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すでに忘れていることも多い|10/6〜10/12

緊急事態宣言のなかで始めた日々の記録。火曜日から始まる1週間。仕事と生活のあわい。言えることもあれば言えないこともある。リモートワーク中心。出掛けることが増えてきた。ほぼ1か月前の出来事を振り返ります。

2020年10月6日(火) 市ヶ谷→自宅

Tokyo Art Research Lab「つどつど会」のミーティング。都度集って、それぞれの実践や悩みを交換する会のやりかたやメンバーを検討する。この数ヶ月、オンラインコンテンツとしてのラジオ企画から始まり、議論を重ねるうちに、この状況下で「どうすればいいのか」という悩みを話し、「他の人たちがどうやっているか」を知るため場づくりを、オンラインで試みることが必要なのではないかという結論に落ち着く。東京アートポイント計画の共催団体とやってきた「ジムジム会」の経験(やってよかった実感)も大きい。過去のTARLのネットワークを参照しつつ、各地の前線で働く人たちの名前を出し合う。圧倒的に女性が多い。男性が少ない(というか、ほとんど名前があがらない…)。2015年度から2年をかけた「『幸せな現場づくり』のための研究会」もメンバーは全員女性だった。これはこれで議論が必要な課題。連絡も作業も打ち返しが多い1日。

2020年10月7日(水) 市ヶ谷

終日オフィス業務。午前中は情報セキュリティ研修。2時間半の長丁場。「クレームは対応する人たちの間で共有できる定義をつくることが大事。でないと自分たちでクレーマーをつくってしまう」。講師は長らくお客様相談窓口を取り仕切ってきたキャリアの持ち主だった。休憩時間に聞こえてきた言葉になるほどなと思う。こういう本題から逸れた話題のほうが面白かったりする。午後は処理すべき案件に順々にとりかかる。終わらない。というか増えている気がしないでもない。2時間の残業で切り上げて、帰宅。それから明日の都立大学の授業の準備に勤む。フル回転。

2020年10月8日(木) 自宅→府中→自宅

眠い。寒い。雨。週末に台風14号が近づいてきている。在宅勤務から開始。1時間ちょっとで府中に向かう。ひさびさにACF(Artist Collective Fuchu)のミーティングへ。会議には生まれたての小さなメンバーがひとり増えた。年度も折り返し、今年度の終わりまでに取り組むこと、来年度の動きかたを議論する。ACFの会議では、いつも固有名詞が飛び交う。どこか空きスペースで使えるところがないか。そう問いかければ、空き家、空き店舗、商業施設の空いている場所など、次々と情報が出てくる。いつ空いたのか? いつまで空いているのか? 誰に話をしにいけばいいのか? 可能性はありそうなのか? 具体的な場所の名前や人の名前が、どんどん出てくる。メンバーの誰もが生活者であるがゆえに見えてくる解像度の高い情報(裏事情も含め)。それを使って何かをやろうとすれば話は早いのだろう。だからこそ、無闇に手数を増やすより、なんでそれをやるのかの議論に時間をかける必要があるのかもしれない。
終わってから自宅に戻り、都立大学の授業2回目をオンラインで。前回より登録者数が増えている。隔回で読んでいこうと思った『あわいゆくころー陸前高田、震災後を生きる』がAmazonで品切れになっているのだという。電子書籍でもいいかと質問を受ける。20人が買いに走ると、こうなるのか(でも、後から考えれば、9月に第7回鉄犬ヘテロトピア賞を受賞したのが理由としても大きいのだろう)。

2020年10月9日(金) 市ヶ谷→自宅

今日も雨が降っている。台風は日本列島から少し逸れて動いている。この数日、知人からの仕事に関する問合せが多い。来年度を考える時期だからか。すぐに返信しないと忘れてしまう。だいぶ立て込んできた。出社30分後に予定していたZoomのミーティングに電話1本分遅れてしまう。NPO法人アートフル・アクション宮下美穂さんとこれからの活動の構想を練る。リサーチ、記録、位置確認、流域、空域、航路、越境…。いくつかの視点を洗い出す。それから、東京アートポイント計画のアニュアルレポート(仮)のブレスト会議に参加する。この数ヶ月で何に取り組み、何を考えたか。オンライン/オフライン、変わったこと/変わらなかったこと、中間支援のありかた…。すでに忘れていることも多い。半年後は、どうなっているのだろうか。終了後は在宅に移行する。移動中の電車で昼を食べていないことに気がつく。Art Support Tohoku-Tokyo2011→2021「10年目の手記」の第3回締切分をウェブサイトにアップする。これで合計20本になった。最近はニュースを追えていない。東京都の新規感染者数は203人。昨日は248人で、2日連続の200人超え。

