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『新幹線大爆破』リブート版、Netflixで製作決定!

 いや、まさかですよ。ネトフリである日急に配信し始めたと思ったら、この付箋だったんかい!

<あらすじ>
 東京発博多行の「ひかり109号」に爆弾が仕掛けられた。その爆弾は「時速が80キロ以下になると自動的に爆発する」という恐るべき物であった。やがてデモンストレーションとして仕掛けられた貨物列車が爆発脱線し、爆弾の存在は疑いが無くなる。
 大捜査線を展開する警察、爆弾解除を試みる国鉄、事実を知らされ騒然となる新幹線の1200人の乗員乗客達。博多に到着する12時間の間に事件は解決するのか? そして、犯人達の狙いは一体何なのか?

Cinemascapeのサイトより。執筆者:自分。一部編集アリ

 引用ついでに、かつてCinemascapeで自分が書いたレビューを転載しておこう。当時まだ20代の若造が熱い想いをぶちまけてます。若干編集アリ。


 この映画は、社会の中でどうしようもなくなった男達が、やぶれかぶれで放った一発の弾丸によって引き起こされる、153分間にも及ぶ壮大なサスペンスである。

 そもそもこの事件は現実に起これば史上稀にみる大犯罪だが、この手の映画に良くありがちな”知的なエリートが思い付いた完璧な計算による犯行”
でもなんでもない

 宇津井健や国鉄側の人間達は、爆弾を仕掛けた犯人達を「新幹線のシステムの盲点を(憎い位に)上手く突いた知的な人間」のように捉えている節があるが、実際はどうか。会社を倒産させ妻子と別れた男、学生運動崩れ、集団就職の波に乗せられ失敗した青年。社会的に見れば「落ちこぼれ」みたいなもので、彼等の考えているような犯人像はどこにも無い。

 ではなぜこんなことになったのか。先に挙げた3人がフトしたきっかけで出会い、そして反抗(原文ママ:おそらく『犯行』と書いたつもりだが、意味は通じる)を思いつく。精密機器製造業だった高倉健にとり、速度計と連動して2段階のスイッチが入る機械を作るなど問題ではなかったろう。それだけの技術を持ちながらなぜ会社が倒産したのかと思うが、そこがポイントかもしれない。技術がありながらも報われないという「現実」に、高倉健演ずる沖田が怒りを覚えていた可能性も否定できない。その鬱屈を晴らすべく、彼はこの機械をこしらえたと考えてもおかしくはないはずだ。

 そして計画は練られたが、身代金の受け渡し方法も一歩間違えば即逮捕されかねないような状況である。荒川下りにしても「もし上に人がいたら」という条件を考えていないし、現場では柔道部連中が偶然通りかかったことによって失敗に終わる。下調べはしただろうが、柔道部が走っていたということは、案外近くに学校があるとか、地元では有名な練習ルートだった可能性なども考えられるが、そこまで調べたとは思えない。2度目の首都高速では成功したものの、これとて運良く逃げ切れただけのの話だ。
 彼らの計画は、断じて完璧なものではない。そうでなければ、デモンストレーションで貨物列車を爆発させた現場から足がつくだろうか。「現場に落ちていたタバコの包装ビニールから指紋が割り出された」という初歩的かつ致命的なミスをいきなりやらかしているのだ。完璧なら何一つ痕跡など残すはずもない。上手くいけばメーターの製造元から「沖田精機」という会社が導き出されることもなかったはずだ。
 計画こそ立ててはいるが、完璧ではない。とにかく新幹線に爆弾を仕掛けて、これを利用して多額の身代金を無事に受け取ろうという「とにかくこうしよう」という想いだけで動いている気さえする。

 そう、彼等の計画はどうしようもなくなった人間達がやぶれかぶれで放った一発の弾丸に過ぎない。しかしそれが、微妙なバランスを取りながらその均衡を保っていたシステムそのものの中枢に、たまたま命中してしまったのである。
 
