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10/ダイビングで有名なタオ島でのハッピーナイトライフ

サムイ島からは高速のフェリーでタオ島に渡ります。

Simple Lifeは、タオ島の西側に位置し、遠浅で目の前の海に夕陽が沈むサイリービーチ沿いにありました。

今でもSimple Life Resortとして存在していますが、何度か経営者が変わり、場所も変わって立派なホテルになっています。

その頃のSimple Lifeは、ビーチに面してレストランがあり、その奥の敷地にダブルベットが一つだけ置かれ、バルコニーにハンモックが吊るされているバンガローがいくつか点在し、その他にツインルームが3部屋連なった建物がありました。

私が行った時には、バンガローが埋まっていて、ツインルームしか空いていませんでした。

ツインだったので少し予算オーバーしていたこともあり、一度見せてもらってから他をあたることにしました。

サイリービーチ沿いのバンガローをいくつか見て廻ったのですが、どこもピンとこなくて結局Simple Lifeに戻って、空いたらシングルのバンガローに移させてもらうことにして一旦ツインルームに泊まることに。

お腹が空いたので、荷物を部屋に置いてレストランに向かいます。

この時は昼間だったこともあり、数名の欧米人が静かに本を読んでいたり、レストランに設置されているテレビで映画を見ながらまったりしていたり、ビールを片手にチェスやジェンガをやっていたり。

移動で少し疲れたので部屋に戻ってゆっくりしていると、陽が落ちた頃から段々とレストランが賑やかになり、音楽が漏れ聞こえてきました。

実は、このレストランが知る人ぞ知るの欧米人には人気のレストランだったのです。


洋食もタイ料理も美味しいし、DJがいて音楽の選曲も良く、夜になると他からお客さんが集まって来るほどバーのお酒も充実していました。

そして、ここに泊まっている旅行者はほとんどがリピーターで、去年来て良かったからまた今年も来ただとか、もう何年も通っているだとか、すでに3ヶ月も泊まっているだとか、他を旅してまた戻って来ただとか、宿泊者同士も顔見知りになっていたりするのでした。

日本人のお客さんはめずらしかったらしく、また私がバンコクに住んでいたこともあり、あっという間にタイ人のスタッフたちとも仲良くなりました。

タイに住んでいる間、私も他にもれずリピーターとなったのですが、確かに一度も日本人のお客さんに遭遇したことがありませんでした。

賑やかさにつられるようにして、レストランのカウンターに座ってタイ人スタッフとおしゃべりしながら飲んでいる時です。

私の横に立ち、カウンター越しにテキーラのショットを注文しに来たスイス人がいました。

スイス人といっても、スイスとブラジルとのハーフなので、見た目は褐色の肌でクルクルした髪の毛が特徴のジョンでした。

酔っていたこともあるかもしれませんが、ブラジル人の明るくて陽気なノリそのものでした。

彼からしても、日本人の私がいるのがめずらしかったのでしょう。

座って飲んでいる私に気がつき、一緒にテキーラを飲もうと声をかけてきます。

幸いにして、お酒の強かった私はオーケーと言って一緒に飲み始めました。

ジョンは、今回が3回目で、毎年3ヶ月くらいのスパンでダイビングをしながらSimple Lifeに泊まっているとのことでした。

タオ島は、ダイバーにとっては有名な島だったのです。

確かに日本を含め、自国よりもはるかに安くライセンスも取得できたし、数々のダイビングスポットが点在していました。

日本人の旅行者もいるにはいるのですが、ダイビングをしに来ている人が大半で、翌日に向けて早く寝てダイビングに備えるためか、タオ島のナイトライフで日本人を見かけることがありませんでした。

そして、この日はSimple Lifeのバーが閉まったあと、サイリービーチ沿いにあったバーのすべてのお店でテキーラのショットを1杯ずつ飲み干しながら移動して、ビーチ沿いの一番奥にあるIn Touch barへと足を運んだのでした。

