「クリスマスマーケット」を知らなかった僕が、熊本で70万人以上が訪れるクリスマスマーケットを作った話。その1(序章編)
クリスマスマーケットを熊本につくろう!
みなさん、クリスマスマーケットってご存知ですか?
その存在すら知らなかった僕が発起人の一人として創った「クリスマスマーケット熊本」は、今年(2023年)で6年目を迎えます。
おかげさまで第一回の2018年は9万人以上、翌2019年は21万人以上が来場。直近の2022年には花畑町と熊本駅の2会場で71万人を超える皆さまにご来場いただきました。
これを実現するまでの道のりは、本当にもう大変で。これまで数々のイベントを仕掛けてきた僕でさえ、「こんなの絶対ムリ!」と根をあげそうになったほど。
しかし、そのぶん、実現したときの感動はひとしおです。夢の中にいるような異次元の空間と、そこで過ごす人たちのキラキラした笑顔…。実際に会場を訪れた方の中には、「自分たちもこんなイベントで街を盛り上げたい!」と思われた方もおられるのではないでしょうか?
そんな方のお役に立てることができればと、このnoteを始めることにしました。
まずは第1回として、「クリスマスマーケット熊本」をどうやって作り上げてきたか? どんなことが大変で、どうやって乗り越えたか? といった実現までのプロセスをシェアしたいと思います!
熊本に、新しい冬の風物詩をつくる
「熊本でクリスマスマーケットをつくりたい!」
2017年春、そのひと言から、プロジェクトははじまりました。
最初に言い出したのは、竹あかりアーティスト「CHIKAKEN」のチカオ(池田親生)です。
彼は長年ともに熊本のまちづくりや全国の被災地支援を行なってきた仲間で、これまでに官民一体となった熊本市の秋の竹あかりをつかったお祭り「熊本暮らし人まつり みずあかり」、まちなかを舞台にした市民大学「マチナカレッジ」などを仕掛けてきました。
前述の通り、恥ずかしながら僕はクリスマスマーケットのことを知らずに「何、それ?」というやり取りからのスタートでした。
ご存じの方も多いと思いますが、クリスマスマーケットはドイツで誕生し、ヨーロッパ各地でクリスマス前の準備期間に開催されているイベント。広場に大きなクリスマスタワーをたてて、その周りにはクリスマスグッズや伝統的なお菓子を販売するたくさんの屋台が並び、多くの人で賑わう冬の風物詩となっています。
調べてみると、日本でも各地でクリスマスマーケットが開催されていて、なかでも2013年からスタートした「福岡クリスマスマーケット」が、日本を代表するロールモデルのひとつとなっていることを知りました。これを主催している実行委員長の佐伯さんとは勉強会やセミナーなどでご一緒したことがあり、偶然にも同じ出身大学の一つ先輩。
そこで2017年11月、福岡・博多でクリスマスマーケットの準備を視察させていただくことにしました。佐伯さんからどういうふうにクリスマスマーケットをやっているかを教えていただき、翌12月、改めて本番を迎えた会場へ。博多、天神と2会場あるうち、最初に行った天神会場では、あまりのクオリティーの高さに圧倒されました。
そこには「寒いけれど、わざわざ行きたい!」と思わせてくれる、ワクワクした空間が広がっていたのです。冬空の澄み切った空気のなかで、仲間や家族、大切な人と楽しく笑い、語り合う人たち。心ときめく音楽に耳を傾けた、まったりと流れる時間が心地いい、時間を忘れてずっとそこにいたくなる、心温まる空気が流れていました。
これがクリスマスマーケットなんだ! とすっかり魅了された一方で、「いや、こんなクオリティーの高いイベント、福岡だからできるんだ。熊本では、嫌ムリでしょ!」というのが、率直な感想でした。
しかしその一方で、天神会場で感じたあの空気感、老若男女が世代を超えて楽しめるイベントを熊本で実現できたら最高だな。熊本にはこれといった冬のイベントがなく、寒い季節に心あたたまる場所をつくりたいな。純粋にそう思いました。
熊本に、新しい冬の風物詩をつくり、多くの人々を幸せにする。
これを理念とし、ミッションとして
熊本を代表する、冬のおまつりに成長させる。
熊本の地域資源にこだわりながらも、世界・日本のホンモノも感じることができるコンテンツをつくる。
子供からおじいちゃん・おばあちゃんまで、居心地の良いと感じる。冬の居場所をつくる。
の3つを掲げ、僕たちは「クリスマスマーケット熊本」のグランドデザインを描き始めたのです。
「熊本らしい会場空間」をどう作る?
