「ロシア」「ウクライナ」に関係する内容の可能性がある記事です。
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継承は、受け手の勘違いからはじまる|5/9〜5/13

佐藤李青(東京アートポイント計画)

コロナ禍の日々の記録。平日の仕事中心。2020年の1回目の緊急事態宣言の最中に開始。3回目の宣言解除の日から再開、少し休んで「第6波」から再々開。すぐに途切れて、再々々開。もう3年目。

2022年5月9日(月) 市ヶ谷

「行動制限のないGW」が終わった。第7波は、まだ来ていない。ウクライナでの戦争のニュースが取って代わったかのように、日々の感染者数を確認することは、ほとんどなくなった。海外ではマスク着用の義務が解除されているところがあるのだという。新年度になってから、人に会うことが増えた。「戻った」という劇的な変化はないように思えるけれど、実のところ、かなり戻ってきているのではないかと思う。
その一方で、感染者が急増した中国では「ゼロコロナ」の対策を打って、3月以降に各地で厳しい外出制限を課している。SNSで、ちらほらと現地の様子を見かける。アメリカでは累計の死者数が100万人を超えた。目に入ってくるニュースの量は減った(能動的に情報を取りに行かなくなった)。
おもむろに日々の記録を再開する。2020年にはじめたときに、3年続けば何か意味があるかもと思っていたけれど、あっという間に3年目に突入してしまった。1年目は毎日書いて2年目は出勤日だけ書くことにした。時間の経過や感染者数の波によって「渦中」の感覚が薄れるたびに記録を続ける手は止まってしまった。3年目は、もっと負荷を下げて続くやりかたはあるだろうか、と考えているうちに時間がどんどん過ぎてしまいそうなので、ひとまずこれまでのスタイルで書きはじめることにする。
日曜日で2021年度事業の監査が終わって、名実ともに新年度がはじまった。連休で溜まっていたメールに返信し、次のアクションに向けた連絡を入れる。もう、来年度の予算要求もはじまる。スピードが、ぐっと上がる。

2022年5月10日(火) 市ヶ谷

昨日の雨から打って変わって、今朝は晴れ。まずは「移動する中心|GAYA」のZoomミーティングから。昨年度から継続するサンデー・インタビュアーズの先輩枠の進捗と、新規メンバー募集の段取りを確認する。

そのなかで「つい忘れがちだけど、あくまでも映像に還ってくる」のがGAYAであるとAHA!の松本篤さんが、ぽろっと話す。サンデー・インタビュアーズは「世田谷クロニクル」の映像を「みる、はなす、きく」ことで、アーカイブを「つかう」ための活動だ。その活動からアーカイブの語りを厚くしていくこと(映像に還ってくる)を目指していた。そこからメディア(世田谷クロニクルの副読本のようなもの)をつくる目論見があった。いい意味で活動が広がってきたところで、いま一度、行き先を確認し、そこから逆算した動きにしていったほうがよさそう。「制限をかけることでクリエイティビティを上げる」。松本さんの口からは、そんなことばも出てきた。
短い昼を挟んで、Tokyo Art Research Lab(TARL)のウェブリニューアルに向けたミーティングに突入する。現行のサイトでは「図書室」のページに格納している250を超える制作物をソートするカテゴリやタグを検討する。ユーザーにとっての分かりやすく、入力するときに迷いが出ないようなもので、これからつくるものにあてはまりそうなものを考える。現在、過去、未来を行き来しながら、ことばを吟味する。宿題が増える。
夕方からは係会(注:東京アートポイント計画のスタッフ定例会)。直近のトラブルと対応を共有する。次年度の見通しをエクセル表で確認する。最近読んだ「芸術不動産」の座談会について話す(「座談会: ”リレー”される芸術不動産」創造都市横浜、2022年4月22日)。横浜市や財団が民間のパートナー取り組んできた事業のスキームや、時間をかけて変化してきた様子が、具体的にわかる記事だった。アートポイントも各事業でいろんなパートナーと組んでいる。そんな座組みや事業のやりかたを見せられるといいのかもしれない。ほかの事業づくりの担い手に参考となるような情報の出しかた……ひとつ課題が明確になった。

