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『1オクターブ上の音楽会』:「マッチョ・ドラゴン」&「かえせ!太陽を」編

 先週に引き続きオンエア。番宣開始時にネット界隈をざわつかせた「あの曲」がとうとう蘇りました。なぜこの歌が作られたのか? その背景まできちんと紹介してましたね。

 リリース時の新日本プロレスは主力選手が相次いで離脱する危機的状況でした。それを打開すべく、団体立ち上げにも関わった藤波らは奮闘し続け、さらに話題作りとして自らのキャッチコピー「ドラゴン」をテーマにした曲をリリースしたとのこと。
 確かに布陣は凄い。以前も書いた通り洋楽のカバーで、作詞は森雪之丞。当時入門したての蝶野正洋はこう語る。「歌うまでは凄かった」と……その破壊力満点の歌声は別の意味で話題になったが、門下生どころか奥さんまでもが困惑しながら語るほどなので、藤波さん本人にとっては何とも言えない歴史になってしまったようである。
 しかし今回の復活版を聞くと、その一生懸命さは伝わってくる。「全く変わらない」と思えた一方で、可愛らしさも増しており純粋さすら感じた。かつて関根勤は自身のラジオ番組で紹介した(※これがカルト的人気を得るきっかけとなった)際に「幼稚園児、小学生みたいな歌声」と評していたが、それが今なお変わらないことと、そして頑張りの度合いは今なお不変であると分かった。ホッとしたと同時に嬉しかった。藤波辰爾氏も今年で69歳。復活を決意してくださったのには感謝しかない。


 そしてもう1曲『かえせ!太陽を』。昨晩は同じNHKのBSPで『全ウルトラマン大投票』もオンエアされTwitterでトレンド入りしていたが、地上波でも濃い特撮ネタが放送されていた。何てことしてくれるんだ公営放送め。
 製作背景はヘドラという怪獣が産まれた時代を考えれば、語るまでもなし。社会問題化した「公害」を象徴する怪獣と、それを題材にした怪獣映画の主題歌として、監督・坂野義光自身が思いの丈をぶつけた一曲である。そして映画自体も坂野監督のセンスが炸裂。汚れちまった海、汚れちまった空、野も山も黙った日本を、そして世界をひたすら嘆き悲しみつつ、その上で怒りを炸裂させた一本だ。
 本編ではこの曲のアレンジに合わせ(劇中曲として)アングラバーで若者たちが狂ったようにゴーゴーを踊りまくる。その姿は最後の方にゴジラが空飛んでまでヘドラをやっつけ、挙句完膚なきまでに叩きのめす姿と見事に重なるのだ。しかもその際のBGMはやはり主題歌のアレンジだ。海外では「イカれた映画50選」に選ばれたそうだが、むしろどんどんクレージーだと評して欲しいくらいである。
 もっとも坂野監督はこの一本で干されてしまい二度とメガホンを取ることは無かったが、21世紀になって海外へ持ち込んだゴジラ映画の企画が後にレジェンダリー版『GODZILLA』として結実するとは思いもしなかったろう。

 歌っている麻里圭子は75歳と思えないほど若い。かつてのような歌声を出すのは大変だったとお見受けされたが、ほぼオリジナルキーのままレコード版ではなく映画使用テイクで歌ってくださった。「♪鳥も魚もどこへ行ったの」から始まるのを聴いて、そっちを選ぶとはなかなかマニアックなところを突いてくる。番組の企画者には相当な珍盤好きか特撮ヲタがいると思われる。


 というわけで、二週にわたって放送された『1オクターブ上の音楽会』もこれでお開き。「レギュラー番組への道」と冠するだけにいずれはそうなってくれるのか? 不定期でも構わない。ぜひまた珍盤を紹介して頂きたい。

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