In Touchでは、日によって欧米人のDJが来たり、時間によってはバーがクラブになったりしていました。

いついつパーティーやります的なフライヤーが出回り、それが唯一の情報源でした。



ある時は、ピックアップトラックで40分ほど登った山の上に音響設備などを設置して飲み物などを運び、レイブをすることもありました。

日本人の私たちからすると、詳しい人にしかわからないような欧米ではかなり有名なDJが来ていることも意外と多かったのです。

タイなんだけど、夜になるとここはどこ?っていうほど欧米人で埋め尽くされていました。

日本人がいることがめずらしかったせいか、飲みに行くと必ずと言っていいほど声をかけられます。

それでも、ビーチ沿いを歩けば10分もかからずに宿まで帰れたし、この頃のタオ島は治安が良かったので安心して飲み歩いていられたのです。

砂浜を歩けば行き着けるので、靴さえも履かずに毎回裸足のままだったし、お金だって100バーツを数枚4つ折りにして、ポケットに入れただけで手ぶらで出かけるので取られる物さえありませんでした。

夜中にSimple Life所有のロープで繋がれているボートまで泳いで行って、ボートの上に寝転んで星を眺めたり、木にくくりつけてある大きなブランコを思いっきりこいでみたり、遠浅の砂浜に座って海に浸りながら月が沈んでいくのを見届けたり、誰もいないビーチでハンモックに揺られながら眠ったり。

満月だと月明かりが思いのほか明るくて水平線まで見渡せるし、月の道が海に映ってゆらゆらと神秘的だったり、夜中でも水が冷たくないので海に浸かっているのが心地良かったり、風に当たりながら誰もいない砂浜を裸足で散歩するのがとても気持ちよかったり。

今では決してできないであろう、サイリービーチを独り占めしたり、時にはジョンと二人占めしたり。

シェムリアップとはまた違った、ここでしかできない楽しみ方ができたのでした。

この後も何度かタオ島には行ったけれど、雨季だったり、時期によっては夜海に入るには寒かったり、この時と同じ環境ではなかったので、色んな条件やタイミングが重なり合ってできた貴重な体験だったのだと後になってわかったのでした。



ジョンは3年間付き合っていたスイス人の彼女と一緒に来ていたのですが、その途中で別れることになり、スイスに帰るまでの残りの数日間一緒のバンガローに寝泊りしているそうで、部屋にいずらいこともあったのか、夜一緒に飲みに行ったり、夜のビーチでハンモックに揺られながら寝たりと私一人ではちょっと不安なことも、楽天的で楽しいこと好きの彼とだからこそできたことも沢山ありました。

長いこと会えていないけれど、今でも近況報告をしたり、あの頃のタオ島は最高に楽しかったね、と思い出話をすることもあります。

Simple Lifeで出会った他の友達ともSNSで繋がっているので、結婚したり子供ができたりと皆んなの変わっていく様子を見ながら時の移り変わりを感じたり。

ジョン曰く、3回もタオ島に来ているのに、バンコクには移動のために寄るだけで一度も観光したことがなかったそうで、今回は私がいるのでスイスに帰る前にバンコクを案内する約束をして、仕事もあるので楽しかったタオ島でのバカンスを終え、バンコクに向かったのでした。

思いのほか長くタオ島にいた私に、Kittiさんはそんなにタオ島は良かったのかと聞いたので、機会があったらぜひ行って欲しいと伝えました。

それ以来、バンコクの喧騒に疲れたり、休みができるとたまにSimple Lifeに行くようになりました。



2度目にタオ島に行った時には、Simple Life が満室で部屋が空いていなかったのですが、スタッフがバンガローに泊まっていたこれまたスイス人の女の子に話をしてくれて、その時初めて会った彼女とバンガローをシェアすることになりました。

スタッフからすると、彼女は既に3ヶ月近く泊まっていてあと数日でスイスへ帰る予定で、金銭的にも問題がないし性格も良いから、彼女となら大丈夫だろうとの判断だったようです。

私としては、彼女がオーケーならばと、ダブルベット一つにバスルームとハンモックのぶら下がったバルコニーの付いた6畳程度のバンガローに、二人で寝泊りすることとなったのです。

