わたしの、あなたの、関わりをほぐすために、新たな方法を見つけたい。身体と思考と感覚をほぐしていくこと。その可能性や手法とは?企画を立ち上げたナビゲーターへ、8つの質問!【8/2(月)12:00まで締切延長!】
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わたしの、あなたの、関わりをほぐすために、新たな方法を見つけたい。身体と思考と感覚をほぐしていくこと。その可能性や手法とは?企画を立ち上げたナビゲーターへ、8つの質問!【8/2(月)12:00まで締切延長!】

Tokyo Art Research Lab の東京プロジェクトスタディ1「わたしの、あなたの、関わりをほぐす ~共在・共創する新たな思考と身体を拓く~」では、ただいま参加者募集中です!(8/2[月]12:00申込締切)
ナビゲーター・和田夏実さん(インタープリター)岡村成美さん(Designer/Director/Costume Designer/Artist)は、手話を第一言語とするコーダ(ろう者の両親のもとに生まれた聴者の子供[CODA/Children of Deaf Adults])で、幼い頃から家族の間で、コミュニケーションの回路を拓いていくような工夫を日々重ねていたそうです。例えば、家族の視界に向かってティッシュを投げたり、ボールを家の2階に投げて呼びかけるなど。
その行為一つひとつはささやかかもしれないけれど、家族が振り向いてくれたり、気づいてくれたりするその瞬間に、つながったことを実感できる嬉しさがあるんだ、とふたりは言います。
スタディ1では、身体性や感覚が異なる者同士のコミュニケーションの再考をテーマに、自分自身と他者をつなぐ「新たな方法」を探ろう、発明してみようという試みです。本記事では、「8つの質問」を通して、スタディ1の背景にあるナビゲーターふたりの感覚を紐解きながら、スタディ1の具体的な取り組みや特徴についてご紹介します。

Q1.スタディ1のテーマの背景には、おふたりの経験や実感がにじんでいるように感じます。ふと思い出すエピソードやこのテーマに至った経緯などを教えてください。

和田: 手話で話す父と美味しいご飯を食べた帰りの夜道、電灯の光の下でお喋りするために立ち止まって、暗がりではもくもくと歩いて、また止まってお喋りする、あのリズムがとても好きでした。1電灯、1トピック。ふたりともとてもお喋りで、手が止まらなくて。でも、帰らなきゃ、家に着いたらやっと思いっきり喋れる!と思いながらも、30分から1時間くらいついつい話しちゃう。そんなふうにして重なっていった時間やその中で生まれた父との伝えあいのルール。誰にでも大いなる日常はあって、その中で実践や工夫が重なっていく。こういう、ちょっとしたことを起点に伝えることの創発について、スタディ1では考えていきたい、いろんな実験をご一緒できたらいいなと思っています。

岡村: わたしは和田さん同様、両親とも耳が聞こえず、手話を第一言語として育ちました。2018年に設立した「LOUD AIR(うるさい 空気)」はその体験から由来しています。わたしの家族は兄を含めた4人家族で、いつもリビングではいろんな会話が行き交っていました。声は発さず無音でしたが、とてもうるさいと感じる空間だったんです。そこから「LOUD AIR」が生まれました。家で感じる音や空気には敏感かもしれません。父の帰ってくる気配、今日は機嫌が良さそう、とか。近頃では父とよくドライブに行くのですが、運転中でほぼ見えない隣に座る父の手話を、少し見える手や動いた風で読み取ります。これは父としかできないコミュニケーションですが、きっとみなさんが恋人としかしない謎の行動なんかも、同じだと思います。なんとなくその人とは通じる、読み取れるみたいな方法がきっとあるはず。そんなコミュニケーションを他者とどこまでできるか、みたいなことを考えて新たな方法を見つけたいです。

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和田さん、岡村さんの共同制作によるスタディ1のメインビジュアル

Q2.言葉で考えるよりもビジュアルイメージで考えていくことが多いように思う、と以前おふたりは言っていましたね。それは、手話という視覚身体言語で思考する時の特徴なのですか?

