「支援」という看板を外してみようと思った話

私は現在、NPO法人サンカクシャという団体を2019年に立ち上げ、15歳から25歳くらいまでの若者の居場所作りや仕事、住まいのサポートを行っています。
居場所は3箇所、都内で約160人くらいの若者に伴走をしてサポートしています。

団体立ち上げの前からホームレス支援や子どもの貧困問題に取り組み、活動を始めてから13年近く経ちました。

子どもの貧困という言葉が全国的に広がり、SDGsという言葉の広がりやコロナの影響も相まって、社会貢献や人のために何かをするという行為はそれほど珍しいことではなくなったような気がしています。

約10年前と比べて、ものすごくNPOの活動に対しての世間の見方が変わりました。

それこそ10年前なんて、子どもの貧困というだけで、日本にそんな人いるの?という説明から始めないといけませんでした。

今では、そんなことはなく、何か手伝うよ!だとか、逆に向こうの方からお手伝いしたいと申し出てくれるくらい社会の風向きが変わって気がしています。(もちろん、まだまだ一部だとは思いますが)

何かしたいと思い行動する人、団体を立ち上げる人、支援を拡充していく人、何かしないとと動き出す企業などなど「支援」はまだまだ一部ではありますが、10年前と比べて増えてきた印象があります。

しかしながら、困りごとを抱える人はまだまだたくさんいますし、社会課題が解決したのかというと全然そんなことはなく、いまだに困っている人はたくさんいます。

支援は広がってきた現状に対して、ちょっと違うアプローチが必要なんじゃないかなと思って、この記事を書いてみました。

活動を続けながら感じる違和感


私はこれまで活動している中で、少しずつ違和感を感じてきた言葉があります。

それは「支援」という言葉です。

いまだに、毎日のように使っていますし、団体としても支援団体というカテゴリに入っているので、便宜的に支援という言葉を使っています。

でも、私たちがやっていることは「支援」か?と言われると、そうではないような気がするなと思いますし、実際に私たちが支援をしている若者も、支援を求めにきているわけではないと常々思います。

さらに、若者は「支援」という言葉に少し抵抗があることや毛嫌いしていることがわかってきました。

それでも、「支援」という言葉を使い続けていいのだろうか・・・
そんな葛藤をものすごく感じています。

生活保護を受けたくない若者

私は、若者の居場所や住まいのサポートをしているので、毎日若者と接し、週1、2回程度は一緒に寝泊まりしてますし、ほぼ毎日若者とゲームをして、一緒の時間を過ごすことを大事にしています。
もはやほとんど友達のような感覚で一緒にいます。

これくらいの距離感でいると、彼らの本音や考え方、価値観などがよく見えてきます。

所持金が常に1,000円くらいしかない若者、親や身近な大人と絶縁してしまっている若者、バイトがなかなか決まらず、生活に困る若者、そんな若者と毎日接しています。

どう考えても、生活保護を受けられる対象ではありますし、いろいろな支援に繋がった方がいい。でも、本人たちに話を聞くと、「生活保護だけはいやだ」「窓口に行きたくない」「行政のお世話にはなりたくない」と抵抗を示します。

昔に比べて、生活保護がメディアでいい意味でも悪い意味でも取り上げることが増え、若者たちは制度のことは知っています。
ただ、それを自分が受けるもの、受けていいものという認識はないですし、支援を受けるという行為自体にプライドや尊厳を傷つけられるという考えがあるように見受けられます。

支援の臭いがしない場作り

だからこそ、私たちはそうした若者の気持ちを尊重し、「支援」という臭いが感じられない場作りを意識してきました。

居場所にいても、支援者が自らダラダラする、寝る、思いっきりゲームをする、そんなことをしていると、「え、大人がこんなことしていいの?」となり、若者たちが徐々にフランクになってきます。

シェアハウスにしても、ゲームがたくさんあり、若者たちとはよくゲームをしています。(先日メディアに取り上げられた時に、オンゲ(オンラインゲーム)やってる、ゲームあるなんて貧困じゃないだろとか言われましたw大半はスタッフの(私の)私物ですw)