「どんなことがあっても無事に“停車出来る”」ことで事故を回避することが売りだったはずの安全システムは「停車出来なかったら?」という疑問を突き付けられてあっさり崩壊してしまう。止められないし、止まれない。
 しかも時速80キロという速度が絶妙だった。100キロでは高速度撮影による解析が出来ないし、分岐点の制御速度も70キロ。別に70キロでも90キロでも良かったはずなのに、80キロ。この偶然が、史上稀に見る大犯罪を産み出してしまったのである。均衡が崩れたことによって生じた大パニックがどういうものかは、映画を観た方なら説明は不要だろう。
 ただしこの「パニック」は新幹線車内の混乱だけを指しているのではない。乗客の安全を守るための装置が逆にそれを扱っている側の首を絞め、それゆえ最終的には“国家の安全のために”ひかり109号は無理矢理停止させられようとした……というトンでもない状況も含まれる。たった一発の弾丸がここまで大きな傷となって現れるというこの事態を、パニックと呼ばずにはいられない。

 それだけの映画を作るために東映は国鉄に撮影協力を求めるも「類似犯罪が起きると困る」と断られたが、事前取材だけは徹底的にしていたそうで、その情報を元に新幹線に関わるシーンを、全てセットと特撮と隠し撮りで作り上げた。この根性は素晴らしい。「本物が駄目なら、本物そっくりに作ればいいじゃないか!」という意気込みをまず買おう。
 実際、本作を他人に見せる時「この新幹線総合指令所あるでしょ?これ全部セットだよ」と言うと大抵の場合「え、ホントに?そりゃ凄い」という反応が返ってくるのだが、正に意気込みの勝利である。東京駅の「新幹線ホーム」と「階段」も良く観ると、セットと隠し撮りとを上手く編集してそれらしく作ってある。どうやら国鉄は駅でのロケも許可しなかったらしいが、それでも作ってしまうこの根性は凄い。もっとも国鉄側は、とある見学者(本当はスタッフ)の質問や電話口での問い合わせがあまりにもしつこくて困っていたそうだが。

 俳優人に目を移すと、高倉健や宇津井健、千葉真一といった主役陣の熱演に加え、山本圭、竜雷太、渡辺文雄、鈴木瑞穂、郷瑛二といった渋い役者達が頑張っている。犯人達の苦悩や息詰まる犯人捜査、パニックに陥る新幹線車内等の描写を交えて、153分もある尺を緩急つけて最後まで観させる力量は大したもの。多少の粗も吹き飛んでしまうほどのパワーは十分あるだろう。

 以前、この映画を紹介した書籍に「これらが全て本物でないのが残念である」などと書いてあったが、こんな評価は言語道断、笑止である。確かにシーンによっては出来不出来はあったかもしれないが「特撮」の使い方は断じて間違っていない。
 第一考えて欲しい。新幹線同士がポイントぎりぎりですれ違ったり、平走したりするシーンを本物でやったら危険極まりない。その為に「特撮」というものがあるのだ。こんなこと書く奴は映画なんか観るな!


 改めて読むと、我ながら熱いね。しかしこの時下した評価は全く揺らいでいない。BS放送等があった際は毎回トレンド入りするあたり、やはり題名と話そのものが与えるインパクトは大きいのだと感じる。今回のリブート版もやはり反響は大きかった。話題性は十分といえる。

 ただ不安な点もいくつか。まず当時とは新幹線そのものが大きく変化している。路線だけでなくダイヤグラムも違う。今回も東海道新幹線で、かつ同様の爆弾だった場合、博多どころか品川で話が終わってしまう。どうするつもりか。
 そして監督は樋口真嗣。特撮は文句無しだが、ドラマパートでメガホンを取ると頼りない。これまでの作品でも、先に草彅剛と組んだ『日本沈没』や『進撃の巨人』二部作等を観ても、ドラマ部分のたどたどしさがどうしても引っ掛かる。とはいえ『シン・ウルトラマン』は頑張っていたと思う。これは盟友であるカントクくん(庵野さん)と一緒に作った『シン・ゴジラ』が、膨大な情報量とカット割りで一気に突っ走る演出だったゆえ、そこに触発されていたフシを凄く感じる。実際どうだったかは別として。

 なのでネトフリ版・新幹線大爆破は、配信直前まで不安先行のままだろう。とはいえ凄く気になる。高倉健さんの思いを受け継ぐとコメントしたのなら、今回の草彅剛はどう考えても犯人役だという点も含めて。

 とりあえず続報を待とう。

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