和田: 特徴、かはわかりません。でも、言葉で伝えられないことがたくさんあること、そしてそれに触れたり、頭の中のイメージや表したいことを実感を伴って伝えられる言語として手話があって、その実感に近いと感じるのがビジュアルや映像の方なのだと思います。
良い意味で言葉を信用していないところがある分、視覚に変換したり、動きにすること、他の方法にしていくこと、それを創作としてではなく、ともに思考するための方法として自然と活用できたらと思ったりもします。

岡村: わたし自身の特徴でもあると思いますが、私は活字に弱く、あまり文章を書いたり読むのが得意ではありません。昔から写真や映像ばかり観ていました。わたしの家庭では父がテレビの権限を持っていたので、よく刺激的な映画が流れていました。(プロレスや、『アナコンダ』、『ジョーズ』など)無音で、字幕だけで観ていたので視覚的な読み取りは、良くしていたと思います。

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和田さんが企画、Image Directionを岡村さんが担当した連載「Sensory Playground(=感覚の遊び場)」森ビルのオウンドメディア「HILLS LIFE」より、Playing Game 001「あたらしい手のつなぎかた」

Q3.感覚を探るカードゲーム“Qua|ia”(2018)を共同開発されていますね。「せつない」「やさしい」「ただしい」「えろい」という4つのキーワードに紐づくイメージの写真を収集し、それらの写真をカード化して遊ぶというもの。言葉とイメージ、自分自身の無意識が浮かび上がってくるような仕掛けですごく面白いですね。このゲームをつくった時はどのようなことをポイントに制作したのですか?

和田: いろんな方の携帯のカメラロールの中のつい撮ってしまった写真を集めていた時に、「あ、これわかる!」と思うものもあれば、「なぜ?」と思うものもあって。でも、私にとって「なぜ?」と思う写真が、他の誰かには「わかる」ものだったりする。その時に、改めて、人それぞれの感じ方が違うこと、それなのになぜか感覚やイメージが重なったりすることが不思議だなと感じて。そこに嬉しさや愛おしさ、触れられなかったその人らしさが垣間見れる気がします。言葉だけじゃ踏み込めないところに、触れられたらと思って制作しました。

岡村: 「LOUD AIR」の展示会に来ていただいた方々に画像をもらったのですが、国籍、性別、年齢、職業も様々な方たちで、育った環境や食べているものも違う、遠くの人かもしれない。そんな人と60枚ある中の選択した1枚のカードが同じだったりすることがある。それだけで他者を、その人を意識できますよね。だから、できるだけ様々な人に写真を提供してもらいたい、という気持ちでした。

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Q4.“Qua|ia”(2018)を制作してみて、人の感覚や記憶の関係、感覚とコミュニケーションについて、おふたりの中でどんな新たな気づきや発見がありましたか?

和田: 関係性ができてしまった人、なかなか関係性をほぐすのが難しい人とこそやると、非常に面白いゲームだなと思いました。仮面が剥がれた瞬間、愛おしさが増す。この人の中に、こんな感覚があるんだ、と発見する。その人の目で世界はどう見えるのか、そんなふうに関係や想像の矢印が変わっていくことで印象や接し方もまた変わったりしていきそうだなと感じています。

岡村: 何度もいろんな方といろんな時期にゲームしていますが、自分自身でも季節や時間によって選ぶカードが変わり驚いています。他者の頭の中を少しだけ覗ける。会話の中では知れないことをカードを通してなら聞ける。自分と誰かの間に、新たなつながりをつくったり、動かしたりするきっかけになるように思います。

Q5.遊びもコミュニケーションの回路を拓く一つの方法ですね。もう一つ、今回、ゲストとして参加くださる田畑快仁さん(触覚デザイナー)と共同開発されたコミュニケーションゲーム「LINKAGE」について教えてください。

和田: LINKAGEは2019年からmagnet(高橋鴻介、和田夏実、中山桃歌、一森加奈子)としてつくっている触覚コミュニケーションゲームです。盲ろうのハヤトくんに出会って、触手話を教えてもらった時、こんなにも豊かで面白いコミュニケーションがあったのか!とその情報の豊かさにびっくりしてしまいました。その人自身の圧力や優しさ、意識の行方などがだだ漏れで、この面白さをより多くの人と遊びたいと制作しています。知らない人同士で思いがけずつながってしまうことも、このゲームの魅力だと思います。

岡村: わたしも何度も遊びました!完成した棒の造形が美しいと嬉しくなります。切り取って巨大化してアスレチックにしたいですね。

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Q6.岡村さんは、モノと向き合うだけでなく、人と人の関係性が自分自身の表現に影響することに、和田さんと出会って気づいた、と以前お話されていましたね。いま、「身体性や感覚が異なる人々とのコミュニケーション」を岡村さんが想像する時、例えばそれはどんなイメージですか?

