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ログインの反対語は捺印なのか|9/29〜10/5

緊急事態宣言のなかで始めた日々の記録。火曜日から始まる1週間。仕事と生活のあわい。言えることもあれば言えないこともある。リモートワーク中心。出掛けることが増えてきた。ほぼ1か月前の出来事を振り返ります。

2020年9月29日(火) 北千住→市ヶ谷

朝から北千住へ。東京藝術大学の千住キャンパスでミーティング。10名ほどが机を囲んで議論する。何度かオンラインで顔も合わせてきたけれどオフラインだと気分は違う。視点が平面から立体になる。発言していないときの表情や場の雰囲気が読める。ミーティングの前後の時間がある。特定の人に目を向けたり、声をかけたりすることで、ひそひそ話をすることもできる。やっぱり対面にはオンラインに代えがたいものがある。
「10年目の手記」の3回目の選考を行う。満場一致で朗読の手記が決まる。いつもほど、長くはならなかった。もしかしたら所感はメールやテキストベースでやりとり出来たものだったかもしれない。それでもZoomで集まって、意見を交わすことに代えがたいものがある。
オンラインに慣れてきた状況で、コミュニケーションに使うメディアへの接し方も変化してきたのではないかと思う。たとえば、これまで電話中心からメール中心に移行していたものが、オンラインで話すことに慣れるとメールよりも、短くともオンラインにつなぐほうが楽な気がしてきた。メッセンジャーを使うとテキストも短くなる。メールで出来なかったことが、オンラインで出来るようになった感覚がある。9月まで台風上陸なしは11年ぶり。

2020年9月30日(水) 自宅

Zoomでミーティングが2本。「移動する中心|GAYA」のミーティングでは開設したばかりのnoteの記事の方向性について。係会(注:東京アートポイント計画スタッフのミーティング)では事業の進捗共有やオンライン対応の課題を議論する。ヨコハマトリエンナーレ2020やさいたま国際芸術祭といった近距離の視察出張はあり、今年のアーツカウンシル東京の忘年会はなしになる。

2020年10月1日(木) 自宅

東京都立大学で非常勤講師の授業が初回を迎える。なんやかんやで3年目。授業名は「文化創造応用特論」で修士課程の院生が対象。事前に送付されていたオンライン授業の数々の情報を追えておらず、ここ数日で急いで準備をする。ぎりぎりになったのは手が回らなかったのもあるけれど、正直、オンライン化したことが憂鬱だった。初対面のメンバーで、どうコミュニケーションをしていくか。オンラインでリアクションは、どう拾えるのだろうか。これまでのやりかたを変える必要があるだろう。あまり欲張らず、話は絞ったほうがよさそう。記録に残すことも想定し(対面より)厳密に言葉を選ぶ必要もありそう。考えはじめると、いろいろと心配だった。
結果、シラバスから大幅に進め方を変更した。初回はイントロダクションとして、できるだけ進め方とねらいを丁寧に話す。Zoomの画面共有でスライドを使う。画面上にはカメラと音声がオフになった十数人がいる。大体がデフォルトの人型のアイコンが表示されたグリッドが並ぶ。犬が1匹。音声が聞こえているかと問いかけると、親指を立てたリアクションのマークが何人かのアイコン上に現れる。
合間に5分休憩を入れて、少し早めに切り上げる。思ったよりも楽しめた。やってみるのが手っ取り早い。意外と対面より向いているかもしれない。相手が見えないと目の前の小さな笑いをとりにいく無駄なサービス精神が発動しにくい。仮登録が14人で、名前を見るかぎり、5人が留学生。例年より比率が多い。

2020年10月2日(金) 市ヶ谷→自宅 

朝から市ヶ谷オフィスに出社。納品したての『ほやほや通信 01』を発送用に半分に折る作業をする。『ほやほや通信』は、Art Support Tohoku-Tokyoの「ぐるぐるミックス in 釜石」で発行をはじめたタブロイド型のメディア。「ぐるぐるミックス in 釜石」は津波で被害を受けた旧釜石保育園の機能を引き継ぎ、2015年に新設されたかまいしこども園を舞台に2016年から活動を継続してきた。その現場の雰囲気を、出来立て「ほやほや」でお届けしようとするもの。じっと見つめると題字のトゲトゲした感じが、東北沿岸部でお馴染みのホヤに見えてくる…。そのほか発送作業を少々。午後は在宅に移行。
経済産業省では、もろもろの申請手続きで押印を廃止するらしい。感染拡大のなかでオンライン(デジタル)化が議論されるとき、何かとハンコが目の敵とされてきた。ログインの反対語は捺印なのか。アメリカのトランプ大統領夫妻が陽性。

