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小説詩集「カンダンで、」

パパラッチが仕事でそっちへいくから、とか言って、招集かけてきたので弟と集合した。

「そうくさる・・・なよ」

とかパパラッチは、あ、もちろんパパのこと、弟に助言する。

「神様は見てるから」

とかなんとか。んで、当然だけど間髪入れず、

「見てないよ、あの人は」

とか、人と言ってる時点で間違っているのだけれど、ビールも進んでいるので弟は鼻で笑う。

「いや、でもね、みてるわよ、案外」

って言うか、分かりづらいのよあの人のやってることは、って私もビールのせいで人と呼ぶ。

「だってさ、」

だって、神様は分子レベルに複雑なルービックキューブをガチャガチャやってるわけで、その遠回り感といったら半端じゃないんだよ。私は自足的に頷く。

たとえばさ、とか言いつつ頭の中ではぐるぐると、彼のことが蘇っていて、私はひとっ飛びにそこにたどり着いていた。

ほこり・・・と、ほこり・・・の共通点は、」

とか彼はつぶやくような人だ。

「共通点は?」

「世界と僕らの間にあるってことさ、」

持つ方のほこり・・・は最低でさ、あちらとこちらをくっつけて僕らを行き来させるから厄介なんだ。

「じゃあ積もるほこり・・・は?」

「積もる方はね、」

僕らを僕らの世界に閉じ込めてくれるんだ。

「なので、」

「なので?」

なので、僕はほこり・・・の墓場的思索に耽りながら電車通勤をするんだよ。

降り積もる雪の中に眠る川のせせらぎみたいに、私は澄んだこころで彼をながめた。幸せだな、みたいに彼をみつめた。

彼と出会ったのは、懇談的飲み会があった日で、意味もないのは分かっていたけれど、その人並みをぐいぐい泳いだ。運良く事務次官的人のその下のまたその下の、段階経た上人にたどり着いた。歓談してしてたら次々と人が集まってきて、瞬く間に私は孤立した。すかさずやって来ていた早口コーワーカーがワイングラスをソムリエみたいに揺らしたものだから、私の白いジャケットがマダラに染まった。

「白なんか着てくるかからよ」

みたいにティッシュをもらって、私はおずおずと後退り、パウダールームに行くとみせかけて会場を抜けだし駆け出していた。

週末のタクシーは捕まらなくって、赤くまだらなジャケットが恥ずかしかったけれど地下鉄の階段をタンタン降りてって、電車に飛び乗った。

弱冷房車両がムッとしてたものだから前に立ってる人が、う、となる。

「あ、すみません、僕の鼻血があなたの、」

とか言いかけたけど、それは私のジャケットが派手に赤く染まっていたせいで、

「いや、これは実は、」

とか言いかけて、とにかく座ったらいかがですか的アドバイスをして、例のティッシュを差し出したのだった。

「んなわけで、神様が緻密な計画を練っている事は疑いようの無い事実なのよ」

て断言した。

「でもオレ、姉ちゃんみたいな彼女だけはやだな」
とか弟は言うわけで、僕なら君を彼女にするよ、みたいな神様の声も聞こえて来て、私の視界は薄れつつパパラッチと弟の会話を俯瞰した。それは神の視点に似ていなくもなかったけれど、やっぱり酔いの限界値みたいなものだったかもしれない。

おわり

❄️歓談ではたどたどしいのに、ファミリーになると雄弁になると言う内弁慶的妄想が生む、神様賛辞なお話になりました。
お酒が入ると失態をさらす学生のり的メリーゴーランドが回り続けます、みたいな酒宴の世界です。だからこそほこり・・・の下で眠る思索が無垢な輝きを放つのでしょうか。また書きます。ろば

あ、ところで眠いねむい〜💤とかいいながら、なんとかKindle出版してみました〜



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