彼女の名前はシーナ。

私にとっては、初めてできた欧米人の女の子の友達でした。

昼間はレストランにいたり、海に行ったり、どっちかがバルコニーにいて、どっちかが部屋にいたりとお互い干渉せずにその時々でバラバラだったり一緒だったりするのですが、そのスタンスが心地よくスタッフの見立て通り意外にも気が合ったのです。

こうして、シーナがスイスに帰るまでの残りの数日間を一緒に過ごしました。

バルコニーでビールを飲みながら色んな話をすることもありました。

お互いの国のことやタイでのこと、時には恋バナなんかも。

ジョンがスイス人だったので、それまで知らなかったスイスについていくらか話を聞いていたことも、私たちの話が弾む要因になっていたのかもしれません。

初めて会った外国人とシェアするなんてそれまで考えたこともなかったけれど、そんなことも可能なのだということを知る体験となりました。

この時、ジョンはすでに一旦スイスに帰ってからタイに戻って来ていて、欧米人の旅行者にダイビングを教えながらタオ島に住んでいました。

いつものカウンターで飲んでいると、懐かしい声が聞こえてきます。

「久しぶりー、元気だった?」と挨拶を交わしながら最近の様子を話したり、借りている家を見せてもらったり。

ダイビングのランセンスを取るなら、タンク代だけでお金はいいから教えてくれると言ってくれたのですが、なぜか海に潜ることにはあまり興味がありませんでした。

何年も前に、一度だけ西伊豆で潜ったことがあったのですが、残念ながらまた潜りたいとは思わなかったのです。

この時は、前回泊まった時に一緒だったイギリス人の友達も来ていたりと、Simple Lifeに行くと誰かしらに会えたりするのもここへ来る楽しみの一つでした。

タイは一年中暑い国ではありますが、乾季と雨季とがあり、時期によっては涼しい季節もあります。

住んでいると段々と身体が暑さに慣れてきて、15度以上あってもとても寒く感じるようになってくるのです。

この時期になると、オフィスでは冷房が効いていることもあり、タイ人の女の子はフリースを着たりするほどです。

デパートへ行くとニット帽や手袋を売っていたりすることもあって、最初の頃はこんなの誰が買うんだろう?と思っていましたが、タイでも北の方へ行くとさらに気温が下がるし、時期と場所によっては必要になってくることもあるのだということを知りました。

乾季は乾燥している分夜になると涼しくて、前回のように夜海に入るのが心地よい季節ではありませんでした。

それでも日常生活とは違ったタオ島でのお休みを満喫し、リフレッシュしてまたバンコクに戻ったのでした。



そして、3回目に行った時です。

この時は雨季の真っ只中でした。

Simple Lifeに着くと閑散としていて営業していないようでした。

あれ?と思いながらレストランへ近づいて行くと、数人のスタッフがいました。

雨季でも一番雨の多いこの時期は、毎年2ヶ月間ほど閉めるのだそうです。

スタッフもこの期間を利用してそれぞれ地元に帰ったり、友達とどこかに行ったり、その間に宿の修復をしたりするとのことでした。

そっかぁ、どうしよう、、、。

と思っていたら、スタッフの一人が従業員用の部屋でよかったら泊まっていいよと言ってくれました。

バンガローは修理中なので、何人か地元に帰っているスタッフがいるから、空いている部屋でよければ寝泊りして構わないということでした。

ここまで来ちゃったし、他へ行く気にもならないし、とりあえず泊めてもらうことにしました。

本人いないのにいいのかな?とも思いながら。

でもここはタイ、マイペンライです。

そんな細かなこと、誰もあまり気にしていません。

修理をしているのを眺めていたり、ペンキ塗りを手伝ったり。

レストランはやっていないのでスタッフの作ったまかないを一緒に食べたり、一通り仕事が終わると皆んなでビールを飲んだりして過ごしました。

そして、その翌日がちょうど満月だったので、スタッフと一緒に船に乗って隣の島、フルムーンパーティーで有名なパンガン島に行くことになったのです。

満月になると、どこからともなく欧米人が集まって来て、どこもかしこもビーチ沿いのお店からは音楽がガンガン鳴り響き、踊っている人も、酔っ払っている人も、大声で騒いでいる人も、友達同士で盛り上がっている人も、ビーチに寝ちゃっている人も、なんでもあり状態です。

