精神と創造的表現の結びつき」が認められない点
記事中では、上2点について、猿の自撮り写真(猿が偶然自撮りした写真には人間の創造的活動がなく、また猿に”人間の著作権”を与えるのが不可能なので著作権が認められなかった例)や、新興宗教の教典(”神が与えし教典”も人間の創造活動の一環なので著作権が認められた例)を紹介しています。

―――この結論の限界が試される
 ニュースメディアThe Vergeは「今回の判決はAIが関与したあらゆるアート作品が著作権で保護されないとするものではない」ということ。また、今後AIによる創作活動が更に広まっていくので、この結論の限界が試されること、に言及しています。

コメント

―――ボカロ曲はボカロPに著作権が帰属
 初音ミクなどのボーカロイドで作曲した曲は、そのツールを使用して作曲活動をした人間、ボカロPに著作権が帰属します。Creativity Machine(以下、本事例)と比較する思考実験をしてみましょう。(※本事例はアメリカの話で、ここで述べているのはあくまで日本における知的財産権の取り扱いについてであることをご了承下さい。)
 人間の観点から双方を解釈すると次のようになります。「ボカロ曲は、人間(ボカロP)がガッツリ介入して作っているので、著作権が発生し、人間(ボカロP)に権利が帰属する/本事例は、人間の介入がほぼないので、著作権が発生せず、人間に著作権が帰属しない」。以上から、著作権が”人間の”創造活動の結果に対して発生する権利であるというロジックが理解できます。
 続いて、人間の観点ではなくボカロ、AI側の観点で解釈してみましょう。「ボカロの場合、作曲行為は人間が行っており、ボカロはツール(楽器)に過ぎないない/本事例では、創造行為はAIがおこなっており、人間はほぼ何もせず、AIが創作主体である」。先程よりも創造活動の主体がどこにあるかが明確な表現となります。
 もちろん、創造主体が人間でないと著作権そのもが認められないという結論でしたので、単なる思考実験であり新説を主張したりするものでは有りません。ここから言えることは、つまるところ、AIやロボットに人権があるのか、といった議論と根底は同じなのではないか、ということです。
―――ロボット・AIの人権は結論しないが、知財は結論した
 AIやロボットの権利については、SF映画のような大衆メディア、法や倫理などのアカデミアまで、様々なシーンで議論・言及されているように思います。こうした場合、人権のような大きな権利、根底的な権利のようなものをイメージしますし、その命題の大きさから議論が帰結することは当面の間ないでしょう
 一方で本事例のようにクリエイティブシーンにおける権利、一般的には知的財産権と言われる権利については、AIには認められないことが早々に結論付けられた格好です。類似例が1つあります。本件で著作権申請をしたセイラー氏が以前、AIを特許発明者に申請しようとしたことがありますが、「AIは特許申請時の発明者として登録できない」というアメリカ特許商標庁の公式声明が出されました。本事例は権利(著作権)そのものが発生しない、この特許の事例は権利(特許権)が発生したとしてもAIが特許権者としてクレジットできないという話なので、似ていますが構造は異なります。
―――エンドロールにロボットの製造番号が並ぶ日
 ここでもう1つ思考実験です。先週のコンワダさんで、ディズニーのイマジニア(ディズニーのビジョンや作品を夢想して描いて形にしていく人々、部署)が作った、スパイダーマンのスタントロボットの事例を紹介しました。

