青島ろば

❄️小説を書いています。コンパクトな作品をアップしてゆきます。詩のような小説、小説のよう…

青島ろば

❄️小説を書いています。コンパクトな作品をアップしてゆきます。詩のような小説、小説のような詩。小説詩と名付け「小説詩集」としてまとめていきます。それは純文気分なんです。時空を超えた出会いがありますように。

マガジン

  • 短篇「パパの恋人と赤い屋根の家」

    「姉さんはいったい何で出来ている?」「姉さんはね、恥と恐れと怠惰からできているの」という姉弟の、タイトルのパパとその恋人はいったいどうしたんだ!っと言いたくなるような姉と弟のこころ模様、あるいはあり方の物語。

  • 短編小説「あの人にあいたいの〜入れ替わり」1.2.3

    あの世とこの世の境目で、選択肢があったとして誰にあいたいでしょか?結果的に私は意外な方法でその人に会い、再び意外な人とあうのです。そんな物語です、よかったらぜひ読んでくださいね。🍎

  • 短篇「君を見つけてしまった」1~8-2

    どこか一人で生きてますって感じの女の子との冬の出会い。サンタさんのソリと追いかけっこするようにクリスマスイブに向かってゆきます。

  • 小説詩集1「ハチの巣」~

    文章ずき~ということで詩のような小説、小説のような詩を「小説詩集」としてまとめていきます。時をこえて出会う淡い夢を風船に込めるように飛ばしつづけます。

記事一覧

小説詩集「ヨーイ、ドンと測定値」

私ねヨーイドンで走り始めたの、あの日。 地べたに座り込んだまま、傍にいる係員さんに話しかけた。 スターターの、 「よーい、どん」 がひどく緊迫してたから、私は思…

青島ろば
7日前
11

小説詩集「カンダンで、」

パパラッチが仕事でそっちへいくから、とか言って、招集かけてきたので弟と集合した。 「そうくさるなよ」 とかパパラッチは、あ、もちろんパパのこと、弟に助言する。 …

青島ろば
3週間前
11

小説詩集「消えちゃうまち」

川の浅瀬のとび石をポンポンと進んだ。 「だって今朝、校庭が見える歩道でね、」 一歩も進めない子供を見たんだよ、って彼に言い訳するみたいに言った。 「一歩もか?」…

青島ろば
1か月前
10

小説詩集「風ファイル1」

中庭に咲く花を見てたら、風がふいてきたから手を振った。 「なに見てた?」 「花だよ、」 美味しそうだったから、て言って笑った。 こんなふうに春、な気持ちになって…

青島ろば
1か月前
11

小説詩集「星屑とスタンプ」

星屑がね、落ちてくるっていう予報をきいて、昨日さがしにいったの。 「なによそれ、」 星屑だよ、彗星が降らす宇宙の希望みたいなかけら。 私は息を切らしながら彼女に…

青島ろば
2か月前
16

小説詩集「かみさま辞令」

「エイプリルフールなのか、」 とか思って日付を確かめたわよ。 彼にそういったけれど、職場では口にしなかった。 「新しい部署にさ、配属されてたじゃない、わたし、」…

青島ろば
3か月前
13

小説詩集「ほうふく」

海岸を見下ろすベンチから立ち上がって、砂浜へおりた。 波をずっとみてる人がいたから、となりに並んですわって、どうも、とか言ってみる。 「あなた、どこかでみたよう…

青島ろば
3か月前
13

小説詩集「春の君占い」

髪を切ったとたん私は駆け出していた。 美容師さんは、オイルを揉み込もうとしていたけれど、私はもう立ち上がっていた。ケープをひらひらさせて、さらに風に飛ばされるの…

青島ろば
3か月前
9

小説詩集「ひまわりと風車」

「私たちってずっと前は姉妹だった、よね」 でも今はこうして壁に並んで飾られてる。 「どうしてこんなことになったと思う?」 私は「ひまわり」の絵になって青い背景に…

