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そしてセックスレスの男は幸せになったのか

ウォーカープラスで月一回連載中の「メンエス嬢加恋・職業は恋愛です」
先月(6月18日)公開の「セックスレスの男」についての追記です。

セックスレスの話を描いてみたかった

インタビュー記事の中でも答えているのですが、
「セックスレス」をテーマにしたマンガを描いてみたかった…

と、いうか数年前(4年ほど前)にも描いたことあるんですけどね。

その時描いたお話の内容はというと、
女性側(妻)が主人公。
セックスレスで悩んでいるというわけではなく、
セックスが嫌いなので、したくない…
でも、夫がしょっちゅう求めてくるので
困る。
という内容でした。
夫のことは好きだけど、セックスはしたくない。
できれば穏便にセックスレスになりたいよ~!
という妻の悩み。
(娘は中1)

そこである日、隣にキレイな奥さんが引っ越してきます。
(モデルは壇蜜さん)

そのキレイな壇蜜さんのような奥さんは、
「セックスが嫌いなのはあなたのせいじゃないわ。
それは…旦那が下手だからよ!」と
ズバーっと笑うせえるすまんのごとく
いい放ちます。

そして奥さんはじわじわと
妻を誘惑し始めるのでした…。

(タイトルは「もしかしてウチの旦那、下手なんじゃない?」
山谷シュウコ名義で描きました。今でもどこかで読めるかもしれません)


女性向けマンガの流行り(?)は「不倫」「セックスレス」…

今は「女風」?


当時の女性向け配信マンガ(めちゃコミとかLINEマンガとかピッコマとか)での流行り(?)のテーマはダントツで
「セックスレス」でした。
(それ以前の流行りは「不倫」ものでした)

「セックスレス」マンガが多いし、よく読まれている。
だから私も…と乗っかった…というわけではないのですが、
その当時の担当編集者さんと案を出し合った結果、
「セックスレス流行ってるし、これでいきましょう!」と
いうことになった。(単純だな)

セックスレスのマンガって、どのお話もたいてい、旦那がしてくれなくなってモヤモヤ…なんか寂しい…私って女としての価値がないの?
…ウジウジ…という内容でした。

なので私は「旦那はしたいけど妻はしたくない。だけど旦那は愛してる」
という内容にしてみました。

で、そこで隣の怪しげな奥さんが妻を誘惑する、
というのにしたのは、
もし隣の「旦那さん」が誘惑してきたら、懐かしい感じの普通のレディコミの不倫ものになっちゃうでしょ。
なので奥さんだったら不倫にならない?(女同士だから)
セーフかな?という気もしないではない(かな?)
というギリギリ感を演出してみたかったのです。
(でも相手が同性だったとしても一応これは立派な不倫ですよね)



だけど…。
このマンガは失敗でした。
ダウンロード数もぜんぜん良くなかったみたい。

コメディータッチにするか
シリアスにするか、
もっと最初によく練っておくべきだった。
結局、エロいわけでもないレディコミになっちゃったよ。

プロットの時点では結構おもしろかったので、
当初は32ページの前後編(2話完結)の予定を、
32ページ×3話まで伸ばして描かせてもらった。
でも、はっきり言って3話でも足りなかった。
結局中途半端でいい作品に仕上げることができなかった。
すごく無念です。

女性向けのマンガでは、セックスレスものは人気でも
レズ、百合は不人気ということは
わかっていたのですが、
一時期、レズ風俗も流行ったから、いけるかなーと
思ったけど、甘かった。



現在の女性向け配信の人気のテーマは
セックスレスからの、女性用風俗…のようです。
だからもしも今このテーマで描いたら、旦那とのセックスが苦痛で、
藁をもつかむ思いで、女性用風俗に足を踏み入れる…
(イケイケの隣の奥さんに誘われて)
というのが自然な流れなんだろうな~とも
思います。

でも、本当に描きたかったことは
ただの流行りとしてのセックスレスではなく、
家族として夫を愛することを描きたかったし、
本当に、いろいろ私が訴えたいことはたくさんあった。

セックスレスで、世の中の女性がもし
「自分の女としての魅力が足りないからなのかな」と
悩んでいるのなら、
そうじゃない!
女性の責任じゃない!
ということを訴えたかった。

だけど、私の力不足で…。
せっかくページを伸ばして
もらったのに、うまく伝わるように
描ききることができなかった…。
悔しい思い出の作品です。


それに、いくら読んでもらいたいからって、
「不倫」「セックスレス」「女性用風俗」「レズ風俗」
などを安易に使うのも良くないなーとも
思っています。

いいわけになるけど、商業の場合、
編集者さん、出版社、などたくさんの壁を乗り越えて
説得して納得してもらわなければプロットの時点で
ボツなんで、どうしても「今の流行りは…」と
いう考えに陥ってしまいがちです。
(そうしないと企画が通らない)