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岡村: モノとだけ向き合うのではなく、身体性や感覚が異なる人の世界を少しでも知ることができるだけで、いつも眺めている夕日がただの夕日ではなくなります。
「何かを食べる想像をします。それは、ナポリタンの味に綿菓子の食感です」みたいな、入り混じった世界を描いているかもしれません。

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(写真左)LOUD AIR 2020SS COLLECTION "In my head"より。
(写真右)森ビルのオウンドメディア「HILLS LIFE」連載"感覚の遊び場" 第2回「イメージを着るーモデル・イジヅカユウ氏 フォト&インタビュー」より、イシヅカさんが幼い頃より焦がれている魚の一つ「リュウグウノツカイ」の衣装は、割り箸で制作されている。

Q7.スタディ1では、3人のゲストをお迎えして、身体と思考と感覚をほぐすワークショップを計画中です。具体的にどんなことを行うのか、ズバリ、一言で表すと、または絵にするとどんなイメージですか?


和田: 南雲麻衣さんの回は、「ドッジボールするからだ、日常の中のからだ、お喋りなからだ」です。

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ワークショップのテーマは、無意識的な身体と手話する思考身体のあいだで翻訳を考えること。それをドッジボールという遊びを通して探ってみようと、南雲さんと話しています。

藤本昌宏さん回は、「1ヶ月間、恋について考える」。

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ひとめぼれ、恋に落ちる時、一体何に惹かれるのか?全盲の言葉の探究者である藤本さんと一緒に、「恋」について紐解き探究します。


田畑快仁さん回は、「いっしょに重いものを運ぶ」。

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テーマは、身体感覚を通してつながる感覚を共有すること。とにかく何か重いものをみんなで運ぶワークショップを計画中です。手で持ったり、身体全体でその重みを体感したり、触覚のコミュニケーション方法を探りながら、他者の身体的境界を超える感覚を体感するような内容になるといいなと思っています。

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ゲストの南雲麻衣さん、藤本昌宏さん、田畑快仁さん

Q8.最後に、このスタディ1での経験を通して、参加者そしてナビゲーターも含めて、どんな変化が起こっているだろうと想像していたり、期待していますか?

和田: わかろうとすることも、近づくことも、傷つき、傷つけるかもしれないと思うと足がすくみます。けれど、誰かと何かを発見した時、共創の中で思いがけない景色に出会った時、そこにはひとりでは到達できない創造と喜びがあると思います。小さなことを共有したり、愛おしんだり。そんなことを通して、回路を拓き、ともに新たな世界の見え方に出会いたいです。


岡村: わたしが普段、人と話す時、まず受け入れる。咀嚼する、考える。ということをしています。何度も人と向き合う、うんざりするほどです。でもその先にみたことのない世界や体験がありました。言葉で言い表すのは難しいですが、1個でいいです、何でもいいです、いつも歩いている道に何個石が落ちているのか、とか。そんなことでいいんです、小さくて。そんな変化を想像しています。

(聞き手:嘉原妙(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー)

▼参加者募集中!|申込締切:8/2(月)12:00

ただいま、スタディ1では、参加者募集中です。申込方法や詳細は以下のプログラムページをご覧ください。
みなさんの参加を心よりお待ちしております!

【関連書籍】
『つたえる、うけとる、つたえあう ー interpret 新たなコミュニケーションの在り方をみつけるために ―』は、和田さんが企画制作として携わり、制作した冊子です。視覚身体言語と音声書記言語の特性によって変化するコミュニケーション表現や思考、意思疎通をはかろうと、日々、わたしたちが行っているコミュニケーションの本質について、手話通訳の視点から改めて捉え直そうとするものです。




謝謝!
アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー。「TERATOTERA」「500年のcommonを考えるプロジェクト『YATO』」「Tokyo Art Research Lab」「Art Support Tohoku-Tokyo」を担当。最近、夜型から朝型生活に。大好物はマシュマロ。