▼「ぐるぐるミックス in 釜石」レポート(2019年)

2020年10月3日(土) 桜木町

横浜市民ギャラリー「新・今日の作家展2020 再生の空間」展の関連イベントへ。出展作家の山口啓介さんと作家の徐京植さんの対談。タイトルの「二つの、3月11日/震災後とコロナ後の世界」に惹かれて早々に予約をしていた。
桜木町駅に着くと、ちょうど送迎バスが出発するのが見えた。時間も迫っていたため、駅の反対側から出て、歩いて向かう。横浜市民ギャラリーに続く、坂道がこたえる。入口で検温。35.5℃。平熱より1℃低い。この頃、たまに検温すると同じくらいになることがあって、ちゃんと測れていないのかと思っていたけれど、血圧に続き、体温も低くなっているのかもしれない。血の巡りの悪さよ。原因は運動不足でしかない。
対談では山口さんが語り始めに「二つの、3月11日」の意味を話した。ひとつは言うまでもなく、東日本大震災。ふたつめは今年の3月11日にWHOが新型コロナウイルスの世界的なパンデミックを宣言したことに由来していた。山口さんは震災後からノートに日記をつけている。だから、気がついたのだという。地下に展示されていた山口さんの『震災後ノート』には世界中のニュースや統計的な数字がびっしりと書き込まれていた。日記を書くことで、世界へアンテナを張っているかのような内容。創作の源泉になっているのだろう。
いくつもなだらかな山を被ったような作品「歩く方舟」。山からは何本もの足が見えている。瀬戸内国際芸術祭で設置された作品が向かう先は福島の海。方舟は原発にパカっとかぶせる石棺のイメージ。その源泉をたどればナウシカの王蟲もあるのだという。
冒頭には感染症対策と録画映像を後日ウェブ配信するというアナウンス。話し手の前には、飛沫防止のフィルムが等身大のフレームに据え付けられている。聞き手との間にある皮膜一枚。プロジェクションに合わせて会場の電気のオンオフをするたびに光が反射する。会場のイスは距離をとって、まばら。真ん中には撮影用のカメラとカメラマンが座っている。「以後」の現場運営の方法を考えさせられる。感染症対策は必須。それによって変わってしまった場の印象や参加者の感覚を意識した運営の方法が必要なのだろう。対策に対する対策を考える。対面イベント、学ぶこと多し。寄り道をせずに、まっすぐ帰宅。

2020年10月4日(日) 自宅

インフルエンザの予防接種を受ける。いつもならば日曜日は休診だけど、予防接種だけのために開けていた。混雑している。当然ながら、ぱっと1本、注射を打って終わる。「すぐ終わります」と言われたけれど、その一瞬がとても長く感じられるほど痛い注射だった。ワクチンインストール完了。

2020年10月5日(月) 自宅

終日在宅勤務。午後に係会。いつも通りに事業の進捗共有をする。随所に感染症対策が話題にあがる。それも日常になったけれど、対策には、まだまだ慣れない。

(つづく)

コロナ禍を経験したいま、私たちの移動の経験はどう変わる? Tokyo Art Research Lab ディスカッションは11/17にオンライン開催! さっぽろ天神山アートスタジオ AIR事業ディレクターの小田井真美さん、映像エスノグラファーとして「人びとの〈移動〉の経験」を研究する大橋香奈さん(東京経済大学コミュニケーション学部専任講師)をゲストにお招きします!
noteの日記は、Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021「2020年リレー日記」のテスト版として始めたのがきっかけでした。9月の書き手は、西村佳哲さん(リビングワールド 代表)→遠藤一郎さん(未来美術家)→榎本千賀子さん(写真家/フォトアーキビスト)→山内宏泰(リアス・アーク美術館 副館長/学芸員)さん。以下のリンク先からお読みいただけます!
東京アートポイント計画の10年を凝縮した『これからの文化を「10年単位」で語るためにー東京アートポイント計画2009-2018ー』がBASEで販売中! PDF版は、こちらでお読みいただけます。