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(詩)南荒尾駅で会いましょう

不思議な海が
目の前に広がる
その駅で、会いましょう
その時は、夏がいい

日中はほとんど
人が訪れることもない
その駅は

都会の雑踏の中で
人生のほとんど
全部を費やし
疲れ果てたぼくたちに
やさしい記憶を
くれることでしょう

干潟と呼ばれる
もしかしたら
海の中をどこまでも
どこまでも
丸で十戒のモーゼのように
海の果てまでも
歩いてゆけそうな

そんな海辺で
ひとりぼっちいつまでも
あなたを
待っていたかった

あなただけを
待っていたかった
少年から
老人になるまでの間


実際にやって来たのは

通り掛かりの
愛想の良い
おかっぱ頭の少女と
近所の
お喋りなおばあさんと
気の荒い
野良犬だけだったけれど

ぼくは
野良犬に追いかけられ
干潟の海を逃げ回った


この駅で
運命の人を
待っていたかった

この駅には
運命の人と
訪ねたかった

あなたとの記憶が
単なる記憶を超え
ぼくたちの鼓動にすら
なってしまいそうな
そんな
駅の静けさだから

夏の日射しが
やがて夕映えに変わる時
あなたの鼓動が
潮騒になってくれそうな
そんな海だから

あなたとは
南荒尾駅で出会いましょう
あなたと
南荒尾駅で、会いたかった


※地元ではなく、旅行者としてもう何十年も前に訪ねた、干潟の海です。こんな海があるのか!とカルチャーショックを受けた次第です、はい(^^)/

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