出会い9~神託

森での熊の姿を見て、鹿ノ谷に1ヶ月の意味はわかった。だが、なぜあれほど怒り狂うのか、分からなかった。

コッソリ里に向かう。村長には面識はあった悪い印象もないが、覇気のある人物でもなかった。

私と同じ年頃の息子を溺愛していると、チラッと聞いた。

私にはもう両親も家族もない。

捕まった当初、高齢だった母は無理がたたり戻る前に亡くなっていた。

従兄弟もいたが、関わりを恐れ、隣村に移ったそうだ。今は母の墓の位置さえわからない。

夕闇に紛れ村長の家へ

屋根裏で聞いた言葉を繰り返す気になれない

溺愛された息子は半月ほど前に、山で川遊びで流された小熊を見つける。ほっておいても死ぬだろうが、なんだか惜しくなった。

親熊もいないからと、捕まえて食べてしまった。というのだ。村長は熊の怒りがなぜか薄々気づいていたのだろう。

熊が暴れ出してから、納屋に息子を閉じ込め、出さなかった。今回話を聞いたのは私に聴かせるためだろう。

息子を助けてくれるなら、無罪放免とまでは行かないが、村に戻っても良い。という特別なもの

それより、私は早くお館様の元に帰りたかった。

この血なまぐさい里にいつまでもいたいと思わないが、弟君がいる。なんとかしなくてはなるまい。

藁にもすがる思いで、お社に向かった。

どうか、解決の道筋をお示し下さい。

神に祈ったのか、母に頼ったのか、はたまた見えない力に全てを委ね方向をきめようと考えたのか、やしろまでの足取りは重かった。

ここまで


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