動きがあまりに人間に(スパイダーマンに)近くて驚きました。例えば、このロボットに名前があるとしましょう。名前でなくてもシリアルナンバーでもいいです。その名前がスタントとして次作のスパーダーマン映画のエンドクレジットに出てきたとしたらどうでしょうか。マーベル映画に限らず、このロボットのアップデートバージョンがスター・ウォーズ、ジュラシックワールド、ファンタスティックビーストなど、シリーズやジャンル、配給会社の垣根を超えて様々な映画に引っ張りだこになるかもしれません。売れっ子スタントマンならぬ、売れっ子スタントロボットです。映画のエンドクレジットに彼の名前や、シリアルナンバーが流れてくるのは自然なことに感じるのです。思考実験と言うより、個人の妄想に基づく主観になってしまいました。もちろん主義や定義に基づく根拠はありません。強いて言えば、ロボットやAIが、不気味の谷を超えた人間らしい(ときに超人間的)な見た目や動き、思考をすることに親近感を感じるとでも言っておきましょう。
―――機械人格
 映画のエンドロールでブランド名や会社名がクレジットされていることがありますが、前項はそんなイメージです。エンドロールでは関わった実績が帰属する人格(法人格)が列ぶわけです。ロボットやAIにも法人格のような人工の人格、仮に「機械人格」と呼びましょう。機械人格が認められれば、こうしたクレジットに名前が載ったり、知的財産権が認められるようになるのかもしれません。機械人格という抽象概念を出したところで、上述の「ロボット・AIの人権」のような話に自らつなげてしまったので、現段階ではループしてしまい、抜け出す良いロジックが思いつきません。
 定義の限界問題は似た異なる場所にもあります。動物には動物の権利(Animal rights)が認められています。人権のように、根底的な大きな権利が社会的に認められているわけです。コンワダさん13で、生殖が可能な生体ロボットを紹介しましたが、生物とロボットの境界も定義の”限界”との戦いになっていくかもしれません。
 いずれにしても、AI・ロボットがこれまで以上に活躍する時代になることは間違いありません。これからいくつもの発明や創作をAIがしていくでしょう。本事例の結論が最適な指針であったのか、又は限界を超えて破綻してしまうのか。歴史の当事者であることがエキサイティングですね。

今週話題になったTweet(コンツイさん)

つい1:写真から3Dを構築

 写真から3Dを構築するデモ。GitHubで公開されている。かなり精度も高そう。春休みに試してみます。(今年から春休みを作ろう)
GitHub : https://github.com/bycloudai/instant-ngp-WindowsTutorial on Youtube : https://www.youtube.com/watch?v=kq9xlvz73Rg

つい2:マイクラで再現した郊外の街並み

 この距離感だと写真かと思う…スゴイよ

つい3:TownScaper VR

 ぼくたちのTownScaperにVRモードが!(弊社はみんなTownScaperファンです)

つい4:サザエさんハウス高額物件説

 度々話題になる、国民的アニメの2大通説の1つ、「サザエさんハウス高額物件説」です。ちなみにもう1つの通説は「クレヨンしんちゃんのひろしエリート説」です。興味のある方はググって下さい。

アニメの家を題材にした当社noteもぜひご覧ください。

まとめ

 今回もお読みいただきありがとうございました。AIの権利について、ふわっと、だらだらと、考える回になってしまいました。「話題になった事例を紹介すること」がテーマです。新説を唱えるための場でも核心的な批評をする場でもないので(もちろんふわふわ持論を述べる場でもない)、これくらいのゆるさを許容してください。
 あと、今週は初めてコンツイさんコーナーを設けてみました。前半に文字を書きすぎて、後半が適当な気分になったために急遽設けたコーナーです。これくらいのゆるさを許容してください。
 最後に♡を押してくださると励みになります。良い週末を!


「今週、社内で話題になった事例」 について
株式会社アーキロイドの社内で話題になった事例(ニュース、リリース、書籍、動画、論文などなど)のうち、いくつかをご紹介します。元記事の配信時期は必ずしも今週とは限りません。数ヶ月前、数年前のものもあるかもしれません。

社外にこれを発信することで、
①アーキロイドメンバーが日々どのようなことに目を向けているのか、を知ってもらいたい。
②せっかく読んでもらえるなら有益な情報をお届けするために、自分たちの情報感度をもっと高めていきたい。
という目論見があります。

メンバーも大半が30代に差し掛かってきたので、備忘録という意味合いが一番強いかも。ご笑覧ください。

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