青島ろば
4か月前
8

小説詩集「等価交換とさびしい小鳥」

彼の部屋の窓から雪が見えて驚いた。 「何が?」 「あれだよ」 あれは、雪じゃなく春のはなだよ、て言われてさらに驚いた。それで、凝視したら、今度はポップコーンにし…

青島ろば
4か月前
10

小説詩集「失われた時間」

「授業中にね、」 当てられて、起立して、答えを探してた。 なのに気づいたら教室の床に寝かされてて担任が叫んでた。 みんなの机が丸く避難してて、あれ、私やっちゃっ…

青島ろば
4か月前
14

小説詩集「時間の波のなかで、」

時間がなくって溺れてた。仕事が苦手なのに次から次へと仕事が舞い込んで、巻き込まれて、誰かみたいに靴を履き替えて走ってた。それは副業だったのにそこに閉じ込められて…

青島ろば
5か月前
15

小説詩集「文房具かいぎ」

ボコボコと至るところに落とし穴があって、はまってた。 良心にしたがったり、同情したり、だれかの決定にあきれたりしてヨロヨロ歩くものだから、どんどんはまってた。 …

青島ろば
5か月前
13

小説詩集「まちぶせ」

何度も振り向いたの。 「何度も?」 うん、今も予感がする。 「予感?」 先回りしてるんだって、分かってる。 「一体なんのことさ、」 計算すると必ず間違いがある。…

青島ろば
6か月前
12

小説詩集「クリスマスキャロル」

僕がこのふゆ一番心配だったのは妹のことだった。 「何をやってもちっとも自分に合わないの、」 って、小鳥みたいにつぶやいて思い詰めてたから。 「でも、どこも塗りつ…

青島ろば
6か月前
20

小説詩集「僕と君のかくれんぼ」

僕が君を見つけたのは、カフェの自動ドアの前だった。 困ったみたいに佇んで、 「センサーがさ、反応してくれないの」 とか言うので、僕は前に進み出て開けてあげたのた…

青島ろば
7か月前
16

小説詩集「ヨーイ、ドンと測定値」

私ねヨーイドンで走り始めたの、あの日。 地べたに座り込んだまま、傍にいる係員さんに話しかけた。 スターターの、 「よーい、どん」 がひどく緊迫してたから、私は思わず前のめりになってしまってた。 2、3メートルのところで躓いて、顎でスライディングしたのは見てたでしょ。 「うん、見てた」 彼は単なる係員さんなのに残念そうに頷いてくれた。 「見上げた先にあの子の、ゴールするのが見えたけど、」 そこには引き算が生まれてたわけで、あの子はその距離の差を測るみたいに眺め

小説詩集「カンダンで、」

パパラッチが仕事でそっちへいくから、とか言って、招集かけてきたので弟と集合した。 「そうくさるなよ」 とかパパラッチは、あ、もちろんパパのこと、弟に助言する。 「神様は見てるから」 とかなんとか。んで、当然だけど間髪入れず、 「見てないよ、あの人は」 とか、人と言ってる時点で間違っているのだけれど、ビールも進んでいるので弟は鼻で笑う。 「いや、でもね、みてるわよ、案外」 って言うか、分かりづらいのよあの人のやってることは、って私もビールのせいで人と呼ぶ。 「

小説詩集「消えちゃうまち」

川の浅瀬のとび石をポンポンと進んだ。 「だって今朝、校庭が見える歩道でね、」 一歩も進めない子供を見たんだよ、って彼に言い訳するみたいに言った。 「一歩もか?」 「うん、一歩も」 そこから先は何があっても進めん感じだった。 「何があっても?」 「そ、けどね、」 「けど?」 「それ以外のところへはどこへでも行ける感じだった」 「なるほど」 「で、その子は踵を返してさ、見守るママに、」 「見守るママに」 「どーん、」 って突進したの。そしたら吸着するみ