2022年5月11日(水) 市ヶ谷→秋葉原

朝、SNSで早乙女勝元さんの訃報に触れる。昨日のGAYAのミーティングでは、これからの事業の方向性を議論するなかで、松本さんが、早乙女さんの『東京大空襲』(岩波新書)と『東京大空襲・戦災誌』(東京空襲を記録する会)を引き合いに出していた。

記録運動を立ち上げるために「まず本が必要だ」と言われて早乙女さんが書いた『東京大空襲』。東京大空襲にまつわる記録や市井の人々の声を収録した分厚い、5巻組の『東京大空襲・戦災誌』。その互いの役割を念頭に置きつつ、GAYAの実践にあてはめて話をしていた。
早乙女さんには、TARLの一環でNOOKのメンバーと話を伺ったことがあった(そういえば、その場には松本さんも同席していた)。東京で「人に話をきく」というテーマでプログラムを展開するにあたって、NOOKの瀬尾夏美さんから、ぜひ会いたい大先輩として名前が挙がったからだった。

午後はNOOKと今年度からはじめる、東京アートポイント計画の新規事業「カロクリサイクル」のミーティング。おのずと早乙女さんのことを偲ぶことから話をはじめる。
すべては偶然の連なりでしかない。それでも、早乙女さんから学んだことを自分たちが引き継ぐタイミングなのだと勝手に話を結びつけて考えてしまう。継承とは、こうした受け手の勘違いからはじまるのかもしれない。そして、世界中で同じように勘違いをしている人たちがいるのだろうと思う。
マスクを外すことが、国内ニュースでも話題になっている。

厚労省の新型コロナ専門家組織の脇田隆字座長は会合後の記者会見で、屋外でのマスクの着用について「距離をとって会話もないような場合ではマスクをする必要はない」と述べた。感染リスクがある場面では着用を促した。

「屋外マスク「会話ない時必要ない」と専門家」共同通信社

2022年5月12日(木) 西大島→市ヶ谷

朝から新規事業の拠点候補地の現地調査を行う。内見をすると予想以上に広い空間だった。やれることのイメージが広がる。活動をはじめるまでに、どこまで、何を整備すべきか。具体的に検討していくことになった。
午後は市ヶ谷のオフィスに移動し、パソコンに向かう。同時進行でいくつもの事柄が動き出している。断片的な要素を、関係者が共有可能な構想に変えていく。腹案をもちつつも、関係者とのやりとりのなかで軌道修正をしつつ、構想を落としこんでいく(事業を実現するための計画、予算や意思決定を固めていく)。ときにはそこで出てきた要素を、別の話と結びつけることで、その話が跳ねる。さまざまな立場やスキルをもつ人たちとの連鎖反応のなかで新たな社会実践を思い描くことができるのは、中間支援の醍醐味でもあるのだろう。

2022年5月13日(金) 自宅

「多摩の未来の地勢図」の来年度の想定を書き出したWordと簡単な図をスライドでつくる。TARLのサイトリニューアル用に、過去の成果物やプログラムのページのタグを検討する。在宅勤務は「作業」に向いている。
今週、フィンランドがNATO加盟を表明した。『危機と人類』を読んだときに、フィンランドが国を挙げて、ロシアという脅威と付き合ってきたことを知ったことを思い出す。その経緯があったうえでの今回の決断。何かの分水嶺となるのだろうか。
夕方、全職員向けにウクライナ情勢等を踏まえた「当面の節電のお願い」という件名のメールが届く。戦時下の影響は、日々の生活にも現れてきている。

(つづく)

▼ 2020年(2年前)は、どうだった?

(画像)初めて東京大空襲・戦災資料センターへ向かう道の途中(2018年8月23日)。

佐藤李青(東京アートポイント計画)
アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー。東京アートポイント計画、Tokyo Art Research Lab、Art Support Tohoku-Tokyo(-2020)を担当。共著に『10年目の手記 震災体験を書く、よむ、編みなおす』(生きのびるブックス、2022年)。