人事担当者による大学ランキングの結果が面白い
戦略コンサルタントのアップルです。
大学のランキングは実に様々なものがあります。最も有名なのはイギリスのTimes Higher Education社が毎年発表している世界大学ランキングでしょうか。東大や京大などの日本の大学が世界で何位にランクインしたかが注目されニュースになります(直近のランキングでは東大が36位、京大が65位)。
その他にも、就職力ランキングとか、研究力ランキングとか、大学については実に様々な切り口でのランキングがあります。
その中で、今回紹介するのは、企業の人事担当者が採用した人材を踏まえて出身大学を採点した結果に基づく「企業の人事担当者から見た大学イメージ調査」です。日経HR社が年に1回調査、公表しています。6月に公表された直近の調査では、全上場企業含む4814社に調査をしており、かなりのN数に基づく結果です。
この結果がなかなか示唆深いなと思ったので、ランキングの結果をご紹介するとともに、結果に対するアップルの考察も加えたいと思います。
2020年調査の結果(上位ランキング)
6月に発表された2020年調査の結果は次の通りです(出所:日経HR社)。
1位が北大、2位が横浜国立大学、3位が名古屋大、4位が京都大、5位が東北大となっています(出所:日経HRニュースリリース)。
ちなみに、2019年と2018年の上位5位は以下のとおりです(こちらのサイトに一覧表が載っています)。
2019年
1位 九州大
2位 京都大
3位 大阪大
4位 東北大
5位 広島大
2018年
1位 筑波大
2位 京都大
3位 東京農工大
4位 大阪大
5位 東京外大
ちょっと順位のブレが激しいので、調査結果の安定性に欠くのは否めないですが、共通する傾向は、
・旧七帝大を含む、国立大の評価が高い
・ただし、東大は評価が低い(直近3年は10位圏外)
・早慶など私立トップ校も上位にランクインしていない
という感じです。
この結果の背景にある要因をアップルなりに考察してみます。
地方国立大の人材は実際に粒ぞろい
地方の国立大出身者は実際に優秀な人の割合が高いという印象をアップルも持っています(仕事の同僚や、知人をみていて)。
地方の最優秀層は確かに地元を飛び出して東大や京大を目指します。ですが昔に比べると優秀層が地元の国立大学に進学する傾向が強まっているように思います。
例えば東大の場合、東京一極集中が進んだ結果、入学者に占める東京出身者の割合が増えています。東京と地方との教育環境の格差が年々広がり、地方から東大に入るのは昔に比べて難しくなっています。今や地方から”現役”で東大に入るのは並大抵のことではないでしょう。浪人するとしても、地方にはまともな予備校がなかったりもするので、浪人して頑張れば東大や京大に入れるというわけでもありません。
こうしたことから、もし仮に東京に生まれていたら十分東大を狙える頭脳をもった人材でも地域の国立大学に進学するケースは多分にあるように思います。
つまり、ポテンシャルは東大・京大並みの人材が、地方国立大(特に旧帝大)には一定割合いるということです。
期待値とのギャップが評価に影響
これは「なぜ東大や早慶のランクが低いのか」に対するアップルの仮説です。
東大や早慶はブランドが強いので、採用した人材に対してはどうしても期待値が高くなります。言うまでもなく東大は国立大学のトップ、早慶は私立大学のトップです。とかくトップに対しては期待値が一段と高くなる傾向があります(ナンバー1とナンバー2に対する期待値の差が大きいということは、以下の記事にも書いたところです)。
「社会人としての仕事力」という意味で、東大卒や早慶卒の人が平均値としていけてない可能性も考えられますが、おそらく「採用前の期待値に対して採用後のパフォーマンスはそれほどではなかった」という期待値とのギャップによって評価が低くなっているんじゃないかと思います。
つまり、このランキングの結果は完全な”絶対評価”ではなく、当初期待とのギャップという主観も入った”相対評価”と捉えた方が良いように思います。
逆にランキングの高い地方国立大については、東京に本社を持つ企業の人事担当者だとあまり知らない、あまりイメージをもっていない可能性があります。例えば北海道大学のことをよく知る人は、北海道以外にはあまりいないでしょう。「北海道にある一番有名な国立大学ね」くらいのイメージしかないと思います。
このように地方国立大に対するイメージがぼんやりしているため、それらの大学から採用した人材に対する期待値もあまり高くないはずです。でも実際に採用してみたらなかなか使える人材が多いので、「期待値を超えるプラスのギャップ」により評価が高くなっている可能性が考えられます。
国立大は文系でも入試に数学がある
社会人になって仕事をする上で、数字に強いことはかなり大事です。当然業種や職種にもよりますが、数字が強いと一つの大きな武器になるし、仕事の価値にもつながります。
アップルが所属するコンサルティング業界は数字の強さが求められる業界の最右翼の一つです。ビジネスは数字とロジックで動きます。ビジネスコンサルタントとして数字に弱かったらとてもじゃないですがやっていけません。
だからこそ、採用面接の中でフェルミ推定の問題を出し、数字に強いかどうか(暗算力、計算力、計算式を組み立てる力)を入念にチェックします。また、特に戦略ファームは、結果として理系出身者の人が文系出身者の人より多い傾向にあります。
その点、国立大は、基本的に文系でも二次試験の入試科目に数学があります。センター試験も数学を受けないといけません。最低限の数学力は入試対策の過程で培われますし、本当に数学が苦手な人は入試で数学が必要とされない私文へと逃避するでしょう。
このように入試に数学が課されてことが、数字をちゃんと扱えるという意味での仕事力につながっている可能性があります。
まとめ
3つの考察はあくまでもアップルの仮説なので、ひょっとすると間違っている可能性がある点ご容赦ください。
ただ、このランキングがファクトとして示していることは、地方国立大卒は「お買い得」ということだと思います。
コンサルティングファームだと地方国立大卒(京大を除く)はちらほらしか見かけませんが、コンサルティング業界でももっと積極的に採用をしてもいいのかもしれません(新卒にしても中途にしても、東京の採用マーケットにおける数は少なそうですが、、)
今回は以上です。
最後までご覧いただきありがとうございました!
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