小説詩集「風ファイル1」

中庭に咲く花を見てたら、風がふいてきたから手を振った。 「なに見てた?」 「花だよ、」 美味しそうだったから、て言って笑った。 こんなふうに春、な気持ちになっているのはまばゆい光のせいかなあ。 「冬がずっと、君を蛹に留めていたからね」 風が端的に言い表してくれたから心が軽くなった。 「芋虫だった頃が懐かしい?」 風が聞く。 「ちっとも、」 なんなら、自分が大和しじみなのも知らなくって行ったり来たりしてたのが馬鹿げてた。 「あなたはアゲハよ、」 とかママ

小説詩集「星屑とスタンプ」

星屑がね、落ちてくるっていう予報をきいて、昨日さがしにいったの。 「なによそれ、」 星屑だよ、彗星が降らす宇宙の希望みたいなかけら。 私は息を切らしながら彼女に伝える。 だって彼女は自転車通学なわけだから、もちろん自転車をこぐ。私は並走してはしるから声が上下する。 「砂浜にね、夕暮れ時に行って待ってたの」 ママの帰りが遅いのはわかってたし、お兄ちゃんは塾だったから、たった1人で浜にでた。 「怖くない?夕暮れどきなんて」 「こわかった、」 だってあたりはすぐに

小説詩集「かみさま辞令」

「エイプリルフールなのか、」 とか思って日付を確かめたわよ。 彼にそういったけれど、職場では口にしなかった。 「新しい部署にさ、配属されてたじゃない、わたし、」 けどさ、フロアーにいたのは私と先輩だけだったってわけ。 フロアの中に先輩と私だけが居て、メールやら電話にかけずり回ってたから、そこはとてつもなく広い空間に思えた。 今日はみんな出社しないのかなあ、とか思っていたら、 「上司たちは海外旅行の飛行機の中よ、」 て、先輩がさっして答えてくれた。 「そうです

小説詩集「ほうふく」

海岸を見下ろすベンチから立ち上がって、砂浜へおりた。 波をずっとみてる人がいたから、となりに並んですわって、どうも、とか言ってみる。 「あなた、どこかでみたような、」 ってわざとらしいこと言うと、 「僕は、フランケンシュタインだよ」 とか彼がいうので、驚いた。たしかに、表情はツルルンとしているけれど、光の加減でその継ぎはぎが透けて見えなくもなかった。 「波を見てるの?」 「波と話してた」 彼が率直に言うものだから、私は面食らった。 「あのね、今日はこの陽気だ

小説詩集「春の君占い」

髪を切ったとたん私は駆け出していた。 美容師さんは、オイルを揉み込もうとしていたけれど、私はもう立ち上がっていた。ケープをひらひらさせて、さらに風に飛ばされるのも見送って私は走ってた。 電車を降りたらスーパーに駆け込んで、ゴミ袋を大量購入した。 「部屋がちらかっていたんです」 これもいらん、あれもいらんてあえて分類しないでつめこんだ。 「時間の中でうずくまっていたんです」 じっと、もやもやの処理する時間をみおくって塞ぎ込んでいた。 「だけど、気がついたら時間が、

小説詩集「ひまわりと風車」

「私たちってずっと前は姉妹だった、よね」 でも今はこうして壁に並んで飾られてる。 「どうしてこんなことになったと思う?」 私は「ひまわり」の絵になって青い背景に横たわる姉に聞いてみた。 「あなたの場合はね、くよくよばかりしてたから、」 くよくよして毎日泣いたり、恨んでばかりいたでしょ、で、泣き疲れたみたいな「風車」の絵になってしまったのよ。 姉はさらっりと言った。 「お姉ちゃんはいいよね、」 そのそっけなさが魅力だもの。私たち、生まれた時は双子みたいに似てたの

小説詩集「等価交換とさびしい小鳥」

彼の部屋の窓から雪が見えて驚いた。 「何が?」 「あれだよ」 あれは、雪じゃなく春のはなだよ、て言われてさらに驚いた。それで、凝視したら、今度はポップコーンにしか見えなかった。 「もう卒業するからさ、」 って話を切り替えたのは、さよなら、の後につづく言葉がいつだって途切れて飲み込まれてしまうから。 「さよなら、って言って次は?」 「ありがとう、かな」 「何に?」 いろいろひっくるめてさ、て言う彼の答えが私を悲しませた。 「あの時の笑顔が私を支えてくれたから

