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今宵、酔い酔いフルーツケーキ

テーブルの隅にふと目をやると、クマが行き倒れていましたので思わず写真におさめました。


酔いつぶれた感


いつから使っているかわからないクマのキーホルダーはうす汚れ、哀愁を漂わせています。

引っ越ししてからはマンションがカードキーになり、更にはこの1年で会社もフリーアドレス化されて個人デスクがなくなったので、もはや従来型の鍵といえばマンションのゴミ庫ぐらいしかキーホルダーにホールドするものがないはずなのですが、なぜかどこぞのものかわからない鍵が2つほどぶら下がっており、クマがしっかりと管理してくれています。

その2つはどこの扉が開く鍵なの?
もしかして、幸せの扉を開く鍵?

だとしても扉が見当たらないね。


そのあと、頼まれた仕事がありましたので、iPadを立ち上げて作業を始めました。

ヘッドスライディング
またはペットスライディング


ちょ、まてよ。
ってキムタクもゆーてる。


iPadのペンに異常な興奮を覚える我が家の年老いた猫(御歳14歳)に妨害され一向に仕事が進みませんでしたので、依頼主に対し状況証拠写真とともに「一生データ納品出来ないかもしれません」とメッセージを送ったところ「ゆーるーすー」と返信がありました。

寛大な方で助かりました。


よごれたクマが行き倒れ、年老いた猫が暴動を起こす。 

ダイニングテーブルで巻き起こるミクロな事件に妙な幸せを感じながら、少し息抜きがしたいなとキッチンに向かい、冷蔵庫を開けたところで目に飛び込んできたのがドライフルーツのラム酒漬けでした。 
 
昨年のMyお菓子作り選手権ワースト1位を獲得したクリスマスのシュトレン用に購入したもので、その後使う機会がなく冷蔵庫に眠らせてしまっていたのです。 

▽見事ワースト!「シュトーレン物語」


 
腐っ… 
 

恐る恐る賞味期限を確認すると、2022年7月末との事。 
さすがラム酒漬けというだけあって持ちが長い、ならば私もラム酒に漬かってみたい。
 
 
ドライフルーツのラム酒漬けといえばフルーツケーキ。
それをすぐに連想してしまうのは、中学生の頃お菓子作りが得意だった姉に教えてもらったケーキの1つだからです。 

リッチな見た目、鼻から脳へとダイレクトに響くお酒の香り、深い味わい、時折感じるフルーツの歯ごたえ。

全てが大人の世界へと導く五感を刺激する要素で形成されていて、まだ中学生だった私にとっては“背徳のお菓子”でありました。 

 
スマホの時計を見ると、21時。 

大人が、大人の時間に、大人のお菓子を作って何が悪い。

今宵、フルーツケーキに酔いしれよう。
下戸やけど。



バターを常温で柔らかくしクリーム状にした後で、グラニュー糖、卵液、アーモンドプードルを手順通りに混ぜ合わせていきます。

この時点でもう立派に美味しい


今回はドライフルーツのラム酒漬け以外に、ストックしてあったいちじくも刻んで混ぜ込みます。

この見た目でも美味しいという事を
知っているのが大人の証


ドライフルーツと薄力粉を先ほどのクリーム状のタネに混ぜ合わせたら、刻んだいちじくと交互にしながら、型に詰めていきます。
この時点で分量に対して型が少々大きい事に気がつきましたが、何とかなるだろうと突き進みました。

シュトレンを連想させるビジュアルに
嫌な予感がするトラウマを抱えています


170℃で40分。

オーブンレンジから、ラム酒の芳醇な香りがより一層際立ってきたタイミングで焼き上がりの合図がなりました。

すぐに型から外して網(という名の粉ふるい)に乗せ、ハケを使ってマイヤーズのダークラム酒を全体に、贅沢に、塗りまくります。

いいかげん網を買います


あつあつのケーキから放出される熱によってラム酒が蒸発し、アルコールの香りが一気に広がって行くのがわかります。


だめだわ、明日絶対二日酔い。
仕事休も。


レシピによると、とにかくパウンドケーキは保湿が大切だそうです。
少し粗熱をとった後、ラップでピッタリとケーキを包んで水分を逃さないようにし、常温で一晩寝かせるのですが、私も全身ラップして保湿しながら寝ようか迷うところです。

息は苦しくないかい




23時に出来上がったフルーツケーキは、キッチンの片隅に置かれて朝を待つ事になりました。

翌朝パッと目が覚めてまずはケーキがどうなっているのかが気になり、ベッドからキッチンへと直行しました。

見ると昨日より深く暗い色に落ち着いたような感じがします。
恐る恐るラップを剥がしていくと、ラム酒とフルーツの甘くて魅力的な香りがふんわりとただよってきました。


何という美しさ


そこには美しく気高いお菓子が鎮座していました。
それはまるで中世ヨーロッパの絵画のよう。
どこがって?わかりません。

華やかにデコレーションされたお菓子も素敵ですが、シンプルなのに特別な存在感を放っているお菓子の方が好みかもしれません。

早速2切れカットして、アールグレイティを淹れました。

切り口も美しい



一口目にラム酒の香りがして、噛めば噛むほどいちじくとドライフルーツの味がジョインしてくる口内オーケストラ。本当に、お見事としか言いようのない美味しさです。

ラム酒の香りが強く、アルコールはほとんど飛んでいるはずなのに下戸の私にとっては香りだけで酔いそうです。

何ともふわふわとした、心地よい幸福感に包まれながら1日を終えようと思いましたが、まだ朝の8時30でした。


#日記    , #エッセイ , #スイーツ , #お菓子づくり , #フルーツケーキ , #ドライフルーツ , #ラム酒漬け , #手作り

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