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「つくる」を身近にする包丁(TONSTON デザインのひみつ)

岐阜県関市の志津刃物さんと一緒に、新しい包丁を作りました。

トンと切れて

ストンとしまえる

TONSTON(トンストン)新登場です。


https://tent1000.com/tonston/

今回はメーカーである志津刃物の堀部(ほりべ)さんと、TONSTONができるまでの紆余曲折をお話したいと思います。



1.作ったものを使っていない


TENTアオキ
今日はよろしくお願いします。


志津刃物 堀部さん
よろしくお願いします。

左:志津刃物 堀部(ほりべ)さん 右:TENT アオキ

アオキ
志津刃物さんは、どんな会社なのかざっくり聞かせていただけますか?


堀部さん
ポケットナイフっていう小さなナイフを磨く研磨職人だった祖父が、64年ほど前に刃物メーカーとして起業して。ずっとOEM(メーカーなどから製造受託する工場)として刃物を作っていました。

それで2010年ごろからかな。自社製品として包丁の企画が動き出したんですけど「作ったはいいけど売れない」みたいな時期が4年くらい続きましたね。

ある時には「従業員の誰も、自分たちが作った包丁を使っていない」って話も出まして。

アオキ
えー!ショッキングな事態ですね。それは。


堀部さん
そう。「別に使いたいとは思わない。家に別の包丁あるし」って。もともとが社長がプロ向けをイメージして作った包丁だったんですよね。

そこで、うちの社員チームと外部のデザイナーさんとで家庭用として企画して作ったのが、morinokiからはじまる3シリーズ。

morinokiシリーズ

堀部さん
そのあたりから、うちならではの包丁作りが始まった感じですね。

関市に100社以上の刃物メーカーさんがいる中で、僕らは自社ブランドのスタートという意味では後発なので。

刃物屋さん以外の売り場を考えようということで、セレクトショップさんに置いてもらえるような雰囲気のものを作りました。


アオキ
最初は展示会に出展して、お店さんと繋がった感じだったんですか?


堀部さん
そうですね。インテリアライフスタイルに出展して繋がりができていった感じでした。


2.自分にとって最適なもの


アオキ

今回なぜTENTにお声がけいただけたんですか?


堀部さん
さきほどのシリーズが好調に販売されてから、最初に作っていた包丁も、主に輸出向きではありますが売り上げとして立つようになっていました。

それでまた次の製品を作りたいと思った頃に、ちょうど関の工場参観日でTENTさんがトークイベントされていて。その時に僕が抱えていた悩みに対して腑に落ちたお話があって。

アオキ
どういう悩みを抱えていたんですか?


堀部さん
デザイナーさんに依頼するとき、お金についてはどう考えたら良いのかが悩ましかったんです。

トークイベントではTENTさんが「僕たちは経験を積んだプロなので、どれくらいの時間でどれくらいのアウトプットを出せるかという"時間"は見積もることができる。」って話をされてて


アオキ
デザインフィーについてのお話ですね。たしかにTENTは時間で見積もるような形をとりますね。


堀部さん
はい。「こんなに明確にやられている方がいるのか」って驚いて。それから名刺入れなどいろんな製品を買って使わせてもらって。翌年にもう一度お会いしたときに、お仕事のご依頼をさせていただきました。


アオキ
当初はどのようなことを期待されていたんですか?「こんな製品になると良いな」というイメージとか


堀部さん
うーん、明確なイメージはありませんでした。TENTさんなら面白いものができるかなって。

アオキ
実は志津刃物さんの工場見学をした際にyuriという包丁を購入して使っていて、すごく印象が良かったんですよね。だからこそ、今回どんな包丁を考えるかはけっこう悩みました。