小説詩集「失われた時間」

「授業中にね、」 当てられて、起立して、答えを探してた。 なのに気づいたら教室の床に寝かされてて担任が叫んでた。 みんなの机が丸く避難してて、あれ、私やっちゃったんだ、て思ったの。 「つまり?」 「つまり、」 気を失って倒れてた。 「知ってるよ、救急車がやってきてあんたが倒れたんだって、高速噂が広まったから」 「でしょ、」 だからバスがきても、今朝は乗りたくないのよ。 「貧血でしょう、」 て、救急病棟では結論付けたのよ。 「でも、答え分からんから倒れた

小説詩集「時間の波のなかで、」

時間がなくって溺れてた。仕事が苦手なのに次から次へと仕事が舞い込んで、巻き込まれて、誰かみたいに靴を履き替えて走ってた。それは副業だったのにそこに閉じ込められて、心だけが、音楽を望んでた。いつも楽譜に起こすことを願いながら、その日は終わってた。 「だから、」 「だから?」 「時間の波が寄せてくるのを望んでた、」 時間がね、あふれてるのよ。 「いいね」 「いいでしょ」 「でも、それってどうゆうこと?」 砂時計だよ。私の生活は砂時計なんだよ。だから、押し寄せる色々

小説詩集「文房具かいぎ」

ボコボコと至るところに落とし穴があって、はまってた。 良心にしたがったり、同情したり、だれかの決定にあきれたりしてヨロヨロ歩くものだから、どんどんはまってた。 で、よし、穴から這いでるぞ、みたいにもがいていると、だれかれ寄ってきて、いろんな話をし始めるから私はコロコロ穴の中で転がされて、気づいたら丸くて美味しいタコ焼きになってた。 「お疲れ様、」 口々に言って、そそくさと帰る引き潮に、あ、んな時間かって宇宙に飛びちる鉱石みたいに私も飛び出した。 ポンポンポンって数字

小説詩集「まちぶせ」

何度も振り向いたの。 「何度も?」 うん、今も予感がする。 「予感?」 先回りしてるんだって、分かってる。 「一体なんのことさ、」 計算すると必ず間違いがある。報告したらミスも見つかる。出かけたら忘れ物をして、休日にはダラダラするの。 「つまり、」 まちぶせ。 持ってるものは必ずどこかに消えて探しても見つからないの、なんら壊れるし。 「つまり、それは、」 まちぶせ。 「考えすぎじゃないか?必ずなんてありえないよ」 じゃあ、このカフェを出て角を曲がって

小説詩集「クリスマスキャロル」

僕がこのふゆ一番心配だったのは妹のことだった。 「何をやってもちっとも自分に合わないの、」 って、小鳥みたいにつぶやいて思い詰めてたから。 「でも、どこも塗りつぶしてないじゃないか、」 みたいに妹に言って、その手放そうとする白地図みたいな夢の束を僕は眺めた。 「ぼくはさ、」 僕は確かに、のぞんだ道をすすんできたけれど、それだって努力は必要なんだよ、とか言いかけて言葉を飲み込んだ。何をしたって実らんものは実らんかも、てき疑惑が僕を襲ったから。 だから、妹が、 「

小説詩集「僕と君のかくれんぼ」

僕が君を見つけたのは、カフェの自動ドアの前だった。 困ったみたいに佇んで、 「センサーがさ、反応してくれないの」 とか言うので、僕は前に進み出て開けてあげたのたのだった。 「あ、あいた」 って君はよろこんで、僕のあとにつづいた。 これで、塾に遅刻するのは決定的になった。 ラテを注文して、振り返ったら君が席で手をふった。 「やっと飲み物にありつける」 とか君はよろこんだけれど、次の瞬間には、電池切れみたいに塞ぎ込んだ。 「中学のころのね、担任のところへ訪ねて