私は支援者という認識ではなく、ゲームを一緒にやるちょっとおもろい兄ちゃんという立ち位置で、団体の代表だということを彼らが知ると、「え、あらいちゃん経営者なの!?」(こんな大人がそんな訳ないだろというニュアンス)でいじられます。
そんな認識でありながら、実は支援団体をやっているということを知ると、仲良くなったタイミングで、「実は・・・」と相談をしてくることが多いです。

このように、場の作り方であったり、支援者のスタンスだったりを、かなり若者が親近感を感じやすいように意識して作っています。

特に、若年層は支援への抵抗が強い気がしています。

「支援」という看板では出会えない若者がいる

ここ数年、若者のカルチャーに染まり切ってみようと、毎日かなりの時間ゲームをして、若者と同じ動画を見て、アプリを使って、若者がどんな生活でどんな価値観で日々を送っているのかを、私の日常に取り入れまくってみました。(Zenlyを使ってみたり、youtube・twitchを永遠に見たり、アニメ漫画をみたり、朝までゲームしてみたり、30歳を超えてくると体がしんどいですw)

若者のカルチャーに染まり切って、最近感じることは、「支援」という言葉は若者の価値観には合わないということです。

このことを考えたときに、支援ってどれくらい届いているんだろうか、そんなことを考えました。

先ほども挙げましたが、生活保護を例に挙げてみます。
生活保護が貧困をどの程度解決できているかの指標としては、捕捉率という指標があります。
捕捉率は、受給世帯数を貧困世帯数で割って算出するのですが、
欧米先進国(米国、英国、ドイツ)では40~80%ですが、これに対して日本では10~20%と低いことが知られています。

若年層に特化した調査などはあまりみたことがないので、知っている方がいたら教えてほしいのですが、捕捉率が20%程度というのは現場の肌感覚と一致します。

若者に限らず、人って支援をそもそもあんまり受けたくないよなぁとそんなことも思います。(日本人の特有の考えというものあるかもしれません)

支援が必要な若者のうち、50%は支援という看板ではリーチできないという仮説

最初に言っておきますが、めちゃくちゃ主観です笑

生活保護の補足率は約20%程度、その他の制度などにつながっていることを含めて多く見積もっても50%くらいだと考えると、残り50%は支援という看板ではリーチできないのではないかという仮説を持っています。

これはめちゃくちゃ根拠も何もない、現場の肌感覚の仮説です。

ただ、普段から若者と会っているとこんなもんじゃないかという気がしています。
特に、若者本人って、客観的にみたら課題がいっぱいあるように思えても、本人が自覚してないなんてことはよくあります。

支援につながらない若者って、こんな状況なんじゃないかなと思っています。

・そもそも知らない人を信頼できない
・自分の置かれている状況、困りごとがよくわからない
・行動することに躊躇してしまう
・困っていると言えない

こういうことが苦手、できない若者のためのアプローチもあっていいのではないかなと思っています。

何より、支援っぽい臭いを出さないように意識してきた団体だからこそのリーチの仕方があるんじゃないかなと思っています。

支援という看板でつながれない若者に出会うためのポイント

上記の仮説をもって、これから色々な取り組みを通じて検証していこうと思っています。

その前に、大事なポイントを整理します。

・最終的には、相談や支援につなげたい
・相談にのるには信頼関係が必要な若者がいる
・入口は友達のような親しみやすいスタンスで

支援という看板を外すといっても、最終的には支援や相談につなげたい。
ここがないのであればNPOではないので笑

ただ、最初の入り口が「支援っぽい」形ではいけない。
そして、支援や相談につながる前には「人」として親しみや信頼関係が必要。

これが大事になるんじゃないかなと思っています。

若者たちの行動や様子を見ていると、困った時に誰にも相談していないかというとそんなことはないことに気づきました。

実は、友達や先輩には相談していたりします。
友達もリアルな友達だけではなく、オンライン上で出会った友達であったりすることもあります。
これは何を意味しているかというと、波長が合う人に相談するということだと思います。

そう、友達になってしまえ!

これが私たちのたどり着いた一つのスタンスです。

友達というよりもちょっと頼れる先輩くらい、そんなイメージだと思います。

大事なのは支援っぽさがない「場」と「人」です!

