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自粛警察にはならない|5/5〜5/11

緊急事態宣言のなかで始めた日々の記録。火曜日から始まる1週間。ステイホームのリモートワーク。仕事と生活のあわい。言えることもあれば言えないこともある。ほぼ1か月前の出来事を振り返ります。

2020年5月5日(火・祝) 自宅

緊急事態宣言延長の首相会見で「公園や博物館、美術館、図書館への外出は、感染防止策の徹底を前提として全国的に可能とする考え」を示したことが、にわかにざわついていた。SNSでは海外事例含めて、開館した際の対応策がシェアされていた。「新しい生活様式」という言葉が現れた。
数週間ぶりに夕飯の調達に駅近くまで行ってみる。思った以上に人がいるし、店舗が開いている。飲み屋の呼び込みもあった。家でじっとしていた生活はなんだったのだろうか、と少し複雑な気持ちになる。でも、自粛警察にはならない。夜は屋根裏ハイツ「ハウアーユー?」をYouTube Liveで観る。

2020年5月6日(水・祝) 自宅

連休最終日。天気が悪い。夕方にはカミナリ。昨夜は遅くに緊急地震速報が鳴る。千葉で震度4。おとといは10時前に鳴る。どちらも揺れは、ほとんどなかった。避難所での感染対策は、何度か話題になっていたけれど、これから増えるのだろう(大雨や台風の季節もやってくる…)。
緊急事態宣言は各地で対応に変化が出てきた。「特定警戒都道府県」以外では、再開する美術館の情報がちらほらと出てきた。いつの間にか、また新しい言葉が…。政府は「容認」するのだという。「自粛」もそうだけど実施主体が自ら意思決定をしているかのような言葉づかいが気にかかる。
本屋ロカンタンから届いた『地域アートはどこにある?』を読み始める。お目当ては小説「嶋タケシ」。

2020年5月7日(木) 市ヶ谷

ほぼ1ヶ月ぶりに出社。押し合うほどではないけれど、電車にはそれなりに人がいる。なにもかも普通に見える。閉まっている店がある。出社している人は少ない。それでも変わっていないと思ってしまう。淡々と仕事をこなす。日常に戻るという感覚よりは、変わらず至極当然のように身体が動く。そして捗る。これが忘れるということなのかもしれない。
ASTT(Art Support Tohoku-Tokyo)の契約方法の相談。東日本大震災後の経験は、ほかの出来事に役に立つ。「もう、東北のことだけじゃないよね」と。ここ何年かで同じような会話をすることが増えた。その意味を考える。
目の前で何らかの厄災に直面する。当事者に「なる」のは難しい。当事者とは、そう認識する他者の存在が必要になる。そのためには自らの置かれている状況を伝える必要がある。経験したことがないことを言葉にするのは難しい。ほかの経験を知ることは、自らの経験を語り出すために必要なのではないだろうか。

2020年5月8日(金) 自宅

朝早くに目が覚める。6時前から活動を開始する。鼻水が止まらない。熱はない。
午前に仙台市市民文化事業団の「多様なメディアを活用した文化芸術創造支援事業」が公開。コロナ状況下の新型助成。オンライン、オフライン問わずメディアベースの活動が対象。期間は6月中旬〜10/31。創造・発信事業(個人上限30万円/団体上限50万円)と基盤づくり(上限100万円)の2方向。50〜70件程度(予算の範囲内採択)。助成率は10/10(収入や自己負担金の有無を問わず、人件費も計上可)。この緊急時に実現したやりかたが平時へも繋がってほしいもののひとつ。
午後にZoomを1本。remo松本(篤)さん、水野(雄太)さんと。いったん、これまでのGAYAの流れを離れて、この状況下で取り組むべきものの話をする。AHA!は「残されたもの」を使って何ができるかをやってきたが、いまはこれから数十年後に何かしらの意味をもつ記録の実践が必要なのではないか、と。こどもインタビュー(家庭内で親が子にインタビューをする)とremoscope(1分間、定点、ズームなしなど簡単なルールを使うremoが開発した映像記録手法)。ふたつの手法を組み合わせたものを試してみることになる。

2020年5月9日(土) 自宅

あっという間に一日が過ぎる。日記を書き忘れる。昨日のことが思い出せない。そんな日もある。

2020年5月10日(日) 自宅

東京大空襲・戦災資料センターから届いていた新聞記事のコピーを読む。賛助会員のお知らせと一緒に送られてきていたけれど、読めていなかった。今年の3月10日の東京大空襲関連記事のスクラップ。コロナ の影響で75年目の「節目」の式典やイベントは軒並み中止。参加者が高齢の人が多いための配慮も働いている。2018年で戦後生まれは83%。体験者が減っていく社会で、どう戦争の記憶を継承していくのか。繰り返し語られていた。
ゲンロンのウェブ直販で買った『哲学の誤配』と『新対話論』が届く。Twitter上には「#検察庁法改正法案に抗議します」が繰り返し流れていた。

2020年5月11日(月) 自宅

猛暑日。特定警戒区域以外の地域で緊急事態宣言解除が現実化してきた。14日には実施されるという。急速に日常に戻っていく感覚がある。一方で小学校の休校と保育園の登園自粛は続く。駅のほうまで歩いてみると、いくつか飲み屋が開き始めている。仕事帰りの人たちが多い。バスも混雑するほどではないけれど、すべての席が埋まっていた。
日常に戻るときに起こる分断。戻れる人たち、戻れない人たち。そもそも、日常の定義は戻れる人たちの側にあるのではないだろうか。
今日は11日。東日本大震災の月命日。河北新報のオンラインニュースに「震災知らない子増」6割苦慮 小中の伝承学習 宮教大と河北新報社調査」の見出し。震災伝承学習の課題は「震災を知らない子どもの増加」「授業時間の確保」「被災した子どもらへの配慮」の順で回答が多かったのだという。「亡くなった児童や親を亡くした遺児がおり(詳細な震災学習は)まだ早い」(岩手県の小学校)という言葉もあった。

(つづく)