パンガン島にはそれより以前に、フルムーンとは関係ない時に一度来たことがあったのですが、メインビーチのハード・リンに数件並んだバーやレストランが賑わっているだけの普段はわりと静かな島が、この日だけは全く違った様子に様変わりするのでした。

ホテルに荷物を置き、それこそ貴重品を最小限にして私たちも出かけます。

何軒かを廻ってはみたものの、あまりの人の多さと雑多さに疲れて、結局数時間でハード・リンを離れ、もう少し静かなバーで飲んでからホテルに帰りました。

やっぱり、タオ島の静かさと賑やかさとが相まった絶妙なあの感じの方が私にはずっと居心地がいいと確信し、1泊だけして翌日にはパンガン島を後にしたのでした。


Simple Lifeに戻ってみると、部屋を借りていた本人が帰って来ていました。

「ごめんね」と言いながら部屋を空けようとすると、そのまま使ってていいよとのことです。

結局、彼が他のスタッフの空いている部屋に寝泊りするというなんだかわからない状態になりましたが、こういうところもタイ人らしかったり。

タイも日本同様南北に長い国なので、場所によって雨季の時期が多少違ってきます。

Simple Lifeが混んでいる時期に手伝いに来ているDJのKeiが、やはりランタ島でバーをやっているとのことでした。

勿論私も何度か会っています。

ランタ島はこの時期雨季ではないから行ってみたらどうかと教えてもらったので、貰ったネームカードを頼りに行ってみることにしました。

タオ島ではどこのレストランやバーも閉まっているところが多く、閑散としていたので、それなら行ったことのないランタ島に行ってみようと思ってのことでした。

ランタ島は、サムイ島やタオ島とは反対側のアンダマン海に浮かぶ島で、プーケットをもう少し南下したところにあります。

ランタヤイとランタレックと言われる2つの島からなっています。

タイ語でヤイは大きい、レックは小さいの意味で、ランタの大きい島と小さい島という意味です。

Keiのバーは、このランタレックにありました。

ネームカードを片手に聞き込みをしつつ、なんとかたどり着くことができました。

Simpe Lifeよりも大きくて洗練されたバーでした。

ただ、宿ではないので宿泊施設はありません。

それでも、Keiが自分のバンガローを空けてくれて寝泊りさせてくれることになったのです。

あっちも、こっちも、迷惑かけてすみません。

道路に面してバーがあり、敷地の奥の方に彼専用のバンガローとお姉さん家族が寝泊りしている建物が建っていました。

それから一週間ほど、このバーで過ごすことになりました。

昼間はスタッフと海に行ったり、観光したり。

スタッフも行ったことがないとのことで、一緒に洞窟を廻るツアーに入ったり。

夕方になると営業の準備を始めるので、それまでには戻って来てお店を開けるのを手伝ったり。

宿泊費がかからない分、お店で食べたり飲んだりしてお金を使います。

カウンターで飲んでいると、欧米人のお客さんが声をかけてきてご馳走してくれたりすることも。

そうなると、お店の売り上げを上げるためにも、飲むことで協力したり。

万が一酔っ払っても、すぐに後ろへ行って寝られるので安心です。

あれっ、これって飲み屋のタイ人の女の子と同じじゃないの?と思ったりも。

それでも、私も飲ませてもらえて、お客さんも話し相手ができて、お店も売上げになるから、まぁいいっか。

こうしてSimple Lifeのスタッフの思いがけない一言から、ランタ島を満喫してバンコクに戻るのでした。


※情報に於いては年月の経過により変わりますので、どこかへ行かれます際には、現時点での詳細をお調べいただきますようお願いいたします。

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