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パニック症の原因について臨床心理学的に解説

どうも、あおきです。医学部でコミュニケーション教育と心理学教育を行っている研究者兼心理カウンセラーです。今回は「パニック症と広場恐怖」について、臨床心理学的な視点から、理論や最新の知見を交えてお話ししようと思います。

パニック症とは、突然の強い不安や恐怖に襲われるパニック発作を繰り返す症状を指します。何も起こっていない日常的な場面でも、突然心拍が速くなり、息が苦しくなり、死ぬのではないかという強い恐怖感に襲われることがあります。これをパニック発作といいます。

そしてパニック発作の恐怖から、発作が起こる場所や状況を避けるようになる「広場恐怖」が併発することも多いです。広場恐怖は、電車やバス、ショッピングモールなど、人が多くて逃げられないように感じる場所や、助けが得られない場所にいることに対して極度の恐怖を抱く状態です。

このパニック症や広場恐怖を理解するために、心理学の理論は非常に重要です。代表的なものとして「マウアーの二重要因理論」があります。この理論は、パニック症の発症と持続に関与する2つのプロセスを説明しています。

1つ目の要因は「古典的条件づけ」です。これは、ある特定の状況や刺激(例えば、人混みや閉鎖空間など)がパニック発作と結びつき、その状況に直面するたびに強い不安が生じるようになるというものです。

例えば、ある日、電車に乗っている時にパニック発作を経験したとします。それ以降、電車に乗るだけで「また発作が起こるのではないか」という強い不安を感じるようになり、電車に乗ること自体が恐怖の対象となります。

2つ目の要因は「オペラント条件づけ」です。ここでは、恐怖を感じた時に、その状況から逃げることで一時的に不安が軽減されますが、この「逃避行動」が強化されてしまう点が重要です。

例えば、パニック発作の恐れから電車に乗るのを避けると、一時的に安心感が得られますが、その避ける行動が結果的にパニック症や広場恐怖を長引かせる原因になります。つまり、不安を感じた時に逃げることで、「逃げれば大丈夫だ」という信念が強化され、どんどん逃避行動が習慣化してしまうのです。

これら2つのプロセスを通じて、パニック症は発症し、広場恐怖などの恐怖症状が強化されていくと考えられています。

しかし、パニック症に関する最新の理論では、脳内の神経メカニズムや心理的要因だけでなく、身体的反応との相互作用も注目されています。

例えば、パニック症の発作は身体感覚(心拍数の上昇や呼吸困難など)に対する過剰な注意や過敏さが関与していると言われています。つまり、通常であれば気にしない程度の心拍の上昇や呼吸の変化に対して、「これは危険だ」という過剰な認識が生じ、それがさらなる不安と発作のトリガーになるのです。この過剰な身体感覚への反応を「身体感覚恐怖」と呼びます。

この理論に基づくと、パニック症の治療では、患者が身体の変化に過剰に反応しないようにする「身体感覚への馴れ」や、「身体感覚と不安の関連性を見直す」ことが重要になります。

具体的には、認知行動療法の中でもエクスポージャー法を通じて、恐怖を感じる場面に徐々に慣れたり、不安についての考えを見直すアプローチが効果的です。

エクスポージャー法では、恐怖を感じる状況や身体反応に段階的に取り組むことで、「この状況は危険ではない」という新しい学習を行い、その結果不安を感じる場面にもいることができるようになります。

例えば、最初は軽い運動で心拍数を上げる訓練をし、それに慣れたら次は実際に広場や電車に乗るといった日常生活の場面に戻っていくような訓練を行います。

まとめると、パニック症や広場恐怖は、心理的な要因、身体的な反応、行動の回避によって形成され、持続する複雑な問題です。しかし、マウアーの二要因理論や、最新の神経科学的視点を取り入れたアプローチを用いることで、治療は可能です。

パニック症に苦しむ人にとって、適切なサポートと治療を通じて、日常生活に支障がないようになっていってもらえるといいなと思います。

それでは、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

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