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構造屋が意匠設計者に伝えたい!構造設計を開始するにあたり、最初に決めて欲しいこと。

 建築の設計を行うにあたり、関係者(意匠担当者、構造担当者、設備担当者)で打合せを行いますが、この際に情報が不十分であると設計がスムーズに進みません。
 構造設計を開始するにあたり、これだけは決めて欲しいと言うものをまとめてみました。

①建物寸法
 建物の大きさ、形状が決まっていないと構造設計が進められません。当たり前と思うでしょうが、意外と決まっていない事も多いのです。建物の主となる部分が決まっていない事はありませんが、庇など付属する部分の寸法が記載されていないことがあります。

②梁レベル
「そんな細かい所まで未だ、検討していない。後で良いだと」と思うかもしれませんが、構造設計には重要な寸法です。

 基本、意匠の高さ設定は、FL(フロアーレベル)とすることが多いと思います。梁天端はFLから仕上げ厚さ分下がった位置となります。構造の階高は大梁芯間とするので梁レベルが決まっていないと言う事は構造にとっては階高が決まっていないと同じ事になるのです。これでは構造計算が出来ません。

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③仕上げの下地厚さ
 次に構造計算大きく影響を与えるものは荷重に係わるものです。1㎡当たり数キロ程度の軽微な仕上げは、影響が少なくないのはコンクリートの増し打ちやモルタル下地です。
 荷重に係わる事項が変更になると手戻りが多いので、最初に確定して欲しい事項です。

 その他、数百キロとなる設備機器等があれば、その重量の情報も必要です。

④構造設計クライテリア
 構造設計を行うにあたり、目標とすべきレベルのことです。具体的には耐震等級は?劣化等級は?と言う事です。その他にも細かい設計仕様がある場合があります。
 これは建築主(クライアント)から示されるものですが、クライアントが企業である場合、設計仕様書がある場合があります。設計仕様書がある場合は、それを構造設計者に渡して下さい。


⑤通り符号
構造設計の作業を進めるにあたり、意外と重要なのは通り符号の情報です。構造計算書には検討位置を示すために通り符号を記載します。よって、通り符号の情報がないと計算書が纏まりません。また、以降、電話等で打合せを行うにも位置を示す通り符号がないと不便です。

【こんな意匠屋さんは嫌だ】

①決められない担当者
 どんな仕事でもそうですが、決められない、分からない担当者とは打合せを行っても意味がありません。

②必要性を分かっていない
 打合せで上記事項を質問すると「構造の方で決めて良いですよ。」と言う意匠設計者が居ます。意匠設計の事項を。
 このような人に限って、打合せ時にメモもせず、平気で後で変更をします。

③荷重に対し無頓着
 やたらと安易に増し打ちで処理しようとする設計だと無駄な設計となってしまいます。どの構造設計者も経済的に設計をしたいと考えています。

④予定がない
 どのような仕事でも納期があるはずです。必要な事が決まっていれば短納期でも構いません。しかし、予定が不明確な仕事は無駄に変更も多く、手戻りの多い仕事になってしまいます。そもそも、それでは次の仕事の予定も入れられません。


【優れた意匠設計者の対応】

 仕事が出来る意匠設計者は打合せ時に上記事項を事前に用意しています。構造屋さんが聞く事はいつも決まっているのです。経験の多い意匠設計者であれば、それは知っています。
 往復2時間の移動時間を掛けて、打合せが30分でも効率よく行えた方がお互いにとって良いことです。


【構造屋さんもしっかりとしよう】

 意匠設計者に対し、要望事項ばかり書きましたが、構造屋さんも同じです。上記のような構造設計者であれば意匠設計者も仕事を頼みたくないと思います。構造屋さんもしっかりとしましょう。私も含め。

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