支援という看板でつながれない若者にどう出会うか


さてさて、前置きが長くなってしまいましたが、支援が届いていない50%の若者(めちゃくちゃ主観ですよ)にどうやってリーチするか。

ちなみに、これから仮説検証をする!という段階なので、これが正解!といい訳ではないです。ひとまず色々な形で試して、ダメなら改善を繰り返して、そう考えています。

その上で、まず、サンカクシャでは2つの取り組みをしてみます。

①オンラインゲームを使った居場所作り(eスポーツ施設)

私たちが出会う若者のほとんどがゲームしています。(ゲームしてる若者を繋いでもらっているということかもしれませんが笑)
ゲームをやっていたら秒で仲良くなる。
ゲームというのは人と人とが仲良くなるための最適なツールだと思っています。

ただゲームだけやるのではなく、大事なのは「場」と「人」です。

そう、eスポーツ施設を作ります。
そして、ゲーミングチームを作ります。

ゲームが思いっきりできる場を作ります。
ゲーミングPCに触れたことがない若者も多いと思います。
ゲーミングPCを置いて、ゲームができ、色々なプロゲーマーと交流できる、上手い人と交流できる場所を作ります。

2022年2月に豊島区の上池袋(東武東上線北池袋駅とJR板橋駅から徒歩5分くらいの場所)にeスポーツ施設を作ることになりました。

家具類のスポンサーは決まったのですが、肝心なゲーミングPCのスポンサーが決まっていません汗
どなたかゲーミングPC協賛していただけないでしょうか!!

それから、チームも作ってしまいます。

若者たちって、何もやることがない子多いんです。

でも、暇だからゲームにめちゃくちゃ時間かけていると勝手に上手くなっていくんです。
であれば、活躍の機会を作ってしまえ!ということでチームも作ることにします。

この辺りは今度別の記事でまとめてみます。

②バーチャルYouTuber(以下、VTuber)でのアウトリーチ

ここまではリアルの話。

ここからはオンラインの話です。

リアルな場所ってどうしても、通える範囲でしかサポートできません。
こういう支援っぽくない人とか場って必要な人って多いと思うのですが、リアルな場って届けられる層が限られてしまうんです。(でもリアルはめちゃくちゃ大事)

そんなこんなで、オンライン上でも支援する人を作ってみようと思いました。
そんな経緯でVTuberデビューをしてみることになりました!

詳しい経緯や内容はこちらに書いてます。
https://note.com/araichan/n/n76b6668b2275

このVTuberの取り組みを通じて、オンライン上でもコミュニティを作ってみたいなと思っています。居場所のオンライン化です。

「支援」という形で若者に認知してもらう団体になる


ここまで色々と書いてきましたが、これからサンカクシャはもっと若者に認知してもらえる団体になろうと思っています。

ただ、「支援」団体ではない形で。

リアルなゲームできる拠点やコミュニティ、住まいなどがあることを知ってもらう、オンライン上で、面白いたまに頼れる兄ちゃんがいることを知ってもらう。

「支援」というフックではない形で、いかに若者に認知されるか。

そして、若者に認知してもらい、若者と交流し、そこから具体的なサポートにいかにつなげていくか(もちろん必要あれば)

これらを模索していこうと思っています。

お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、上記の2つの取り組みの対象は男性にリーチしやすいものかなと思っています。
女性にもリーチしたい、がしかし女性のニーズを把握しきれてはいないのと、なんだかんだ男性の支援が得意な、私はまずは男性の領域に特化してみようと思っています。多分精神性が男性と合うんでしょうんね。

色々やってダメだったことも含めて、社会に還元したいなと思っています。

ただやるなら、ガッツリ結果出したいなと思うので、これからのサンカクシャの動向をあたたかく見守っていただけると嬉しいです!

そして、応援していただけるとさらに嬉しいです!


一緒に活動手伝いますとか、寄付しますとか、そういう応援がめちゃくちゃ励みになるので、皆さんぜひよろしくお願いします!

https://www.sankakusha.or.jp/donation/


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