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AppleはAirTagで再びサードパーティーを「滅ぼす」のか

忘れ物防止タグを開発しているTileとAppleの対立が深刻化してきました。


忘れ物防止タグを開発・販売する米Tileは、欧州連合(EU)の公正取引委員会に対して、アップルが自社製品の機能を阻害しているとして、競争法違反の調査をするよう申し立てをしたと報じられています。

忘れ物防止タグTile、アップルが競争を阻害しているとしてEUに申し立て


これはAppleが開発しているという噂の忘れ物防止タグと、Tileの開発している忘れ物防止タグTileが競合することを前提に、iOSなどでAppleが自社を有利に、Tileを不利に取り扱っていると主張するものです。

Tile社は今年のはじめにも、アメリカ合衆国下院司法委員会が開催した公聴会で同様の主張を行っていました。

Appleがサードパーティと競合する製品を後出しで作り、サードパーティを追い出してしまうというのは、以前から繰り返されてきた光景です。

この記事では、忘れ物防止タグの現状を踏まえつつ、AirTagの位置付けやデザインについて考えてみたいと思います。

忘れ物防止タグTileとは

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Tile

Tileは忘れ物防止タグと呼ばれる小型のデバイスです。

財布や鍵など、なくすと困るものにこのデバイスを取り付け、スマホとBluetoothで接続します。

専用アプリがスマートフォンからの接続が切れた時点での位置情報を記録してくれるので、Tileを付けた物を紛失した時のおおよその位置が特定できるというわけ。
例えば財布を落としたりどこかに置き忘れたりしても、おおよその位置がわかるので、すぐに探しに行けます。

他のTileユーザーがTile付きの忘れ物の近くを通ると、そのユーザーのアプリが反応し、その位置が記録されるという機能もあります。

音を鳴らして位置を確認したりできるタイプもあるので、家の中でなくした場合も役に立ちますね。


複数サイズで展開しており、取り付けたい物の大きさや性質によって使い分けることになります。


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Tile


競合製品もあるようです。ただ、知名度的にはTile一強なのではないかと。



AirTagの機能

AirTagはAppleが自分でその名前を公開してしまったことから、未発表にも関わらず、ほぼ確実に発表されると考えられています。

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Exclusive: AirTags confirmed in a new Apple Support Video!


オフラインでもAirTagを発見できるようにする機能の関するものなので、どこにあるか知る必要のあるデバイスだと推測できます。

その上でタグという名称がついていることから、持ち物にタグのようにくっつけて位置を確認できるデバイスだと考えられるわけです。


デバイスをなくしたときに位置が分かる機能は以前からApple製品にありました。
「探す」という名前のアプリとしてiOSなどに搭載されています。

同じAppleIDでログインしているデバイスから、他のデバイスの位置情報を確認できます。
なくしたデバイスがGPS搭載デバイスの場合は、位置情報が取得できるので、発見率も高くなります。
音を鳴らす機能も当然あります。

AirPodsもこれに対応していて、最後に接続が確認された時刻・場所を確認できます。AirPodsはBluetoothでiPhone等と接続するので、やっていることはTileとほとんど変わらないのです。


この状況を踏まえれば、Appleが忘れ物防止タグを作り、「探す」アプリで探せる持ち物の範囲を広げるのは全く自然なことです。


またTileの場合、Tileユーザーでないと忘れ物についたTileに反応しません。ですから、他のユーザーがTileに近づいた時に位置情報が取得できると言っても、それほど頻繁にある話ではないのです。

一方、iOS自体に忘れ物防止タグに反応する仕組みが備わっていれば、Tileよりも高い確率でなくした物の位置がわかるでしょう。言ってしまえば、iPhoneユーザー全員がタグに反応するセンサーのようになるからです。

プライバシーを重視するAppleのことなので、個人情報と結びつかないこと、オン・オフは選べることをユーザーに案内するでしょうが、よく考えないでオンにするユーザーが多いであろうことは容易に想像できます。


この忘れ物の発見確率の高さがAirTagのアピールポイントになると思われます。


TileとAirTagに基本的な違いはないものの、iOSにネイティブで機能を組み込めるAppleが圧倒的に有利というわけです。


AirTagのデザイン

現状、Tileは交換可能な電池で動作するものと、交換不可のタイプのものがあります。

Appleはバッテリーで動作し、繰り返し充電して使えるデバイスをこれまで作ってきたので、同じようにバッテリー搭載のデバイスになる可能性はそれなりにあると思います。
リサイクルの手間や環境への負荷が抑えられるなら使い捨てでもいいのですが、ちょっとAppleのイメージ戦略と合わない。

小型のデバイスへのバッテリー搭載は、Apple PencilやAirPodsですでに成功しているので、別に作るのは難しくないと思われます。

ただ、充電のための仕組みを搭載すれば、それだけデバイスのサイズは大きくなるので、小さい方が便利なデバイスとしては難しいものがありますね。

充電方式をどうするのかも気になるところ。
端子はUSB-CかLightningか。ワイヤレス充電に対応させるのか。といった問題ですね。

Qi規格のワイヤレス重電に一本化して、iPhoneで充電できるようにするとかだと結構面白いんですが。ネットで叩かれそうな仕様ですけどね。



素材はホワイトのプラスチックというのが一番ありえる選択肢ですよね。

シルエットは円形が想定されていますが、これは持ちにくいので考えにくい。
角丸の正方形でいいような気がします。でもTileと丸かぶりですよね。とは言え、角を丸める処理を変えれば十分差別化できるので、正方形のシルエットで正面からぶつけてくる可能性もありそうですが。

個人的には薄くするために、縦横1:2ぐらいの長方形になったりしたら面白いと思ってます。形的にはそのほうがタグっぽいし。

その上で、キーリングやその他身の回りのものにくっ付けるためのアダプタのようなものが用意されていそうです。


まとめ

Tileの方が製品ラインナップが幅広く、かつ既に多くのユーザーを獲得しているという利点はあります。
しかしネイティブアプリを用意できるAppleの製品の方が圧倒的に便利なのは明らかで、体力だけでAppleが勝ってしまいそうな状況です。

ユーザーにとっては便利な話ですが、長期的には本当にそれでいいんですかね。

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