2020年10月10日(土) 自宅

「10年目をきくラジオ  モノノーク」第5回が配信。最初のコーナー「世界の今日」はインドネシア・ジョグジャカルタの美術家・北澤潤さんと中継をつなぐ。しゃべりは絶好調。まだまだ話は続けられそう。「10年目の手記」は東京電力福島第一原子力発電所の20キロ圏内の浪江町に住んでいた方からの手記を朗読。「自己紹介や手記の背景」に書かれた1節が印象に残る。

3月11日は多くの人によって語られ、知ることが多いですが、3月12日といわれると「何かあったっけ?」とピンとこない人が多いのではないでしょうか?
はっぱとおつきさま「2011年3月12日から、現在(いま)へ」

震災は「3月11日」だけじゃない。この手記にかぎらず「10年目の手記」に集まってきたのは、どれもが「いわゆる」震災の経験を相対化していくようなものだった。個人の体験を書く手記の特性なのかもしれない。
ホームシックデザインの清水真介さんの話では、岩手県内陸の盛岡にある震災との距離感(影響のなさ?)が語られていた。手記と同じように声も個人の経験が強く現れてくる。大きな言葉で語られる震災ではなく、小さな(でも確かな)個々人の経験がいろんな人に渡される場に、「10年目の手記」や「モノノーク」はなってきている。
寝ようと思って、何気なく開いたYahoo!ニュースに「<新型コロナ>62人感染クラスター発生…さいたまの劇団 検温、消毒、換気、マスクするも…91人で稽古」の文字。明日は広がっているのだろうか…。

2020年10月11日(日) 自宅

11日。東日本大震災から9年8ヶ月。「復興カメラ 今月の一枚」は釜石市のまちなか、大町の風景。釜石に行けば、いつも通るところだけど、前に行ったのは、いつだっただろうか? 次は、いつ行けるだろうか?

2020年10月12日(月) 自宅

宮城県丸森町に大きな被害をもたらした台風19号から1年。11人が亡くなり、1人はいまだに行方不明。169世帯346人が仮設住宅で暮らす。河川が氾濫した後の風景を何度か写真で見たことがあった。話にきいたこともあった。けれど、現地には一度行こうと思い、見送ってから、行けていない。
安定のオンライン生活。午前に原稿を1本送出。午後はZoomのミーティングをふたつ。ひとつはつながる湾プロジェクト。数ヶ月ぶりに進捗をうかがう。塩竈市は宮城県内でも感染者数が多く、人が集まるイベントはおおむね中止になっているのだという。つながる湾プロジェクトも勉強会をオンラインに切り替え、状況を見つつ展開する。それから、Tokyo Art Research Lab「東京プロジェクトスタディ」の担当スタッフでミーティング。来月開催の3つのスタディのナビゲーターや参加者が一堂に会する「合同共有会」の進め方を議論する。

(つづく)

noteの日記は、Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021「2020年リレー日記」テスト版として始めたのがきっかけでした。10月の書き手は、木村敦子さん(クリエイティブディレクター/アートディレクター/編集者)→矢部佳宏さん(西会津国際芸術村 ディレクター)→木田修作さん(テレビユー福島 報道部 記者)→北澤 潤さん(美術家)です。
コロナ禍を経験したいま、暮らしに「間」をどうつくる? Tokyo Art Research Lab ディスカッション3は11/19にオンライン開催! awai art center(長野県松本市)代表の茂原奈保子さん、ドイツ・ライプツィヒで「日本の家」を立ち上げ、都市の「隙間」から生まれる人々のうごめきについて研究・実践を行う大谷悠さんをゲストにお招きします。
東京アートポイント計画の10年を凝縮した『これからの文化を「10年単位」で語るためにー東京アートポイント計画2009-2018ー』がBASEで販売中! PDF版は、こちらでお読みいただけます。