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再開ムードは反転するのだろうか|7/11〜7/15

コロナ禍の日々の記録。平日の仕事中心。2020年の1回目の緊急事態宣言の最中に開始。3回目の宣言解除の日から再開、少し休んで「第6波」から再々開。すぐに途切れて、再々々会。もう3年目。

2022年7月11日(月) 市ヶ谷

じめじめと暑い。出社するだけで汗が止まらなくなる。週末はワクチンの副反応で寝て過ごす。投票には行った。自民党が圧勝のニュース。東日本大震災から11年と4ヶ月目の月命日。『戦争体験 一九七〇年への遺書』を読みはじめる。

それは、第一に、昭和十八年十二月一日、法文科系大学教育の一切が停止され、学生にたいする徴兵猶予の制度が撤廃されて、わが国の学生は、ひとり残らず戦場に送り出されたという事実を、こんにちの学生諸君が、もはや知らないということ。第二に、『きけわだつみのこえ』は、どうもピンとこないところがある、というふうな発言があったことである。
私たちの世代にとって、死んでも忘れられない昭和十八年十二月一日、その日を、十年後のこんにち、学生諸君さえ、もうそれを知らないということに、私は深く驚かされた。

安田武『戦争体験 一九七〇年への遺書』ちくま文庫、2021年、19頁

体験的な10年前への距離の近さと、社会的な10年が過ぎる早さ……「11日」という日付を見ると思わず「月命日」と書いてしまう自分の感覚とも通じるものがあるんだろうなと思う。すでに自明なものは自明ではない時間に入っているんだろうけど、どうにも実感しがたい。この本を、東日本大震災を何らかの体験から語る人たちと読んでみたい。

2022年7月12日(火) 市ヶ谷

不安定な天気。相変わらずの暑さだけど、たまに雨が降る。アーツカウンシル東京の昨年度の事業報告書のゲラを確認したり、今月発送予定のドキュメントの送付先を精査したり、書類をつくったり……デスクワークにどっぷりと。
NPO法人アーティスト・コレクティヴ・フチュウ(ACF)が「やど(かり)プロジェクト」をはじめる。大東京綜合卸売センター(府中市場)の空き店舗のスペースを活用した拠点づくり。次の店舗利用者が決まるまでの暫定プロジェクトの予定なのだという。いつの間にかネーミングとロゴが出来ていた。決まるとスピードが早い。

東京都の新規感染者数は11,511人。先週の倍、4ヶ月ぶりの1万人超えだった。近しいところでも感染報告があった。出演者が陽性のため公演中止のニュースも見かける。急激に増えているが、これまで以上に周囲の警戒感は弱い。係会(注:東京アートポイント計画のスタッフ定例会)でも「閉じる」という議論は、まだ出ない。むしろ、2年ぶりの遠方出張計画を先週からつくりはじめた。

2022年7月13日(水) 自宅

ACFが「ラッコルター創造素材ラボー」で参加予定だった府中市商工まつりが中止になったと「悲報」が入る。「コロナの急速な感染拡大が理由……別のまつり系も影響出そうだねと話しております」とのこと。再開ムードは反転するのだろうか。
「移動する中心|GAYA」のZoomミーティング。この頃、繰り返し議論をしているケアの分野に文化事業がどうかかわれるのかという話。「患者」ではなく「その人」として出会う方法に使えるのではないか、という気づきは確信になりつつある。数日前にアサダワタルさんが更新していたnoteの記事を思い出し、ミーティングで共有する。

では、何のために「アートで支援」をやってきたのかというと、簡潔に言えば、アートは支援の一つとして誰かをいたずらに評価せず、いろいろな個性を尊重できるからです……(中略)……考えれば当たり前のことですが、利用者さんは「障害者」である前にひとりひとりまったく異なる背景と個性を持った「人間」であり、「障害特性」として理解する以前の、あるいはそれも含めて「その人自身」に広くかつ深く関わろうとする態度が、支援職には必要なのかもしれない。そうなってくると、利用者さんと向き合うときのスタッフ側の佇まいは、福祉系の大学や専門学校で学んだことより、その人の様々なタイプの社会経験や今まで何を考えてどう生きてきたかに左右される。これって、すごく「試される」わけだけど、その分、自由さは半端ないですよね。だからこそ、スキルが構築できていないというよりは、むしろ可能性なんですよ。正解がないこと、相手との向き合い方が個別であること。これって、アートの性質そのものだと僕は思います。