それに、上の人たち(編集者、出版社)に
プロットとネームが通ることばかりを
最優先してしまいます。
編集さんに「ここはこうしたほうがいいんじゃない?」と
言われたら、その通り直して…を繰り返して
しまいます。

そんな感じで意見を交わしながら
決定稿にしていくことは
悪いことではないのですが…。
毎度のことですが、やりすぎると
結局何が言いたかったの自分でもわかんなく
なってしまいます。

とはいえ、それも所詮私のいいわけです。

編集者、出版社のせいじゃない。
私の「これを描きたい!」という覚悟が
足りなかった。



その過去の悔しさもあって、セックスレスの話をもう一度
チャンスがあれば描きたかったのです。

次は、ちゃんと、
「これが私の伝えたいテーマです!」と
自信をもっていえるようなお話にしたかった。
ちゃんと、自分の意見を通したい。
私の描きたいことを、描きたい。

そこで…

今回の連載でそのチャンスがめぐってきたわけです。





今回のお話も、ネームを編集者さんに
送ったとき、
「ハッピーエンドではない(結局離婚してしまう)」
ということを指摘されてしまいました。

この手のお話なら、ハッピーエンド(離婚回避)することが
定番なんじゃないかな…。
結局離婚してしまっては読者もガッカリしてしまうのでは。

と、いうことは私も描く時に気にはしていました。

それに、最初のネームでは、
妻は最後のページで、再婚して妊娠までしてしまうところまで
描きました。

それはいくらなんでも早すぎる…。

ということでスピード再婚妊娠は
やめましたが。(笑)
この夫婦がちゃんと(?)離婚するところまでは
絶対に描きたかった。

お互いに愛しているのなら
当然、離婚はしたくないはずです。
でも、辛くても寂しくても
別れを選ばなければいけない時って
あります。

「自分は自分らしく、相手は相手らしく」
お互いがお互いの幸せを望む…ということは
理想的だけど、易しいことではない。

でも夫婦としての関係をつなぐ「セックス」において
二人が同意していないのならば…

悲しいけど別れを選ぶことって
大事なことなんじゃないかなと思います。


一話完結の連載の中の一つのお話、
たった16ページのマンガです。

当然、完璧なものではないし、
めっちゃ素晴らしいという話でもないと思います。

でも、以前の私は自分のマンガに
自信をもっていたわけではなくて、
編集さんに何か指摘されると
慌てて直すことを繰り返していました。

そうしないと(ネームが通らないと)
原稿にすることができません。

それに、私の意見よりも
依頼してくれている編集者や出版社の意見の方が
「正しい」のでは?
といつも思っていたからです。

自分の考えや意見があったとしても
それを訴え、議論するなんて
生意気なんじゃないかな、(もう仕事こなくなるんじゃないかな)
と恐れていました。


でも…


今回思いきって、
自分の気持ちを訴えたところ、
わかってもらえて、すごくビックリもしたし
ホッとしました、

そうだ、私の描くマンガは私の
意見、考えを描いていいんだ…。

そうじゃなきゃダメなんだ。

私のマンガは、私が責任をもたなければならない。


とても当たり前のことなのですが、
これができるかできないかで
きっと作品は大きく変わってきます。

で、この男は幸せになれたのか


私はなにも、このお話を通して
「セックスレスで悩んだら離婚しちゃったほうがいいよ!」
と言いたいわけでは決してありません。

一度夫婦になったならば、簡単に離婚は
するべきではないのでは?と思うし、
もしもお互いの気持ちが通じ合った上で、離婚回避できるのならば、その方がきっと幸せだとは思います。

この男の一番の問題は、脚フェチでも
セックスレスでもなく、

「妻に嫌われるのが怖くて本当の気持ちを言えなかった」
ということです。

妻のことを愛している。
だから妻の望みを叶えたい。
それなのに、それができない。辛い。

一見優しそうでいて、自分の幸せは
他人次第…という「自分がない男」であると思います。

だからこそ、彼には
「自分は自分らしく。奥さんは奥さんらしく。
お互いが幸せになるように…」
と望むことが必要だったんじゃないかな。

それはきっと、私自身にも言えることで…

恋愛にしても、仕事にしても、

相手の望む通りにすることが
愛、ではない。(それは依存です)

「嫌われるかも」
という気持ちが頭をよぎったとしても、

「私はこう生きたい」という気持ちを
いつでも絶対にもっていきたいです。




メンエス嬢加恋はセルフラブを推奨しています。



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