論文まとめ58回目 Econometrica(経済学) 2023/8/2
ビジネスマン必見シリーズ！合わない社風は、パフォーマンスを下げることが明らかに。
科学・社会論文を雑多/大量に調査する為、定期的に、さっくり表面がわかる形で網羅的に配信します。今回もマニアックなEconometricaです。
さらっと眺めると、事業・研究のヒントにつながるかも。
世界の先端はこんな研究してるのかと認識するだけでも、
ついつい狭くなる視野を広げてくれます。
一口コメント
Testing Hurwicz Expected Utility
ハーウィッチ期待効用テスト
「曖昧さを理解し、効果的に測定するための新しいアプローチ」
Ideology and Performance in Public Organizations
公共組織におけるイデオロギーとパフォーマンス
「公共組織におけるイデオロギーの不整合性のコストを明らかにする。」
Sequential Veto Bargaining With Incomplete Information
不完全な情報での逐次拒否権交渉
「連続的な交渉での提案者の戦略的アドバンテージの解明。」
Growing Like India—the Unequal Effects of Service-Led Growth
インドのような成長-サービス主導型成長の不平等な効果
「サービス業の生産性成長がインドの経済変化の鍵。」
The Effect of Macroeconomic Uncertainty on Firm Decisions
マクロ経済の不確実性が企業の意思決定に及ぼす影響
「不確実性が企業の経済活動に与える実際の影響。」
Unemployment and Endogenous Reallocation Over the Business Cycle
景気循環における失業と内生的再配置
「職種の流動性が失業率に与える影響。」
要約
ハーウィッチ期待効用テスト
Testing Hurwicz Expected Utility - Bleichrodt - 2023 - Econometrica - Wiley Online Library
GulとPesendorferの提案した不確実性の下での決定理論、「Hurwicz期待効用(HEU)」を検証し、それが実際に計測やテストで使えることを示す。
①事前情報 :
GulとPesendorferは、不確実性の源に関する選好を可能にするHEUを提案。
②行ったこと :
HEUが計測・テスト可能であることを示すため、新しい確率加重関数の機能形式を導出。
③検証方法 :
新しい2つのパラメータの確率加重関数を用いて、データに適合させるとともに、2つの実験を実施。
④分かったこと :
曖昧さの知覚と曖昧さ回避の間に明確な区別があること、そしてHEUの予測が正確であることを確認。
⑤この研究の面白く独創的なところ :
曖昧さの知覚と回避を分ける新しい確率加重関数の導出。
応用先
不確実性下での意思決定モデルの評価や改善に役立つ。
公共組織におけるイデオロギーとパフォーマンス
政治家と官僚のイデオロギーの整合性が、人事の動きや業績にどのように影響するかを調査。
①事前情報 :
アメリカの連邦官僚制とその動きに関する過去のデータ。
②行ったこと :
1997年から2019年までのアメリカの公務員の人事記録と投票登録データを組み合わせて分析。
③検証方法 :
大統領の交代を利用して、イデオロギーが整合していない官僚の業績を分析。
④分かったこと :
イデオロギーが一致していない官僚は、コストの超過や遅延が多い。これは彼らのモラルや動機に影響している可能性が示唆される。
⑤独創的なところ :
公共組織内のイデオロギーの不整合のコストに初めて光を当てる。
応用
公共政策の策定や人事戦略の改善に役立てることができる。
不完全な情報での逐次拒否権交渉
提案者と拒否権を持つプレイヤーとの連続的な交渉を調査。
事前情報
両者はシングルピークの好みを持つが、提案者は拒否権プレイヤーの理想の点を知らない。
行ったこと
提案者が未来の提案にコミットできない状況下での交渉を研究。
検証方法
連続的な交渉と静的なメカニズム設計の関連性を利用。
分かったこと
プレイヤーが忍耐強い場合、拒否権プレイヤーのプライベート情報は提案者の交渉力を大きく低下させる可能性がある。しかし、提案者がコミットメントの力を持っているかのように高い利益を得る条件も存在する。
この研究の面白く独創的なところ
「リープフロッグ」という戦略を提案者が使って、先に低い利益を持つタイプと合意し、後に高い利益を持つタイプから利益を引き出すことができる。
応用
実際のビジネス交渉や政策策定のプロセスでの戦略的な意思決定に役立つ。
インドのような成長-サービス主導型成長の不平等な効果
サービス業の生産性成長を新しい方法で推定し、インドの構造変化と生活水準の上昇との関連を調査。
①事前情報：
多くの現在の発展途上国では、急速にサービスが増加しているが、工業化は限定的。
②行ったこと：
サービス業の生産性の成長を構造的に推定する新しい方法を提案。
③検証方法：
品質改善の測定の困難を回避する新しい方法を使用し、インドの家計データを使用してモデルを推定。
④分かったこと：
1987年から2011年の間に、小売、レストラン、住宅不動産などの非取引可能な消費者サービスにおける生産性の成長が、構造変化と生活水準の上昇の重要な要因だった。しかし、福祉の利益は高所得の都市住民に偏っていた。
⑤この研究の面白く独創的なところ：
品質の向上を直接測定することの困難を回避する新しい方法を提案した点。
応用
発展途上国における経済政策の策定やサービス業の成長戦略の考案に役立つ。
マクロ経済の不確実性が企業の意思決定に及ぼす影響
ニュージーランドの企業に対する調査を使用して、企業が感じるマクロ経済的な不確実性が経済的決定にどのように影響するかを調査。
①事前情報：
企業の経済的決定はマクロ経済的な不確実性に影響されると言われている。
②行ったこと：
異なる経済成長情報を提供するランダム化された情報トリートメントを用いた。
③検証方法：
情報トリートメントを用いて一部の企業のマクロ経済的な不確実性を操作し、6ヶ月後のフォローアップ調査でその効果を測定。
④分かったこと：
企業が不確実性を感じると、価格、雇用、投資を減少させ、売上が減少し、新しい技術や施設への投資が減少する傾向がある。
⑤この研究の面白さと独創的なところ：
ランダム化された情報トリートメントを用いて、不確実性の実際の影響を実験的に検証。
応用
企業の経済的決定を最適化するための戦略や政策の策定に役立つ。
景気循環における失業と内生的再配置
職種間の流動性の循環性が失業率とその期間分布にどれほど影響するかを研究。
事前情報
職業の流動性は失業期間と経済サイクルに関連しているとの仮説。
行ったこと
長期間とビジネスサイクルの間に、労働者の職業の流動性と失業期間の関係を調査。
検証方法
異質なエージェントを持つ多部門のビジネスサイクルモデルを開発。
分かったこと
職業間の移動は、労働者のキャリアの展望の変化、および職種全体の違いではなく、失業期間の分布の変動と総失業率を駆動する。
この研究の面白く独創的なところ
アメリカの労働市場の多くの特徴と整合的な量的モデルを用いた分析。
応用
労働政策の策定や経済予測の精度向上のための指針として。
最後に
本まとめは、フリーで公開されている範囲の情報のみで作成しております。また、理解が不十分な為、内容に不備がある場合もあります。その際は、リンクより本文をご確認することをお勧めいたします。