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#ネタバレ 映画「博士と狂人」

「博士と狂人」
2018年作品
レッテル(烙印)という狂気もある
2020/10/28 17:30 by さくらんぼ(修正あり)

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

私の見出しも含め、

タイトルがどうも…

まるでB級映画みたいです。

しかし、これに敬遠して観ない人は損をするかもしれません。

内容は文学作品と言っても良いでしょう。

ストーリーも良ければ、

名優たちの演技対決もみどころです。

掘り出し物の感動作

老若男女におすすめです。

★★★★☆

追記 ( 映画「ビューティフル・マインド」 ) 
2020/10/28 17:53 by さくらんぼ

この作品を連想しました。

オマージュかどうかは現時点では分かりません。

追記Ⅱ ( レッテル(烙印)という狂気もある ) 
2020/10/29 9:59 by さくらんぼ

あるいは「人はレッテルを貼らずにはいられない存在である」と言いますか…。

戦争映画が戦争を描いているとは限りません。

この映画「博士と狂人」も、「オックスフォード英語大辞典」の制作秘話を借りて、「レッテル貼りの狂気」を描いていたのかもしれません。

新しい言葉がどんどん生まれ(「僕の名前は載っているの?」と、子どもが尋ねたピソードはその記号かも)、そして消え、古い言葉でも使い方が時代とともに変化していきますが、それでも人はレッテルを貼り、意味を歴史を固定したい生き物なのでしょう。

精神病患者が出て来る小説「ドグラ・マグラ」の中に、精神病院で患者が、「自分は正常だ」ということを医師に証明するために作った「異常な作品」が出てきますが、それを連想させました。

追記Ⅲ ( レッテル(烙印)という狂気もある ) 
2020/10/29 10:39 by さくらんぼ

冒頭、元軍医・マイナー(ショーン・ペンさん)が、脱走兵の若者の頬に、真っ赤な焼きごてを押しつける衝撃的なシーンがありました。おそらく、不本意でも、マイナーにとって職務上さけられない仕事だったのでしょう。

これにより脱走兵は一生「臆病者」の屈辱的な烙印を付けて生きることになります。

しかし、同時にそれはマイナーの心に罪の意識を烙印させ、贖罪出来ないことで彼は壊れていくのです。このような時、救済してくれるのは医学だけでなく宗教も有効だと思います。

マイナーは、あの脱走兵の若者が自分を殺しに来る幻覚を見るようになりました。そして、反撃しようとして、無関係の通行人を射殺してしまったのです。

マイナーは裁判を受け、精神病患者として無罪となり、精神病院に入りました。

贖罪したいマイナーは、自分の軍人年金を射殺した男の未亡人に渡そうとしました。しかし最初、未亡人は断りました。心に夫の仇としての烙印がおされていたからです。未亡人が文盲だと知ると学問を教えようともしました。そうすれば未亡人だけでなく、子どもたちにも教育が伝わると信じたからです。

やがて未亡人との間に愛が芽生え始めました。一瞬よろこんだマイナーでしたが、子どもの一人が自分を許していないことを知ると、「まるで亭主を殺して妻を奪った男」にでもなったような烙印を感じ、再び病んでいくのでした。

それらの贖罪の延長線上に辞典作りもあったのでしょう。

もしかしたら、あれはマイナーにとっては写経のようなものだったのかもしれません。お経には「この世の真理」が書かれているはずです。

辞典に「この世のすべて」を載せることで、マイナーは癒されていくのでした。逃げ隠れせず「すべて」と一体になることが、真理の体現であり、癒しと贖罪だと思ったのかもしれません。

追記Ⅳ ( レッテルを貼っても、人は変わるもの ) 
2020/10/29 14:16 by さくらんぼ

辞典づくりが「烙印」の記号だとしたら、マイナーと被害者の未亡人・イライザ(ナタリー・ドーマーさん)の半生は、「反落印」の記号だと思いました。

マイナーは、軍医 → 殺人犯 → 精神病患者(軽度) → 未亡人の教師 → のちに恋人 → 夫を殺して妻を奪った男 → 精神病患者(重度) → (軽度)→ 退院 → 帰国

イライザは、妻 → マイナーを夫の仇と思う未亡人 → マイナーの生徒 → マイナーの恋人 → マイナーと別れた未亡人

看守もマイナーの友人のようになりましたし、内務大臣だったウィンストン・チャーチルの心変わりで、マイナーは精神病院から退院してアメリカに帰国できたのです。

辞典という刻印を作り続けた人間たちは、常に変わり続けていたのでした。

追記Ⅴ ( 映画「ビューティフル・マインド」② ) 
2020/10/31 15:44 by さくらんぼ

以下ネタバレです。

① 映画「ビューティフル・マインド」には、主人公であるジョン・ナッシュと親友のチャールズが出てきますが、実はチャールズは統合失調症のナッシュが生んだ幻覚でした。

② 映画「博士と狂人」にも学者・マレーと元軍医・マイナーが出てきますが、二人が初めて会った時、お互いの風貌が(ヒゲずら)が似ていると驚くシーンがありました。こちらは幻覚ではありませんが、①と符合している可能性があります。

②で、元軍医・マイナーが、自分を殺しに来る部下の幻覚に苦しめられていたのは、すでに述べた通りです。

①で、ナッシュの夢は、「世のすべてを支配できる理論を見つけ出すこと」ですが、②での辞典づくりも「すべての言葉を網羅する」という意味で似ていると思います。

①で、同僚たちはナッシュをバカにしていましたが、②でも、学者・マレーはバカにされていました。

①で、ナッシュは答えは外にあると考えたようですが、②でも、無名の人たちからの投稿で資料を集めようとしました。

①で、ナッシュは研究で知り合ったアリシアと恋をしました。②でも、元軍医・マイナーは恋に落ちます。

①で、途中色々あって、ナッシュは精神病のつらい治療を受けましたが、②でも、つらい治療が待っていました。

①で、また色々あって、ナッシュはノーベル賞を貰うことになります。そして、その授賞式で、「愛の方程式の中にこそ、本当の解がある」と語りました。

②でも、元軍医・マイナーを病から救い出したのは学者・マレーとマイナーの恋人の「心」であり、病院の治療ではなかったように描かれていました。

以上比較すると、やはり、映画「博士と狂人」は、映画「ビューティフル・マインド」と似ていることが分かりますが、 映画「ビューティフル・マインド」の細部の記憶がありませんので、まだ「オマージュの証拠」までは見つけられませんでした。


( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)



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