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エレガント増し菓子

「もし2分45秒で食べたいなら、この私を倒してからいけ…!」


睨み合う


2分44秒で倒したった。

いつもお世話になっております日清『カップヌードルPRO 高たんぱく&低糖質』様。

そうめんすら湯がきたくない、カップ麺で済ませたいけど糖質を取り過ぎたくない、そんな時のレギュラーフード。

3分待つと、ちょっと柔らかすぎんねんなー。

ズルズルズル。

麺をすすり、時にハイプロテイン謎肉をちみちみと噛みながら、Kindleで一目惚れジャケ買いした『いちじくのお菓子づくり』というレシピ本をうっとりと眺めていました。


ひ と め ぼ れ


今井ようこ氏と藤沢かえで氏の共著であるこの本は、タイトルの通りいちじくを使ったお菓子のレシピしか掲載されていません。

焼き菓子とか、パイとか、パウンドケーキとか、そういう汎用性のあるものではなく、いちじく専用レシピなのです。

イチゴやリンゴならまだしも、いちじく。


これまでの人生でいちじくを買った事があるの?
この先の人生でいちじくを買う事が何度あるの?

私はいちじくの何を知っているというの?

愚問です。
そうやって何も知らずとも、人は恋に落ちていくんでしょう?

ズルズルズル。うんめぇ。

全てのお菓子を芸術的な造形美にまで仕上げたこの本は、私の中で長い間謎めいたフルーツとして存在していたいちじくに触れ、知り、味わってみる世界への扉となりました。

ガチャ。

まるで写真集かのごとく目を細めながら全てのレシピを眺めた後、いくつか絞った候補の中から『いちじくのタルト』を作る事に決めました。

『いちじくと金木犀のゼリー』とかね、美術品のような美しいお菓子が載ってありますけど、絶対私レベルがまだ手を出したらあかん代物ですよ。

金木犀って食べれんの?ってそこからですから。

タルトの材料はいちじく以外ほとんど家にあるもので賄えそうでしたが、必要なツールの中の<タルトリング18センチ>がありません。
いつものごとく何か別のもので代替えできないかと考えてみましたが、代替えのプロフェッショナルと名高い私でもさすがにハードルが高く、『ロード・オブ・ザ・タルトリング』へと旅立つ事にしました。


何の魔法も使わず一瞬で手に入りました。
何の冒険もなかった。

思った以上に、頭の上に乗せてみたい衝動に駆られている
大人なので我慢する



いちじくは5個入ったものを買いました。お店の方に傷がつきやすいので気をつけて持って下さいねとアドバイスをいただき、大切に大切に、まるで腫れ物に触るように、家まで持ち帰りました。

ちょっと表現間違えたかな。

描きたくなるような色彩と造形


手に取ってみると、桃以上の繊細さを持ち合わせた果物だという事が直感的にわかりました。

表面がほんの少しだけザラついていて、とても柔らかく、まるで何か産まれたての生き物に触れているようです。
そうですね、例えるなら極めて短い産毛に覆われている猫のスフィンクスとか、ハダカデバネズミとか、そっち系のような気がします。※個人の感想です

まずは、100°のオーブンで薄切りしたいちじくを40分焼き、セミドライいちじくを作ります。生のままですと水分が出過ぎるので事前にセミドライにしておくそうです。

ドライではなくセミドライ。

クリーニングの新設コースか何か?

それとも私の性格の事かしら。サバサバとネチネチの間のネチネチ寄り。

やっぱり仕上がりネチネチしてた


タルト生地は何度も作っているのでお手のもの、と言いたいところですが結構な頻度で失敗していますので、いつも緊張してしまいます。
バターと粉類をうまく攪拌してまとめるべく仕事では絶対に出せない集中力を発揮して生地を作り、冷蔵庫で冷やした後また同じ集中力で…

言わせてください。

『ロード・オブ・ザ・タルトリング』に生地を敷き詰めていきます。
商品名にしちゃった。

そしてまずは、180°のオーブンで20分焼きます。

いわば輝くジュエリーが乗る前の石座


粗熱を取ったらいちじくのジャムを塗り、その上に事前に作っておいたアーモンドクリームを絞ってヘラで均等にし、セミドライいちじくを盛り付けていきます。

最後にグラニュー糖をふりかけたら準備完了です。

セミドライジュエリー盛り

また180°に余熱したオーブンに入れ、今度は30〜40分じっくりと焼き上げます。

オーブンからはそれはそれは上品な香りが漂ってきて、一体どんな焼き上がりなのか楽しみでなりません。

チーンという合図が鳴り、私の胸の高鳴りが最高潮に達しました。



言葉など必要でしょうか


エレガント。
絶対的エレガント。

赤みがかった光沢のあるブラウンに焼きあがったタルトは、大人びた香りを放ちながら凛とした姿で、そこに存在していました。

焼き上がり前よりも更に、エレガントさを増したお菓子に仕上がっています。

言わせてください。

『エレガント増し菓子』エレ…カシ。

静寂を感じる。

できればお気に入りの近藤文さんの高床式器(勝手に命名)にそのまま乗せたかったのですが、タルトの直径が大きすぎましたのでカットして乗せてみました。

チャービル控えめに乗せてみた




私はお気に入りの紅茶を入れ、ティータイムを始めました。

フォークを入れるとサクッという手応えがして、タルト生地がうまく焼けていることがわかります。そして一口ほおばってみました。

食レポが下手すぎるのでこの美味しさを伝える自信はありませんが、頑張ってみます。

地球最後の1食はこれか卵かけごはんの2択。


最善は尽くしました。


いちじくとはミステリアスな雰囲気を纏った、とてもエレガントなフルーツでありました。




間違って1つ椎茸を入れた疑惑


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