眠れない者を癒やす、眠らない星々
星空の子守 〔超ショートショート〕
眠らない赤ちゃんを抱いて、
お母さんは田舎道を歩く。
月あかりだけを頼りに。
抱かれたままお母さんを見上げる赤ちゃんの目に、今夜はたくさんの星が映って、
キラキラと輝いている。
そっと撫でるような風を感じ、
お母さんはもう少しだけ、
赤ちゃんを自分に近づけるように抱いた。
眠らない赤ちゃんを抱いたお母さんの吐息が夜の空気に混ざる。
ふと、夜空を仰ぎ見る。
空にはたくさんの、星々。
揺れている。
小さなダイヤモンドのように輝く星も、
大きく光る目立ちたがりな星も、
同じ方向、同じリズムで。ゆったりと。
右に、左に、揺れている。
お母さんはいつしか、星々と同じリズムで、
右へ左へ。身体を揺らす。
お母さんと一緒に揺れる星々を、眠れない赤ちゃんは見ている。
心地よい揺れに、まぶたが閉じてしまうまで。
いつの間にか眠った赤ちゃんを抱いて、お母さんは来た道を戻っていく。
耐えがたい眠気と、あくびをこらえながら、いつまでも揺れる星々に、見送られて。
#超ショートショート
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