見出し画像

映画『フィンガー5の大冒険』(1974年)

 監督は漫画家の石森章太郎先生、てことで作品の存在は知ってたけど、まさかこんな形で観る機会を得られるとは。

 ある日、晃と妙子は赤い花の中に一輪だけ咲く「白い花」を見つけた。晃はその花に口付けをして去っていく。すると白い花は一人の可憐な少女=花の精へと姿を変えた。
 一方、帰宅途中の晃と妙子は「全ガキ連」なる五人兄妹に絡まれてしまう。人気者だからって調子に乗るなと吠える五兄妹は、フィンガー5にバスケットボール対決を挑んできた。試合は一週間後。だが双方バスケは未経験なうえ、おまけにフィンガー5はスケジュールが一杯で練習する暇もない。そこへ「力を貸してあげる」と一人の少女が現れた……
 ついに迎えたバスケ対決。勝つのは全ガキ連か、フィンガー5か?!

 本作は「東映まんがまつり」のプログラムとして制作された完全新作映画である。

 オープニングは『恋のダイヤル6700』、そして散歩のシーンでは『バラの少女』、練習シーンでは『個人授業』、試合の最中には『学園天国』、締めに『恋のアメリカン・フットボール』と彼等の楽曲がふんだんに使われている。しかし尺は27分しかないので本編の約半分は曲。一応ストーリーはあるとはいえ(上に記した通り)、ほぼイメージビデオみたいな作品である。大冒険と謳いつつも全体的な雰囲気はかなりユルかった。

 とはいえ、バスケの試合では細かな場面切り替えもあってか妙なスピード感があり、さらにはイメージカットもバンバン差し込んでくる。これは監督補として参加した長石多可男の影響かもしれない。唐突に登場する石森監督一家や、なぜか仮面ライダーV3がダンクシュートを決めるというお遊びシーンも。最後は全ガキ連とも仲直りしてメデタシメデタシ。笑えるとも楽しいとも言い難いが、短編かつユルさ満点ながらもこういった作品が誕生するあたりに、当時のフィンガー5人気がどれほどあったか分かるというもの。

 ……にしても、バスケ対決という盛り上がる場面なのに、観客がその石森監督一家だけなのはさすがに寂しくないかね?


この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?