建築構造設計べんりねっと

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『建築構造設計べんりねっと』と言う建築構造設計の実務者向けのサイトを運営しています。https://arc-structure.sakura.ne.jp/ ここでは意匠設計者、現場施工管理者向けに建築構造の話をします。

最近の記事

能登半島地震があったのに2025年建築基準法改正(耐震性強化)を延期するのか?

 令和6年元旦に発生した能登半島地震。約5万棟の住宅被害が発生しており、報道では原因として、耐震化率の低さが指摘されています。この“耐震化”とは昭和56年(1981年)に改正された新耐震設計法で設計された建物と報道されています。尚、石川県輪島市と珠洲市の住宅耐震化率はそれぞれ約45%、約51%であったとのことです。  令和4年6月13日、「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律案」の関連法案として、4号特例縮小法案(

    • 2025年 建築基準法改正(4号特例縮小)は実質、今までと変わりません。

       8月7日、改正建築物省エネ法・建築基準法の円滑施行に関する連絡会議が開催され、議事が公開されました。 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000168.html  令和4年6月13日、「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律案」の関連法案として、建築基準法が改正され、4号特例が縮小されました。2階建ての戸建住宅でも確認

      • 木造住宅の必要壁量が2倍になる!? 

         10月28日、国交省より、施行令第46条の改定案が出されました。  昨年12月に出されましたパブリックコメントでも「断熱材や省エネ設備の設置といった省エネ化に伴って、建築物が重量化している。壁量が実態に合わなくなってきており、地震時に倒壊リスクがある。」との内容が出されており、この事に対する改定案です。 001519525.pdf (mlit.go.jp)  国交省の資料によると木造建築物の壁量計算において、以下の三つの方法が示されています。 方法①:個々の建築物の荷

        • 構造図の見方~これを読めば構造設計者の意図が分かる!

           意匠設計者、建築施工者、そして、これから構造設計に携わる皆さん、構造図を読めますでしょうか?  構造図の書き方は法令などで定められたものはなく、設計者により、表現方法が違うこともあります。よって、構造図の見方を解説する書籍はなく、会社で上司、先輩から教わるか、そんなものは分かって当然との扱いになります。  施工者は構造図を基にコンクリート躯体図、鉄骨加工図、木造プレカット図などの施工図を作成します。従って、施工者は構造図を読み取る能力が必要です。万が一、構造躯体を間違え

        能登半島地震があったのに2025年建築基準法改正(耐震性強化)を延期するのか?

          4号特例縮小の準備をしよう!おススメソフトはアークデータ研究所「ASTIM/壁量」

           昨年末に国交省よりパブリックコメント(意見募集)が出されました。この中には4号特例縮小案が盛り込まれています。 ≪現 状≫ ・4号建築 ⇒ 建築確認での構造審査なし ・階数2以下かつ延べ面積500㎡以下 ⇒ 構造計算不要 ≪改正案≫ ・階数2以上又は延べ面積200㎡超 ⇒ 建築確認での構造審査あり ・延べ面積300㎡超 ⇒ 構造計算対象  この法案に対し、反対の意見もあります。4号特例縮小案が施行されると設計者、審査機関の負担が増えます。これにより、建築行政が混乱する

          4号特例縮小の準備をしよう!おススメソフトはアークデータ研究所「ASTIM/壁量」

          意匠設計者に教えたい!構造計画の基本(マンション編)~構造設計は意匠設計者しだい!

           建築における構造設計は、構造設計者が行います。構造設計は構造計算を行い、構造図面の作成を行うわけですが、構造設計の中で一番重要なのは“構造計画”です。  現在の構造設計界の第一人者である金箱温春先生は、構造計画を“構造システム”と呼び、以下のように話しています。 『構造には力学と言う絶対に従わなければならないルールがある。一つの構造システムを作り、それに対して、ある力が作用した場合、どのように挙動するかは誰が検討しても同じである。これは構造の普遍性と言える。 構造システ

          意匠設計者に教えたい!構造計画の基本(マンション編)~構造設計は意匠設計者しだい!

          構造屋が意匠設計者に伝えたい!構造設計を開始するにあたり、最初に決めて欲しいこと。

           建築の設計を行うにあたり、関係者(意匠担当者、構造担当者、設備担当者)で打合せを行いますが、この際に情報が不十分であると設計がスムーズに進みません。  構造設計を開始するにあたり、これだけは決めて欲しいと言うものをまとめてみました。 ①建物寸法  建物の大きさ、形状が決まっていないと構造設計が進められません。当たり前と思うでしょうが、意外と決まっていない事も多いのです。建物の主となる部分が決まっていない事はありませんが、庇など付属する部分の寸法が記載されていないことがあり

          構造屋が意匠設計者に伝えたい!構造設計を開始するにあたり、最初に決めて欲しいこと。

          意匠設計者なら、一度は言われたことがある「一から構造計算がやり直しになります。」

           建築設計で建物形状が少し変えたい、荷重が少し増える設備機器などを追加したいと思い、構造設計者に相談を行ったところ、「一から構造計算がやり直しになります。」と言われたことは意匠設計者なら、一度はあると思います。  構造設計者が言っているのは「出来ない」ではなく、「時間がかかる。予定納期に間に合わなくなる。」そして、「追加の構造設計料が必要になる。」です。  意匠設計者としては納期に間に合わなくなるのは困る。設計予算が増えるのも困る。。。  構造計算は以下の流れで行われま

          意匠設計者なら、一度は言われたことがある「一から構造計算がやり直しになります。」

          杭の施工偏心の許容値は100mm?

