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【読後感想】第128回 文學界新人賞 『ハンチバック』市川沙央
2023年
ヤバイ本
純文学
評価:75 点
時間:1.5 h
![](https://assets.st-note.com/img/1682571082278-nOHRuTd5sD.jpg)
今年の文學界新人賞は面白かった。かなり尖っていて、迫力があった。
かくいう僕は、『羨望』という小説を書いて、この賞レースに応募した。
正直、かなり自信があった。しかし、僕の代わりに彼女が受賞した。その話もしたいが、今は止めておく。
「田中さんのルサンチマンを吸っている感じで、いい」
パンチラインは間違いないくコレだと思う。
この「ルサンチマン」ってのは怨恨、遺恨、復讐感情のこと。
これはニーチェの用語で弱者の強者に対する憎悪をみたそうとする復習心が内攻的に鬱積した心理~なんてことが調べれば分かります。
ねえ、なかなかに強烈でしょ! さて、どんなシーンでこのセリフが出てくるのかってそれは言わない。こんな風に難しい言葉がちらほら出てきて、その都度スマホさんで調べないことには読み進めないという難儀なところはあります。僕も、ルサチマンなんて言葉知らなかった。
ちょっと引用しますね。
米津知子はポリオの後遺症で装具を付けた右足を引き摺っていたリブ活動家だ。重なり得ないと嘯きつつも、東京国立博物館にやってきたモナ・リザに赤いスプレーを引っ掛けようとした彼女には、少なからず共感する。当時、中絶規制の法改定の動きを巡って、障害者を産みたくない女性団体と殺されたくない障害者団体が激しくぶつかり合っていた。殺す側と殺される側のせめぎ合いは「中絶を選ぶしかない社会」を共通のヴィランとすることでアウフヘーベンして障害女性のリプロダクティブ・ライツにまで辿り着き、安積遊歩のカイロ演説を生んだ。1996年にはやっと障害者も産む側であることを公的に許してやろうよと法が正されたが、生殖技術の進展とコモディティ化によって障害者殺しは結局、多くのカップルにとってもカジュアルなものとなった。そのうちプチプラ化するだろう。
だったら、殺すために孕もうとする障害者がいてもいいんじゃない?
それでやっとバランスが取れない?
どうです?なかなかでしょ、このカタカナ!
でもね、読めば分かるけど、いいところ抜粋していると思う。ちょっと読んでみようと思いませんか?
そもそもハンチバックだって分からないって? ま、これは読めばすぐにわかります。
本を読む人が減ってきている昨今、しかも純文学、そして新人賞なんて、少し前までアマですよ。いま、やっとプロになった作家さんです。これから芥川賞とって、やっと少し売れくらいです。まだ直木賞が、なんなら本屋大賞をとってはじめて認知されるくらいかもしれません。でもね、読んだほうがいい。面白いから。そして、僕も早くデビューしたい。と、また脱線!
ざっくり言えば、※あらすじではないですよ。
冒頭はハプバーから始まります。主人公は障害をもった女性です。でも、色々なことをちゃんと思考しています。ライターをしています。金はあるんです。でも、身体を使う、いわゆる普通のことができません。ツイッターで<中絶がしてみたい>なんて呟くくらい荒んでいます。もちろんヘルパーさんかなんかには隠れてね。だけどある時・・・
やっぱり、このくらいでやめておきますね。筋を知れば読むのか?それは違いますよね。面白い本を読むんですよね。そしたら知らない方がいい。僕のお話がきかっけで読んでみようと思ってくれたら幸いです。
と、一点。実に純文学らしい作品です。このらしいは、身辺雑記の「いわゆる」純文学という皮肉ではなくって。それが反則なのか才能なのか武器なのか、正しい言葉は分かりませんが、直近ですぐに浮かんだのは、第59回文藝賞を受賞した『ジャクソンひとり』の安堂ホセさんを思い出しました。
作者の市川沙央さんの紹介が書かれています。彼女は、筋疾患先天性ミオパチーによる症候性側彎症および人工呼吸器使用・電動車椅子当事者で、現在、ライターの仕事をしています。43歳。
さいごに、ラストの展開はかなり賛否があるとは思います。このことは、選評でも書かれています。
個人的には急に気持ち悪くなった。違和感もある。中村文則さんの意見と近かった。
なので75点。でも、良かった。
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