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短編小説 | ニフヨク | シロクマ文芸部

 「雪化粧」のことを考えていたはずなのに、いつの間にか「ヤマ瀬まみ」のことを考えていた。
どういう流れでそうなったかなって、かっぱえびせんをポリポリしながら思い出している。ポリポリというかボリボリかな。それともしゃくしゃくかな、と湯船の中で。

 「雪化粧」って聞くと「月化粧」を思い出す。大阪のお菓子なんだけど、見た目は福岡で有名なアレ・・だ。だけどこういった類は「間違いのない・・・・・・お菓子」として、駅や土産店なんかで、これまた間違いなく買われていくもんだ、なんて、思っていたんだよ。ラベンダーの入浴剤の入った湯船の中で。

 それでね、また「雪化粧」に戻って考えていたら、「雪化粧したみたいだね」ってフレーズが浮かんだんだよ。歌の歌詞みたいにね。それを小説の初めになんて持ってきたら、まあ、死体が出てくる、もしくは死人が出る話なんだろうなって思ったわけ。だけど、そんなありきたりなの、つまらないじゃない。うそ。別に良いんだけど。白い顔ってことで連想したわけだよね、きっと。
 それで、つぎに白い顔で思いついたのがヤマ瀬まみだったのね。昔はよくテレビで見かけたけど、最近何してんのかなって調べてみようと思ったところで、不意にヤマ瀬まみのモノマネがしたくなったんだよ。もうだいぶ冷めてしまった、ラベンダーの入浴剤の入った湯船の中で。

 ヤマ瀬まみをよく見ていたのは、うちの両親が見ているNHKの番組だった。両親はNHKしか見なくて、他につけるとしたら「タイトルのない音楽会」だったかな。
 ヤマ瀬まみはテレビ業界に愛されていたよね、当時は。だから、それが当時だけのことなのか、現在進行形なのか知りたかったからヤマ瀬まみのことを考えていたんだよ。足を縮めていないと座る場所もないくらい小さくて、もうだいぶ冷めてしまった、ラベンダーの入浴剤の入った湯船の中で

 それで、ここからが本題。Googleの検索に「ヤマ瀬まみ」と打った。だけど虫眼鏡のゴーサインを押さなかった。何故だと思う?興味がなくなったんだ。ヤマ瀬まみが今どうしているかってこと。それよりもヤマ瀬まみのモノマネで「雪化粧」って言いたくなった。私の目の前にだらしなく体を伸ばしている人が邪魔で、足を縮めていないと座る場所もないくらい小さくて、もうだいぶ冷めてしまった、ラベンダーの入浴剤の入った湯船の中で。

 あなたも言ってみると良いよ。ちなみに言うと、私は5回連続で言ったから。ヤマ瀬まみの真似で「雪化粧」だよ。これって言える?言えないよねえ。風呂場は響くからはっきりわからないけど、多分言えてないよ。難しいよ。やってみて?今では、頭まで湯に沈んでいて、だらしなく体を伸ばしている人が邪魔で、足を縮めていないと座る場所もないくらい小さくて、もうだいぶ冷めてしまった、ラベンダーの入浴剤の入った湯船の中で。

 さっきここからが本題って言ったけど、それはさておき、あなたに問題です。ラベンダーの入浴剤というのは、お湯に入れると、お湯を何色に変えるのでしょうか。
チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク。
 あ、今ね、チクタクチクタクって、高速で打ってみたの。フリック入力でね。そしたらね、親指がク藤静香のヒット曲の振り付けみたいな動きになったからね。面白いからこれも試してみてよ。

 じゃあ、さっきの問題の正解を言うね。真っ赤だよ。綺麗に真っ赤。だってさ、この人さ、ぜんぜんいうこときいてくれなくてさ、わたしにいじわるばっかりしてきてさ、あいしてくれなくてさ、おかねばっかりもっていっちゃってさ、わたしはさ、たべるものもなくてさ、すまほだってほんとうはもうとっくにうごいてなくてさ、だからさ、だからさ、やっちゃったんだよ。
「やっちゃった」って、今、ヤマ瀬まみのモノマネで言ったの、わかった?

ねえ、聞いてる?
足が邪魔だよ。




[完]


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ニフヨク/入浴

せっかく綺麗なお題だったのに、ホラーになってしまいました😢
今週もよろしくお願いします°・*:.。.☆

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