ハイデガーをわかりたいとも思わない人向け
『誰にもわかるハイデガー : 文学部唯野教授・最終講義』筒井康隆 (河出文庫 )
ハイデガーが特別好きとか研究者以外はこの程度のハイデガー理解でいいと思う。同じ時間を無駄にするにしても2時間ぐらいで読めるのだし、大澤真幸の解説も付いてくる。過去に「100分de名著」でもやっていた。100分ぐらいでもいいかな。
まず筒井康隆 の『存在と時間』は難しいハイデガー用語を筒井流に翻訳してくれる。「現存在」なんて言われてもさっぱりだった人もだいたい「人間」のことだと言われれば納得する。
まずあなたのハイデガー・テストだ。ハイデガー用語がいくつわかるかでハイデガー指数がわかるというもの。
これらの言葉が8割方わかるのならハイデガー『存在と時間』に挑戦してみるのも時間つぶしだと思うが、筒井康隆はこれらの言葉をわかりやすく文学的(筒井康隆風)に翻訳(翻案)してくれる。
納得しない人はこれから先は時間の無駄だから、さっさと『存在と時間』を読め!まあ、ハイデガー用語を抜き出してみればいかに我々の生活に関係ないかがわかると思う。そうして人間は死に近づいていく。
ハイデガー『存在と時間』の未完性が、その後の研究者を大いに刺激したのだと思う。漱石未完の作品『明暗』の続きがどうなったとか、『カラマーゾフの兄弟』に妹を足してみたりと解釈をする。しかしハイデガーは「解釈するな」と謎の言葉を残していたりする。禅問答やないかと西田哲学の親近性を言う人もいる。
それに従って時間を失うのはあなたの自由、ハイデガーの奴隷になるより、筒井康隆と共に開かれた『存在と時間』を楽しみたい。それが「空談」意味のないおしゃべりなのである。そうして人間は死に近づきつつ時間を失っていくのだが、死に立ち会うと不安が生じる。そして、世界でたった一人孤独なオレと思って己の時間を取り戻そうとする。それが世界内存在=時間内存在の人間であって、時間が熟していくと神を見たりするというのだ。この神はキリスト教の神だけど。
大澤真幸の解説はハイデガーの中にあるキリスト教的な思考があると解説する。
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