福岡のクリスマスマーケットで感じたワクワク感を抱いて、いざ着手したものの、さっそく問題にぶつかりました。
これまでにも、前述の「みずあかり」や「マチナカレッジ」をはじめとする数々の大型イベントを開催してきた経験があるので、おおよその段取りはイメージが出来ていましたが、明らかに違っていたのは、「熊本らしいオリジナルの会場空間をどう作るのか?」です。
視察した福岡や、全国で開催されているクリスマスマーケットも参考にさせてもらいますが、そのまま真似することはしたくない。せっかく熊本でやるからには、僕らにしかできない、熊本らしいオリジナリティー溢れる空間演出がしたい。熊本の人たちが、これまで見たことのないような空間を作らないと、サプライズは起こらない。そう思ったのです。
「じゃあ、それってどういう空間?」となると、みんなでイメージを共有できる映像や写真もありません。どんな会場空間を作り、どんな雰囲気に仕上げていくか? これが最初の大きな難関でした。
そこで、福岡を視察した翌月の2018年1月、東京をはじめとするオシャレなお店やイベントに赴いて、空間づくりのネタや雰囲気づくりの検討を始めました。
なかでも影響を受けたのが、東京・表参道にある「COMMUNE 2nd(コミューンセカンド)」という屋台村です。都心のど真ん中にありながら、開放的なスペースで食べ物やお酒を楽しめるスポット。ドイツ料理やビール、スイーツといったさまざまな屋台が立ち並び、国内外の人で賑わっている。屋台に立つスタッフたちも、楽しそうに接客していました。
とくに目を引いたのが、斬新な会場設営です。一般的なイベントでは、同じ椅子やテーブルが画一的に並べてあるイメージですが、ここはそうじゃない。
ランダムに並ぶ屋台と、その周りに無造作に置かれた、不揃いでカラフルな椅子やテーブルたち。一見するとゴチャついて見えるカオスな空間がオシャレな雰囲気を際立たせ、都会のど真ん中にいることを忘れさせる。自分の想像を超えたデザインセンスを目の当たりして、心が浮き立ちしました。
この世界観を、空間づくりの参考にしよう。「クリスマスマーケット熊本」の言い出しっぺで、この場所に連れてきてくれたチカオと目を合わせ、「これだね!」と心で相槌を打ちました。
空間づくりの大枠が固まり、さらに「熊本らしさ」を取り入れるには、どうしたらいいか?
一つ決めていたのは、僕たちが15年間、取り組んできた「竹あかり」を空間演出に取り入れること。これまで国内外の催しや被災地の慰霊祭で、人の心に明かりを灯してきた「竹あかり」と、クリスマスマーケット熊本が目指している「心温まるクリスマス村」という世界観に、共通するものを感じたからです。
こうした演出を組み合わせ、デザイナーにイメージパースを依頼。2カ月掛かってようやく僕らがイメージする空間デザインの第一号イメージパースが完成しました。
今でこそ、熊本の皆さんが「クリスマスマーケット熊本のイメージってこうだよね」とイメージされているあの空間は、たった一枚のイメージパースからつくり上げていったのです。
では、これを実現するには、どうすればいいか?
2018年12月の開催を目指し、同年4月頃から準備をスタートさせたわけですが、同時に主要メンバーとなってくれる「仲間探し」も始めました。
続きは、後編で!後編は、こちらです!!
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