違う価値軸はないかなと思って、うんうん悩んで悩んで。
それで至ったのが、こちらの1st提案資料ですね。

アオキ
包丁ってたくさんの会社がいろんな価格帯のものを出しているので、何を買ったら良いか全然わからない

だから面倒くさくて量販店なんかで安いやつを買うんですけど、でも本当は、自分にとって最適なものをずっとさがして探してます。

アオキ
たとえば「収納に困る」「3本セットとか必要ない」「本当はちょくちょく研ぐべき」「なんでウネウネした形ばかりなの?」などなどの困り事があるなあって思ってまして。

それぞれの問題に対して提案を行いました。たとえば「収納」に着目したのが、こちらの提案です。

アオキ
家具のような親しみやすさを持ってて、菜箸や木べらと同じように気軽に使える包丁が作りたいなあと思いまして。最初のスケッチがこちらですね。

アオキ
他にも色々な問題定義と提案があったんですけど、このプランが採用になりましたね。この辺りはどんな考えがあったんですか?


堀部さん
包丁って「危なくて遠ざけたいもの」ってイメージがあって、収納するときもシンクの下に隠されがちですよね。

でもこれは収納方法も含めて「キッチンに馴染む」っていう提案になっていて。それは僕らもずっと大事にしていた価値観だったので、すごく共感できました。

身近にあって親近感を持てて、思わず手に触れたくなる包丁。良いですよね。

堀部さん
形の印象については「TENTさんらしくて良いなあ」と思いつつ、とくに持ち手部分のイメージがフライパンジュウに近い部分もあったので、藤田金属さんとしては大丈夫なのかな?とも思いました。


アオキ
藤田さんからは「フライパンジュウに近いイメージの包丁ができるなんて、むしろありがたいので全く問題ないです!」って言ってもらえましたね。

そして収納ポットは藤田金属のヘラ絞りで製造されてますし、マグネットボードはフライパンジュウの持ち手を製造している佐藤工芸さんにお願いすることになりましたね。

アオキ家ではポットにフライパンジュウのハンドルも収納されている

堀部さん
そうですね。結果的には、そのあたりの関係性含めてありがたい提案だったと思います。

フライパンジュウと似合うトンストン


3.鋭さと親しみさ


アオキ

最終的な製品はわりと初期スケッチに近いイメージで着地できたと思うんですけど、開発プロセスで印象に残っていることはありますか?


堀部さん
実は途中ではいろいろありましたね。たとえば、持ち手に鋲をつけないといけない、だとか。

アオキ
世の中にある多くの包丁は鋲がついてますもんね。今回は鋲なしで包丁と木がスムーズに一体化してて、これってすごいことですよね。どう実現したんですか?

堀部さん
詳しくは秘密なんですけど、見えない部分にうまく凸凹をつけて、組み合わせて接着などを行っています。木のRと金属部分を綺麗につなげるあたりも苦労しましたね。


アオキ
滑らかな木と、一体化した金属。触っていて手に馴染む感じがすごく気持ち良いです。

アオキ
他にも見えない苦労はありますか?


堀部さん
持ち手の丸みを気持ち良くするために組み付けた後にヤスリをかけるんですが、とくにこの持ち手と包丁との境目あたり、このあたりのヤスリがけが大変ですね。

アオキ
そこはどのように解決したんですか?


堀部さん
そこは、1つ1つ丁寧に磨くことにしました。持った時の心地よさは大切な要素だと思ったので。


アオキ
うわあ、ややこしい形を提案してすみません。ありがとうございます。


堀部さん
あとは大変とかではない話なんですけど「包丁の先端を少し丸くしたい」と言われたのはちょっと驚きました。

堀部さん
過去の製品ではキリッとしたイメージを持たせるために先端を尖らせていたんです。ここが丸いと間抜けな感じになっちゃうからって。

でも実際に出来上がってみると、持ち手の丸みも含めて、全体として怖くない、親しみやすいイメージが出来上がったので、なるほどと思いました。


アオキ
突き刺して使うには尖っていた方が良いとは思うんですけど、現代の暮らしの中で「包丁を突き刺す」ってシチュエーションはあんまりないと思ったんですよね。

とはいえさすがの志津刃物さんで。切れ味自体はものすごく良いので驚くほどスムーズに切れますね。


4.トンとストンを心地よく

アオキ
サイズについてもわりと特殊なものになっていると思うんですけど


堀部さん
そうですね、刃渡り165mm~170mmのものが一般的なんですけど、今回は150mmくらいの小ぶりなサイズになっています。


アオキ
キャベツやスイカ、かぼちゃなどの大きな野菜一玉をズバッと切るためには170mmとか必要なんですけど、最近では大きなものを切る機会も減っていますし、普段用に気軽にさっと使いたくなるサイズということで提案させていただきました。

