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パートナーロスと脳システム

脳の活動は、とても複雑で、脳のケミカル、神経伝達物質なども、いろんなシグナル、場面で反応するし、それぞれの伝達物質がコンビネーションで放出するから、ますます複雑性を増す。さらに、作用先も多岐に渡るから悩ましい。

例えば、有名な例では、オキシトシンという神経伝達物質は、信頼ホルモンとして名を馳せたが、その実験は再現性が低いと最近は否定されたりもする。ましてや、敵が現れた際にもオキシトシンが増すことが示されたりすることから、また科学者を悩ます、否、興奮させる。

けど、何か人と人であったり、そのような関係性にオキシトシンはやっぱり大事そうなことは見えてきている。

そして、オキシトシンをオキシトシンだけの効果だけで研究するのも難しい。なぜなら、現実問題として、オキシトシンだけで反応することって、いっぱいありすぎて、一意に定まらないから。オキシトシン関連の反応を抽象化して、一般化していって、誰との関係性、、、とくらいは言えるのかもしれないけれど。

なので、オキシトシンがどこに作用して、そしてそれと共に一緒に働く神経伝達物質なども一緒に考えなくてはならない。それらの相互作用性、そこに着目する研究がいろんなところでみられる。

2022年、Bales, K. L., & Rogers, F. Dらによる論文は、「パートナーロス」に作用しうる3つの脳の化学物質、痛みの調整などと関係するκ オピッドのシステムと、ストレスに寄与する副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン、オキシトシンとの関係性を探求している。

作用先として、視床下部のPVNというところと、ドーパミンなどの作用を受けることでよく知られるNAcc、後ろ側の脳下垂体に着目している。

面白いことは、短期的なパートナーロスと、長期的なパートナーロスで上記のシステムが連動し、結果として、前者はオキシトシンの放出が抑えられ、後者はオキシトシンの放出を増加させる方向に働くことである。

以前、上記論文(2020年Juan A.Ariasらによる)で、我々の悲しみを感じている時の脳の状態をみたことがあるが、他の感情と大きく異なり、大脳新皮質をあまり活用せず、大脳辺縁系のアクティベートに偏っているのが印象的で、まるで失ったことを脳にしっかりと刻み込んでいる、学習させているような、失ったものを自分の一部として取り込んでおこうとしているような振る舞いだなぁ、真実はまだ謎ではあるが、と勝手に感嘆したのを覚えている。

悲しみも、きっと、大事な反応。悲しむ時間も一定意味がある。けれど、ずっと悲しみ浸っていても仕方ないと、脳のオピッド系や、オキシトシン系がムクムクと立ち直らせる方向に作用していると考えると、よくできているし、49日などにも何か脳的意味があるのかないのか、色々と勘ぐりたくなってしまう。。。などと、色々想像を掻き立てられる論文。悲しみについて、その仕組みと意義を探求したくなった。備忘録。

There is a sacredness in tears. They are not the mark of weakness, but of power. They speak more eloquently than ten thousand tongues. They are the messengers of overwhelming grief, of deep contrition, and of unspeakable love.

涙は、弱さでない、力。雄弁に語る口より多くを語る。深い哀しみ、深い悔恨、そして言葉にできない愛。

by Washington Irving 


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