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築40年超え

そろそろ色んなところの傷みが目立つようになってきました。
ちょっとした事でギシっと軋む感じが怖いですし、表面も傷ができたり色がくすんできたりと「ああ、これは築40年超えてますね」って感じになってきています。何より表面化していない部分が蝕まれていないか心配です。
そろそろリフォームしようかな。

あ、家の話じゃなかった。私の話だった。
軋んでんるの骨か。

人間は60兆個の細胞でできていて、日々細胞分裂を繰り返しています。古い細胞は脱ぎ捨てられ新しい細胞が日々生まれているという事は、毎日ちょっとずつリフォームしてるようなもんじゃないの?と思っていたのですが、先日読んだ著書に『細胞自体が老化するプログラムを持っている』と明記されていました。その老化にはテロメアという細胞の構造が深く関わっているそうですが、それについては勉強中です。

どうりで生まれ変わった感がないと思った。
という事はあれかな、毎日リフォームはしてるけど古い建材使って建て替えてるって事かな?怖いな、そのうち倒壊するんじゃない?

30代までは本当に病気知らずの健康体でした。風邪もほとんど引かないし、多忙な日々も難なくすり抜け、肌の調子も悪くない。仕事柄毎日大量の書類を書き、大量の書類に目を通し、パソコンを連打し続けて文字の海というドーバー海峡を渡ろうとも、一切の疲労を感じませんでした。

若い頃はよく年上の先輩から「30超えたらガタくるで〜」と言われていましたが、あまりにも健康上自覚できる変化がなかったので、待てど暮らせどガタっと来ないなぁと思っていました。

ところがです。40歳にさしかかる頃、私の健康神話は終わりを告げました。
とうとう噂の“ガタ“がきたのです。

私の中の織田裕二がキターー!と叫ぶ頃にはもう全身の凝りが酷く、鉄の肩パッドを背負う日々に突入していました。(ギャグ古め)

年に1度の胃腸炎と月に1度の口唇ヘルペスはレギュラー化し、鉄の肩パットは毎日のユニフォーム。先日はただ平地を歩いただけなのに膝が痛くなり、いよいよコンドロイチンのお世話になる時がきたかと覚悟を決めそうになったほどです。

これはいかんと、もっと自分の身体を労り、大切にしなければいけないと思い立ち、食べる物と睡眠時間に気を使いながら、週に1回は長距離を歩くという暮らしを心がけるようになりました。特に今年は極力病院のお世話になる事がないよう、いつも以上に体調管理を意識していたのです。

しかし、そこに突如襲ってきたのが生まれて初めての疱疹でした。
敵は思わぬところから攻めてきます。

あれっ、何に刺されたんやろと思ってからこれはやばいやつだと気づくまで、さほど時間はかかりませんでした。明らかに右半身の一部にだけ表れたそれは、みるみるうちに広がり、完璧にエマージェンシーを体現する見た目に仕上がっていったのです。

ひー、気持ち悪い!

親友に話をしたところ、それは絶対帯状疱疹やから1秒でも早く病院へ行きなさいと諭され、怖くなってその日の夕方に『鬼の爪』※治療でお世話になっている皮膚科へ行きました。もうその時点で服が擦れても痛い状態になっていたので、私は患部にガーゼを当てがいテーピングで止めた後、ぐるぐると包帯を巻きました。まるで、撃たれたスナイパーが表世界の病院に行けず、家に帰って自己手当してるみたいな映画のシチュエーションです。
フッ、急所は外しやがったなって。


「一応検査しておきますけどこれは帯状疱疹ですね」

先生は患部に検査用の綿棒のようなものをグリグリと押し付けながら言いました。検査結果は見事陽性反応を示し、ではこちらを見てくださいと『帯状疱疹こんな病気』というガイドブックを開いて、丁寧に説明してくださいました。

レギュラー化している口唇ヘルペスとは別物であること、男性よりも女性の方が発症しやすいこと、60代を中心に多く見られる病気であること、早期の治療が必要であること、後遺症の可能性もあること。

60代か…まだ40代なのになぜ…しかもなぜこのタイミング…。

話を聞きながらあまりの痛さに意識が遠のき、さらには情けなさや理不尽さの入り混じった感情が湧き起こって、もうぐったりと虫の息でした。それを見かねた先生は、“おーいaotenさん聞いてますかー朗報ですよー!“と言わんばかりに声のトーンを張り上げて言いました。

「aotenさん、通常は生涯に1度しか発症しませんよ!再発する事は稀なんです!」

ねぇ先生、そもそも発症しない人が大半ですよね…?発症した場合、生涯1度ってだけの話ですよね?私は騙されませんよ。

八つ当たりにも似たじっとりした感情が沸き起こってきます。
しかし一生懸命励まそうとしてくださる先生の姿を見て、私は一筋の希望を見出しました。

そうか、もうこの痛みはこれを乗り越えれば二度と経験しなくていいのか。
ならば、頑張って乗り越えようじゃないか。

「では、痛み止めと塗り薬を出しておきますね!あ、包帯巻きましょうか?」

かたじけない。

また包帯でぐるぐる巻きのスナイパースタイルになって、病院から調剤薬局へとぼとぼ歩いて行きました。もう外は真っ暗で気温も下がり、古傷、いえ、帯状疱疹の痛みが身体にこたえます。

一体どうすればよかったのだろう。あんなに気を使って暮らしていたのに、帯状疱疹なんて防ぎようがあったのだろうか。

夜道を歩きながら、若い時には考えられなかった、まさかと思うような病気になる可能性が、この先もどんどん高くなっていくのだな、と考えていました。築40年超えの身体を労りながら、時に努力ではどうしようもない病気や老いとも向き合っていかねばなりません。

あれから数ヶ月。今ではすっかり痛みもなくなって元気になったのですが、疱疹の跡がいまだに消えないままです。

元気ならいいんだけどそれでもやっぱり、中古の建材でも良い、早くこの跡をリフォームしてほしい。


※鬼の爪

#日記 , #エッセイ , #リフォーム , #細胞 , #老化 , #健康 , #帯状疱疹 , #40代







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