横幅についても最初はもっと幅広だったんですけど、リンゴの皮をより剥きやすくするために細く変更しましたね。

堀部さん
現代のコンパクトなキッチンで使うにはちょうど良いサイズ感だなと思ってます。


アオキ
すっかり忘れてましたけど、思い返せば小さな変更がたくさんありましたね。たとえば包丁のカーブについても、いくつも試作して検証しましたよね。


堀部さん
そうですね。当初はもうちょっと傾斜がきついカーブだったんですけど、切りやすさを考慮して修正を重ねました。


アオキ
包丁についてはそれくらいかな、と思いますが、ポットについては何かありますか?


堀部さん
ポットの金属に関しては、藤田金属さんのおかげでスッと実現しましたね。

堀部さん
でもマグネットボードについてはかなり検証が必要でした。

磁力で板に包丁を貼り付ける構成のものって、うちでも過去にやったことはあったんですけど、どっちかっていうとビタン!と貼り付けるイメージでした。

今回はポットに気持ち良くストンと収まって、外す時もスッと引き抜きやすいように磁石の位置とサイズを数多く実験しました。


アオキ
そのおかげで「トンストン」という名前に恥じないくらい気持ち良く「ストン」ってなってます。ありがとうございます。

アオキ
佐藤工芸さんもすごいですね、中に磁石が埋め込まれていることを感じさせない、一枚板のような仕上げになっていて。

堀部さん
こうして様々な会社さんの力が集まって実現できたことが、ありがたいですね。


5.つくるを身近にする道具


アオキ

プロジェクトのスタートからで言えば、実はもう3年ほど経過していて。僕は「ついに、ようやく!」という気持ちなんですけど、改めて伝えたいことなどありますか?


堀部さん
今回は品質にはこだわった上で「気軽に使っていただける」ということを重視したので、志津刃物の製品群から言っても価格として抑えめにすることができたと思います。

包丁にこだわりを持つ方はもちろん、初めて自分用の包丁を買うという方にも、おすすめしたいです。

アオキ
たしかにです!

うちの子どもたちは、安いインラインスケートだと滑れなかったのに、ちゃんとしたベアリングの入ったちょっと良いインラインスケートを履いたら、すぐに滑れるようになりました。

最初だからこそ良い道具を使うって大事ですよね。


堀部さん
切れない包丁を使うと、料理が億劫になりますし。


アオキ
良い包丁はスパッと切れる。だから料理が身近になる

個人的には、料理って言うよりもっと手前の「切る、焼く、それだけで美味しいんだ!」ってことを伝えたくて。

フライパンジュウそしてCHOPLATEに続き、つくることが気軽になる、楽しくなる調理器具を、もう1つ作り上げられて嬉しいです。

堀部さん
そうですね、これまでのTENTさんの道具を作っている方には、とくに馴染むものになっていると思います。


アオキ
TONSTONで「つくる」をもっと身近にしていきたいですね。今日はありがとうございました!


堀部さん
ありがとうございました。



6. TONSTON(トンストン)

包丁について考えたら
切れ味だけではなく置き場所も作りたくなりました。

美味しい料理を作る様々な道具と仲間になれる、新しい包丁TONSTON(トンストン)。

みなさんの暮らしの中で「つくる」をもっと身近にできると嬉しいです。

https://tent1000.com/tonston/



6月下旬発送予定の、お得な先行予約受付中です。

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でご予約いただけます。

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