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意匠設計者なら、一度は言われたことがある「一から構造計算がやり直しになります。」

 建築設計で建物形状が少し変えたい、荷重が少し増える設備機器などを追加したいと思い、構造設計者に相談を行ったところ、「一から構造計算がやり直しになります。」と言われたことは意匠設計者なら、一度はあると思います。

 構造設計者が言っているのは「出来ない」ではなく、「時間がかかる。予定納期に間に合わなくなる。」そして、「追加の構造設計料が必要になる。」です。

 意匠設計者としては納期に間に合わなくなるのは困る。設計予算が増えるのも困る。。。

 構造計算は以下の流れで行われます。

流れ


 確かに部材のサイズが一部変わる、荷重が少しでも増えるとなると確かに最初からやり直しです。この作業は一貫構造計算プログラムと言うソフトで一連で行います。時間にしたら、数十秒から数分です。

 構造設計で柱、大梁などのサイズを決める訳ですが、部材サイズが変われば自重(=荷重)が増えます。剛性が変わります。

 そもそも、構造計算と言う作業は、この“一からのやり直し”を数十回、百数十回と繰り返すものなのです。

 構造計算は、この一貫構造計算プログラムのみで全てが出来るものではなく、別の様々な部分計算プログラムも使用するため、これらの変更があれば数字を合わせるため、再度、作業が発生することがあります。数分では終わりません。

 しかし、「一から構造計算がやり直しになります。」と言われて、困っている意匠設計者の話を聞くと実際はそれほど手間がかかるものではない事が多々あります。

 もちろん、変更の程度によりますが。

 では、このように言われた時にどうすれば良いかを話します。

 このような話が出る事の多くは荷重が増える変更です。例えば、マンションでバルコニーの面積が増えるなども荷重増の変更です。

 この荷重増がどの程度なのかを構造設計者に聞いてみましょう。1、2%程度であることも多くあります。構造計算に対しては1、2%は誤差です。使う構造計算プログラムの種類によっても、この程度の差は出ます。構造設計者はこの程度の誤差でNGにならないように余裕を考慮しています。つまり、この程度の荷重増の変更であれば手間のかかる変更ではありません。

 バルコニーなどの床面積造の例でいえば、荷重増は増える面積の比率以下です。

 但し、このような変更を多くし過ぎると良い設計にはなりません。確実に不経済になっていきます。先ほど解説した通り、構造計算は“一からのやり直し”を繰り返し、NGの部分を補強、余裕がある部分の削減を行う作業です。

 一度纏まった設計に対し、変更を行う時に追加設計料も貰えないのに余裕がある部分の削減する作業は行いません。NGの部分のみの補強です。

 だんだんと建物のコストは上がってしまうのです。これでは誰も喜びません。良い建物を作るには最初の打合せを綿密に行うことが重要です。

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