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「コラムの手前のざっとした文」或いは「小説未満」

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「私」を題材とした創作です。
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2021年10月の記事一覧

秋のミイラ

秋のミイラ

雨上がり頭痛治る。

乾いた陽射しが廊下の無垢板を照らし、くっきりと影をつくるので、廊下で寝転がる私も日向と日影でまだらになっている。

体を動かさず静かにしていると、少しずつ体温が下がって日が暮れていく。

体温調節が楽な秋は、家中どこでも眠れるので、普段使わない二階のベッドで横になり、廊下に布団を引っ張り出しては眠り、台所にマットレスを持ち込んでは、転がる。

じっと横になっていると自分の体温

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ラーメン屋台

ラーメン屋台

「いややったら食べなはれ。ひもじい寒いもう死にたい不幸はこの順番に来ますのや。」の言は、『じゃりんこチエ』から。

衣食住足る上での悩みは、私の場合は、食べて風呂に入って冷める前に布団に入り目を瞑れば済むが、衝動に駆られて夜の酒場へ出掛けていってしまうのは、有り余る体力があるから…。

酒を飲み、炭水化物をとりたくなり、最終的には屋台の豚骨ラーメン、始発を待ちながら24時間営業の喫茶店、又は無意味

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かりんとう

かりんとう

かりんとうを口に放りボリボリと噛み砕く。

骨に響き耳の後ろで音がする。その後、熱い茶を飲めば舌が痺れ脳が甘くなる。

湯呑を洗い裏返して夕寝する。

夕寝は廊下に布団を引っ張ってきて敷き、庭の見える窓のそばで転がっているのが良い。

そのうちに日が暮れどこもかしこも薄暗く全身一色になっている。

重たくなった頭を持ち上げ、台所に戻る。

台所で裏返され乾いた湯呑に水を入れる。一気に飲み干した後、

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いがぐりが鳴いている

いがぐりが鳴いている

電話に出ると、すみません、寝てましたか、と言われる。

起きてから既に3時間以上経っている。

起きていました。

簡潔に答えるのは、いつもの事だからだ。何時に電話に出ても寝起き声であり、すみませんというのは寧ろこちらの方である。要は私の発声の仕方が悪いのだ。

レジ袋が無料だった頃、袋お入れしましょうか?の問いかけに、「はい」と言っても三回に一回は袋には入れられず品物を渡された。店員側からすれば

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見つかる

見つかる

石の上で、小さなトカゲが日光浴をしているのをジッと見ている。

トカゲは繊細に作られた前足で踏ん張って、胸をそらして、非常に熱心である。見ている私に気付いているのかいないのか、警戒せずに、恍惚の様子で、夜の間にすっかり冷えてしまった身体を暖めている。

恍惚のトカゲを見る私の後ろから足音がする。青乃さんと呼び掛けられギクリとする。

見つかる時は一瞬だ。

私は慌てて立ち上がる。

その無遠慮な様

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