           杭の打設は建築工事の中で一番、精度を確保するのが難しい工事でしょう。その理由で一番大きいのは見えない地中に打ち込むため、地中の状況により、ずれてしまう事が避けられないためです。 【あらかじめの検討】 一般には杭の施工偏心の許容値は100mmと言われていますが、これは正しくはありません。国交省、法律が求めているのは以下です。 ●杭がずれる寸法を設定し、その寸法で構造計算を行って下さい。 ●そして、計算で確認した寸法を構造図面に許容値として記載して下さい。 これを「あら

          杭の施工偏心の許容値は100mm?

          【意匠設計者に伝えたい!】構造コストダウンを円滑に行う方法

           技術書『建築構造の経済設計』で使える「構造VE、コストダウン案 50選」として、コストダウン手法を紹介しました。  これに書かれている通り、構造設計者に「この部分の配筋を減らせますよね?断面を小さく出来ますよね?」と伝えても、「それは出来ません。」と答えられてしまうと思います。  構造設計者も自分の設計にプライドがあります。明らかにコストダウンの対応が出来る内容でも構造設計の専門外の人に言われて、簡単に認めることは出来ません。おそらく、意匠設計者が理解出来ない専門用語を

          【意匠設計者に伝えたい!】構造コストダウンを円滑に行う方法

          構造VE、コストダウン手法【意匠設計者、工事施工者、デベロッパー・不動産会社関係者向け】

           設計が完了し、積算を行った所、予算がオーバーした。このような時にVE、コストダウンが必要となります。  最初から経済的な設計が出来ている事がベストではありますが、設計段階では設計者の想い、検討時間(設計期間)、度重なる変更などの要因により、思い掛けず、コスト的な無駄が発生してしまう事があります。  このような時に思いつきで変更を行ってもコストは下がりません。ポイントを抑え、VE、CDの検討を行う事が必要です。構造のコストダウンを行うための考え方を紹介します。 ①数量、

          構造VE、コストダウン手法【意匠設計者、工事施工者、デベロッパー・不動産会社関係者向け】

          【現場管理者向け】鉄筋、配筋の呼び名│知らないと恥をかく!

           鉄筋、配筋は部位より、呼び名があります。同じ鉄筋でも複数の呼び方があったり、いわゆる現場用語的な呼び名もあります。  以下に様々な鉄筋、配筋の呼び方を挙げてみます。 【鉄筋、配筋の呼び名の基本】主筋  主筋とは、その部材に作用する力を処理する鉄筋です。主筋と呼ばれるのは曲げ応力を処理する柱の縦方向、梁の部材軸方向の上下の鉄筋です。  スラブでも主筋と呼ぶ鉄筋があります。通常は短辺方向の鉄筋は主筋となり、その鉄筋が効きやすいように外側に配筋します。部位、力のかかり具合によ

          【現場管理者向け】鉄筋、配筋の呼び名│知らないと恥をかく!

          【意匠設計者向け】構造適判が必要な建物はこれです。

           意匠担当者によく聞かれること「この建物は適判になりますか?」  意匠担当者は設計プロジェクトをまとめる役割であり、設計工程や申請予算が気になり、このような質問をします。  ネットで調べると以下のように書かれていますが、構造設計が専門でない人だと全く意味が分かりません。 【構造計算適合性判定の対象となる建築物】 ①一定規模以上の建築物(高さが60mを超える建築物(超高層建築物)以外の建築物で木造で高さ13m又は軒高9mを超えるもの、鉄骨造で4階以上のもの、鉄筋コンクリ

          【意匠設計者向け】構造適判が必要な建物はこれです。

          意匠設計者、現場管理者に伝えたいこと

           私は2003年より、『建築構造設計べんりねっと』と言う建築構造設計の実務者向けのサイトを運営しており、建築構造設計の実務者に役立つ多くの情報を発信しています。 https://arc-structure.sakura.ne.jp  ここでは、意匠設計者、現場施工管理者向けに建築構造の話をしたいと思います。  仕事をしている上で意匠設計者、現場施工管理者から良く聞かれる、知っって頂きたい“建築構造”に関することを書いていきます。

          意匠設計者、現場管理者に伝えたいこと