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やがて働く場所ができるように

山形県天童市。
駅からそう遠くない住宅街の入り組んだ路地の奥に、小さな木工所『佐藤工芸』があります。

実はこの工場、フライパンジュウの持ち手の木部分を、発売当初からずっと製造してくれています。

まずは、どう作られているのか見ていきましょうか。


1.ジュウの持ち手ができるまで

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これは、材木屋さんに並んだ木材たち。

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こんなに大きな木を、まるでマグロを切って刺身を作っていくかのように、細かく切っていきます。

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「ここだと厚みもしっかりあるので、こんくらいの数が使えますねー」なんて確認したりして。

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材木屋さんから買ってきた大きな木を、大きなノコ刃を使ってカットして、小さく切り分けます。

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フシやヒビ割れが少しでもあれば、その部分は使えないから。材料を切り出す部分で、かなりの分量が廃棄されることになります。

廃棄と言っても、山形県は寒いですから。全てを薪ストーブの燃料として有効活用。

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綺麗に切り分けた木材はNCマシン(ドリルで切削する機械)を使って削り込んでいきます。

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削って形が見えてきました。
すぐに取り出し、1つ1つ手でやすりがけします。

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フライパンジュウの持ち手の触り心地の良さは、1つ1つ手で仕上げているから生まれているのかもしれません。

さて、今回はそんな佐藤工芸の社長である高橋さんにお話を伺ってきました。



2.高橋が社長をやったらいい


TENT アオキ
高橋さんって、いつから社長になったんでしたっけ

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佐藤工芸 高橋さん
二年くらい前ですね。

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アオキ
どんな経緯で


高橋さん
私は20年前くらいに、ものづくりの求人が出てたのでここ(佐藤工芸)受けさせてもらって。ほとんど素人の状態で入社したんですけど。

当時の佐藤工芸は社員は5名くらいとパートさんが20名くらいで。主に「将棋の飾り駒」ばっかり毎日200個300個って製造してました。

私も前の社長からNCの加工を教えてもらって、将棋の飾り駒を作ってました。

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高橋さん
それから10年くらい経って、将棋の飾り駒の仕事がパタっとなくなってしまったんですね。

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その頃から、天童木工さんとかの家具のお仕事も受けるようになって。私も受注のお仕事の中でNC加工の技術を上げていって、そちらがだんだん主体になっていきました。

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それでリーマンショックの頃ですね、世の中の経済状況も変わってきて、まあ下請けとか孫請けとかそういう形でやってたんで、受注のお仕事が一気に無くなって潰れそうになって。

「オリジナル商品を作らないとまずいよね」ってことで、山形の工業技術センターに相談に行って。デザイナーさんに企画してもらって商品作ったりもしましたね。

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高橋さん
でもやっぱり私たちは伝えたり販売するっていう力は無いもんですから。オリジナル商品が売上の大きな柱になるってこともなくて。

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それで、前の社長はもともと「60歳になったら会社を辞める」って言ってたもんですから。


アオキ
社長を引退するっていう意味ですか?


高橋さん
いえいえ、会社を畳んじゃうっていう意味です。だから仕事が減って行っても問題ないって言ってて。

仕事をどんどん縮小して、手加工も塗装もやめて、NC加工だけにしてって言ってたんですけど、私的には、それはもったいないと思って

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アオキ
たしかに


高橋さん
せっかく、人も技術もあって、お客さんも良い方がいらっしゃるのに、いきなり「会社たたみます」っていうのも無責任な話だなあと思って。

そんな頃ですね、twelvetoneの角田さんのYOKAシリーズのお仕事とか、TENTさんからフライパンジュウの持ち手の相談があったりしたのは。

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アオキ
そうだったんですね、けっこうややこしい時期だった。


高橋さん
はい、社長は会社を畳むつもりなもんですから、私が新しい仕事をとってくるたびに揉めてたんです。

そしたらついに社長が「高橋が社長をやったらいい」と言い出して。

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アオキ
わあ、それはびっくりしますね。


高橋さん
私的にはもう、子どもも独立してたし、パートになってもいいかなっていう勢いだったんですけど。

この仕事は好きだし、仕事もどんどんくるし。社長になればいろいろできるのかもなあなんて思って。

そうとう、5、6年くらいですね。ずっと悩んだんですけど。令和元年の12月に社長交代ってことになりました。

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社長になってすぐにコロナ騒ぎになったんで「社長にならないほうがよかったってことかな」なんて思ってた時期もあったんですけど

YOKAシリーズとフライパンジュウから、ものすごい数の発注をいただいて。おかげさまで今もちゃんと会社を存続できて。助けられてるなあと思ってます。

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アオキ
いやあ、うちもフライパンジュウでは本当にお世話になってます。


高橋さん
今年(2021年)のはじめに、6000本の依頼がきたときには、さすがにビックリしましたけどね。製造工程や治具を見直して、なんとか対応させていただいています。


アオキ
6000本はすごいですね、でもそこの壁に、さらに追加発注のメールが貼ってありました。


高橋さん
はい、また何千本も追加いただいて、本当にフライパンジュウとYOKAさんのおかげで食べていけている状態です。


アオキ
いやいや、そんな大袈裟な。でも本当に、最近は他のお仕事は減ってきている状況なんですか?



3.若い方に働く場所を


高橋さん
そうですね。家具のお仕事なんかは、昔は官庁なんかのハコモノを作るってことで、100や200の大量発注が結構あったんです。

でも今はハコモノやめようっていう世の中になったこともあって、そういう仕事はなくなりましたね。


アオキ
やっぱり受注のお仕事だと、そんな感じでいきなり仕事が無くなったりするんですね。

当事者がこんなことを言うのもなんですが、フライパンジュウだって、いつどうなるかわからないですし。

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高橋さん
そうですね。だから理想としてはOEM(受注のお仕事)が50%、自社オリジナル商品が50%くらいの割合にできると良いなと。

うち、娘が三人いるんですけども、三人とも東京の方に行ってしまって。一人は結婚して戻ってきてくれて、いま佐藤工芸を手伝ってくれてるんですけど。

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東京から戻って二人暮らしとか、じいちゃんばあちゃんと暮らすとか。まあ、そういう若い方々が、以外と山形に多くいらっしゃるんです。

そういう若い方が山形で働きたいと思っても、仕事がないんですよ。だから私としては、仕事を作って若い人を受け入れて、事業継承なんかもしていけるとありがたいなと思ってます。

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アオキ
なるほど。だから今回、オリジナル商品とかそのあたりのお話を、僕たちTENTにいろいろ相談することになったと。


高橋さん
はい、やっぱり、伝え方や売り方が私たちは得意では無いんで。

そのあたりも含めて全部自分たちでやってるフライパンジュウのような感じで、オリジナル製品を作ることができたらいいなと思いまして。


アオキ
なるほど、恐縮です。何よりも、佐藤工芸さんがこれからも、若い人も楽しく働ける工場として存続しくれることは、僕たち発注させていただく立場としてもありがたいことですから。

何かお役に立てることがないか、考えていきたいと思います。


高橋さん
よろしくお願いしますね。

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というわけで

佐藤工芸さんとTENTとのコラボレーションで何かを仕掛けていきたいと思います!うまくいけば、発表は一年後くらいなのかな…。

お楽しみに!

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