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カウンセラー? なにそれおいしいの?──「カウンセラーとはなにものなのか──どこで何をしているのかから迫る心のケア入門」事前レポート

 楽しくて、豊かな生活のためになる心理学を考え、実践していく。
 その一環として、ほんのちょっとかもしれないけど、とっても大事な変化のきっかけになるようなイベントを企画する。
 2024年第2回目のイベントは7月28日(日)14時から「カウンセラーとはなにものなのか──どこで何をしているのかから迫る心のケア入門」と題して開催します。
 本noteでは、荒川出版会メンバーがイベントの事前レポートを公開します。レポーターは、同イベントで司会を務める仲嶺真です。

「え!? 心理学をまなんでいるんですか?! じゃあ、私の心、読まれてしまいますね!!」

「心理学をまなんでいます」と誰かに伝えると言われてしまう、心理学徒あるあるの一つです。心理学をまなぶと「相手の心が読める/見透かせるようになる」みたいです。
(ちなみに、僕は博士(心理学)なので、心よめます)

ということは、心理学をまなんだ後に”心の専門家”の資格を授与されたカウンセラー(臨床心理士/公認心理師)は、相手の心を読んで、その人の悩みを解決に導いているのかもしれません。どのような「心の問題」も見透かし、その問題への適切な対処法を提案できるのかもしれません。カウンセラーに対して、そのような完全無欠な「魔道師」のようなイメージを持たれている人もいるかもしれません。

しかし、一方で、「カウンセラーって話聞いてるだけでしょ?」「傾聴(話聞いてあいづちをうっているの)が大事なんだよね」というように、「ただ・はなし・きく」がカウンセラーだというイメージもあるかもしれません。素人でもできる、専門性のないことを実践している人たちというイメージです。
(ちなみに、そのイメージは、臨床心理学が戦後日本でどのように普及したかという点と関わっています。ご関心のある方は、東畑開人『日本のありふれた心理療法──ローカルな日常臨床のための心理学と医療人類学』第1章、あるいは『治療は文化である(臨床心理学 増刊12号)──治癒と臨床の民族誌』の東畑開人論文「平成のありふれた心理療法──社会論的転回序説」をご参照ください。)

「魔術師」と「素人」。まったく真逆の印象です。果たして、どちらが正しいのでしょうか。カウンセラーは、「魔術的」なテクニックで、人の心を癒す特別な存在なのでしょうか。それとも、「特技は人の話をよく聞くということだ」よろしく、みんなが自分のことに追われ、人の話を聞く余裕がなくなった現代において、カウンセラーは、みんなの代わりに話を聞いてくれるただの「素人」なのでしょうか。あるいは、「魔術師」と「素人」、どちらのイメージも間違っているのでしょうか。

近年、カウンセラーという言葉はいろいろなところでよく聞きます。それに伴い、いろいろなイメージもあると思います。ですが、実際にどういう人たちなのか(どこで、何をしているのか)と言われると、よくわからない部分もあります。

では、どうすれば私たちはカウンセラーの実像にせまれるのでしょうか。

1つは、著名なカウンセラー(臨床心理士/公認心理師)をお呼びして話を聞く方法があるでしょう。しかし、著名なカウンセラーは、もしかしたら「魔術師」かもしれません(もちろん、「魔術師」ではないかもしれません)。現在、臨床心理士は約4万人、公認心理師は約7万人いますが、著名なカウンセラーはその中でも「異端」で、「ふつうの」カウンセラーとは程遠いように思われます。

また、ベテランのカウンセラーをお呼びして話を聞く方法もありますが、ある程度の地位や態度や知識といったものが確立したベテランよりも、まだ駆け出しの、あるいは、そろそろ中堅に入りそうな段階のカウンセラーさんのお話を聞くほうが私たちにとってタメになりそうです。というのも、「確立されたもの」よりも「発展途上のもの」のほうがワクワクしますし、「人はどのようにカウンセラーになっていくのか」にせまれるからです。この問いは、「人はどのように専門家/経営者/職業人etc…になっていくのか」というカウンセラーにとどまらない話にもつながります(そういう点でも私たちのタメになる!)。

というわけで、今回のイベントでは、臨床心理士/公認心理師の資格をもち、学校や司法といった現場で実際に臨床に携わっている若手・中堅のカウンセラーをお呼びして、カウンセラーの実像にせまりたいと思います。

登壇者の一人である小田友理恵(おだ・ゆりえ)さんは、大学教員でもあり、スクールカウンセラーでもあり、カウンセリングオフィスでも働き、三足の草鞋を履いています。科学者ー実践家モデル scientist-practitioner modelが研究テーマであり、「自然科学的人間観に着目したクリニカルサイコロジストの実践性と科学性の関連」という博士論文をご執筆なされています。

科学者ー実践家モデル(S-Pモデル)とは、臨床心理士が「臨床心理士としての実践性」だけでなく「心理学研究者としての科学性」も持つべきであるという意味の言葉です。臨床心理士の養成課程においてもS-Pモデルは強く意識されており、臨床実践と心理学研究どちらもできる専門家を育成しようというのが臨床心理士養成課程の目指すべきかたちとなっています。また、公認心理師の試験においてもS-Pモデルは出題範囲となっており、我が国のカウンセラーにとって、S-Pモデルは、こうあるべきモデルとして想定されているわけです。

このようなカウンセラーのあるべき姿について真正面から考えてきたのが小田さんです。
(ちなみに、「S-Pモデル私案──科学を血肉にして動き応答し続ける実践家の集団」という論考を『Re:mind Vol.1』にご寄稿いただきました。興味深いのでぜひご覧ください。)

もう一人の登壇者である林桜子(はやし・さくらこ)さんは、法務省矯正局で働く心理技官です。数年、少年鑑別所で臨床家として働いたのち、いまは法務大臣直下の施設、効果検証センターで研究者としての腕も振るっています(まさに、S-Pモデルの現場での実践です)。

大学院時代は「心に傷を受けた人」の臨床をおもに学んでいましたが、現在は、「心の傷を与えてしまった人」の臨床を実践しています。かりに前者を被害者臨床、後者を加害者臨床と呼ぶのだとしたら、両方に携わっている林さんだからこそ見えてくるカウンセラー像があるかもしれません。

ちなみに、林さんは警察などと同じ公安職です。カウンセラーとは異なりますが、公安職の実像についてもおもしろい話が飛び出すのではないかとすこし期待しています。当日は、もしかしたら官服で登場するというサプライズもあるとか、ないとか。

小田さんと林さん。立場も仕事も違うお二人とカウンセリングについて話すことで、カウンセラーの固定的なイメージを解き放ちつつ、心のケアについてさまざまな角度から考えていく。それが今回のイベントの試みです。

「正解」ではなく「正解(仮)」をともにつくる。荒川出版会の合言葉です。「こうあらねばならない(=正解)」ではなく、「こうなるともっとおもしろいのではないか(=正解(仮))」を考えてみる。そのような心構えで「カウンセラーとはなにものなのか」について、小田さんや林さん、そして会場参加者やオンライン視聴者の皆さん含めて、自由に話していきたいと思います。
(ちなみに、オンライン視聴者のかたもYou Tube Liveのコメントから会場のトークに参加できます。オンラインからのコメントもお待ちしております!トークのイメージはこちら→01荒川出版会初の生配信#荒川出版会240327

会場でもオンラインでも、皆さんのご参加をお待ちしています! 当日、皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。

申込:Peatix

小田友理恵×林桜子×仲嶺真「カウンセラーとはなにものなのか──どこで何をしているのかから迫る心のケア入門」#荒川出版会240728

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