こどう

ひとかけらの雪が
自分の手のひらの上で
とけてゆくのを
さびしそうに見ていた
ひとりの女の子

一羽の小鳥が
自分の両方の手の上で
しずかに
目を閉じてゆくのを
黙ってみていた
ひとりの少年

それから
女の子の恋と
少年の夢が
こわれてゆくのを
じっと見ていた
銀河の中のひとつの星

そしてやがて
その星も燃え尽き
宇宙の
ちりになるのを見ていた
ひとつの銀河

そしてその銀河系も
やがて終わり
自らのやみに
消えてゆくのを
しずかに見ていた
ひとつの宇宙

そしてその宇宙さえ
やがていつか
終わるだろう

だから今は
ひとかけらの雪を
抱きしめるように
一羽の小鳥に
ほほ寄せるように

ぼくはきみを
抱きしめているよ

今はきみを
抱きしめているだけ

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