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(短編童話)100万円する猫


(あらすじ)

お金持ちに100万円で買われたペルシャ猫『サファイア』は、公園で野良猫と出会う。サファイアの運命や如何に?『100万回生きたねこ』のパロディではありません、悪しからず。(文字数7,674文字)

(一)ペットショップ

「値段は幾ら高くても構わん。品があってぼんぼん仔猫を産んで、その仔猫も高く売れるやつ。そんな猫、いないか?」
 成金権三郎は、ペットショップの店員にそう注文した。
「ではお客様、こちらのペルシャ猫など、如何でしょう?」
 それは全身純白の毛に覆われた、メスのペルシャ猫。ペルシャ湾の海を思わせる、透き通ったサファイアの青い瞳が眩しい。
「成る程、ツンツン尻尾を立てて、如何にもゴージャス。高級感が漂っとるな。よし、こいつに決めた。幾らだ?」
「100万円で、御座います」
「たかあーっ。でも、元は直ぐに取れるな。よし、買った!」
 こうして、そのペルシャ猫は、成金家のペットになったのである。

 世話は一人娘、女子大生の沙也加に押し付けられた。不満タラタラ、仕方なく引き受けたものの、沙也加は猫好きな訳でもなく、今は親には内緒の彼氏とスマホに夢中。彼女は猫を『サファイア』と名付けた。そのまんまじゃん……。
「100万円もしたんだからな。散歩する時は、逃げないようにしっかりと首輪、すんだぞ」
「ええっ、猫に?」
「当たり前だろ。100万もしたんだぞ、100万」
「はいはい。分かったわよ、パパ」
 このように大金持ちでありながら、権三郎は根っからのケチ。お金にしか興味のない男なのである。だからこそ、近所も羨む大豪邸に住んでいるのだが……。

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