その出会いの手立てや「道具」に何を用意できるのか。AHA!の松本篤さんから(これもよく引き合いに出される)「Cultural Probe」の話が出てくる。

全国の新規感染者数は94,493人。5カ月ぶり9万人を超えた。東京都は16,878人で、26日連続で前の週を上回る。

2022年7月14日(木) 市ヶ谷

局地的な大雨が各地で降っている。心配。東京都は感染状況の警戒レベルを最も高い「大規模な感染拡大が継続している」に約3か月ぶりに引き上げ。さらに感染者数が伸びる可能性が出てきて、直近の事業実施や計画中の事業のやりかたが気にかかってきた。検温、消毒、距離。現場での対応は変わらない。前から規則は緩んでいない。あとは特段の「お達し」が出るのか……だけど、出なさそうな気配がある。東京都の新規感染者数は16,662人、先週の約2倍。全国では97,788人で、先週の2倍以上。18時から首相会見。安倍元首相の国葬実施、変異種BA.5による感染拡大のためワクチン4回目接種の対象拡大、電力需要逼迫に対応した原発の稼働指示……。

この冬については再度需給逼迫(ひっぱく)が起こることが懸念されています。何としてもそうした事態を防いでいかなければなりません。私から経済産業大臣に対し、できる限り多くの原発、この冬で言えば、最大9基の稼働を進め、日本全体の電力消費量の約1割に相当する分を確保するとともに、ピーク時に余裕を持って安定供給を実現できる水準を目指し、火力発電の供給能力を追加的に10基を目指して確保するよう指示をいたしました。
 これらが実現されれば、過去3年間と比べ、最大の供給力確保を実現できます。政府の責任においてあらゆる方策を講じ、この冬のみならず、将来にわたって電力の安定供給が確保できるよう全力で取り組みます。

岸田内閣総理大臣記者会見、2022年7月14日

2022年7月15日(金) 自宅→両国

午前は、Zoomで「ラジオ下神白」の映像についてのミーティング。小森はるかさんがつくったドキュメント映像が、月末にせんだいメディアテークで公開される。その後の動きについて相談をする。ちょっとした妙案が思い浮かぶ。おそらく、もっとも望ましいソリューション。

午後は横網町公園へ。東京都慰霊協会の方に話を伺う。カロクリサイクルのワークショップで、ご自身が取り組んでこられたことを伺い、園内を案内いただくための事前打合せだった。園内の東京都慰霊堂には、震災と戦災で亡くなった約163,000体の遺骨がある。公園であり、墓地である。毎年、関東大震災の9月1日と東京大空襲の3月10日には大法要が開催されている。来年は関東大震災100年で、そのための事業も準備が進められていた(後日、このときに聞いたアニメーション動画の情報が公開された)。ここ数年では、政治的な諍いの場にもなっているのだという。報道では知っていた。その「議論」を知るだけでなく、淡々と(きっといろんな苦労もあるだろうけど)この場を営んでいる方の話を伺うことの大事さを実感する。
昔の横網町公園は木々が鬱蒼として「怖い」という印象もあったのだという。そのため計画をもとに公園の植栽には手が入れられてきた。園内では喫煙や休憩に佇む人や、遊具の近くには親子連れの姿もあった。この穏やかで和やかな風景も、長い時間をかけて、かたちづくられてきたのだと知る。
打合せが終わると雨が降りはじめていた。オフィスからは出社人数を減らすように、と連絡が入っていた。政府のコロナ分科会の尾身会長は「現時点では行動制限「ありえない」」と語った。それでも、現場レベルで制限をかけていくことも出てくるのだろう。
東京都の新規感染者数は19,059人、4日連続で1万人を超えた。先週より2倍以上。全国では103,311人、5ヶ月ぶりに10万人を超える。

(つづく)

▼ 1年前は、どうだった?(2021年の記録から)

▼ 2年前は、どうだった?(2020年の記録から)