見出し画像

心に刺さる1つを丁寧に(POCHI&JOHN デザインのひみつ)

のせる、しまう、すわる、一緒に暮らす。
POCHI & JOHN

サイドテーブルやカゴになり、 スツールやベンチにもなる。頼もしさと愛嬌を兼ね備えた、 新しい家具ができました。


そんな POCHI & JOHN はどのような経緯で誕生したのか。
岐阜県関市にある杉山製作所さんへお邪魔してお話を伺ってきました。





1.工場をよく見た上で



杉山製作所 小玉(こだま)さん
遠いところまでご出張ありがとうございます。

小玉(こだま)さん


杉山製作所 永井(ながい)さん
よろしくお願いします。

永井(ながい)さん

ケンケン
よろしくお願いします。


TENT アオキ

たしか最初は杉山製作所さんからメールをいただいて始まったわけですけど、どのような経緯でTENTに声をかけることになったんですか?


小玉さん
2019年頃の「関の工場参観日」というイベントで、TENTさんがトークイベントのゲストとして来られてて

小玉さん
その時に、皆さん杉山製作所にも立ち寄って工場見学をされてたんですよね。私はそれ以前からTENTさんの事は知っていたんですけど、その時はお会いすることができなくて。

「会えなくて残念だったな、お話ししてみたかったなあ」と思っていたら、うちの社長が「今までと違う新しいデザイナーさんと商品開発をしたいなあ」みたいなことを話してて。

これは!と思って、すぐに「TENTさんがいいです!」って言いました。

アオキ
すごいタイミング!ありがとうございます。

小玉さん
それで翌年の「関の工場参観日」のタイミングでまたTENTさんにお越しいただいて、そこで打ち合わせをしたんだと思います。

永井さん
その時はわりと無茶振りというか。何を作るかも具体的に決まっていない曖昧な依頼だったので、ちょっと心配でした。


ハルタ
ワゴンを作ろうかとか、子どものランドセル置き場欲しいよねとか、複数の商品を新ブランドのシリーズとして立ち上げたいとか。そんな雑談をしていたように記憶しています。


アオキ
ひとくちに鉄の工場と言っても、得意な素材や加工法などは工場ごとに全然違うので、それを把握するために以前より詳しく工場見学して。

杉山製作所さんは鉄の長い棒材を曲げたり溶接したりが得意で。その結果できたオリジナルの鉄家具たちは細身なのにとても頑丈で。溶接跡など見えないくらい精度の高い加工をされているのが印象的でした。


永井さん
ありがとうございます。職人さんの腕が良いのは間違いないんですけど、加工方法や素材の種類が多いわけではないので、制約が多いことがちょっと不安ではありました。


小玉さん
最初は心配してましたよね。製造できないような提案が来たらどうしようかって。


アオキ
それから1ヶ月後くらいでしたっけ、TENTからたくさんの製品アイデアを提案させていただきました。

TENT内でアイデア出ししたカード

アオキ
大物から小物まで数多くのアイデアがあったと思うんですけど、最初の提案を見た時はいかがでしたか。

提案資料のごく一部

永井さん
いやあ、さすがだなと。ウチが製造する上で無理な部分がないのにユニークな提案がたくさんで。しかもシリーズとして雰囲気も揃っていたので、これはどう転んでも上手くいけるんじゃないかな?と安心しました。

ケンケン
とはいえ、僕にとって初めての鉄の棒材を使った製品づくりだったのでスケッチだけではちょっと不安で。手元でミニチュアを作って検証もしました。

ケンケン謹製のミニチュア

アオキ
ある日このミニチュアがいきなり机に置いてあって。「ケンケン偉い!かわいい!ずるいぞ!」って盛り上がりました。

それで、まずはこの案を含めてたくさんの案の試作を、実際の鉄素材で検討していただけましたね。


永井さん
そうですね。いただいた提案自体が実現可能性が高いものばかりだったので、とにかくできるだけ多くの試作をしました。



2.心に刺さる1つを


アオキ
提案させていただいてから3ヶ月後くらいかな。試作ができたということで、背丈を越えるようなスケールの案もあったので、僕が実家に帰省するついでに、こちらの工場まで見に来ました。

見せていただいた試作はどれも良くできていたんですけど、これだけのラインナップを全て完成させて世に出すとなると、これは数年かかるぞ…って。


永井さん
強度面やコスト面で、まだ不安があるものもありましたしね。

数多くの試作の一部

アオキ
それで「シリーズとして世に出すのではなく、一個一個出していく体制でいきませんか?」って、その場でお話しました。

「最初は複数商品をシリーズとして」という依頼だったし、既にたくさん試作もしていたので、おそるおそるお伝えしたんですけど、あの時はどうでしたか?


永井さん
あれが、わりと良かったんですよね。


小玉さん
たしかにお客さんの立場からしたら、一度にたくさんの商品が出ても、それぞれを細かく見てられないよねって。

永井さん
僕たちは初期提案の時点から製品1つ1つの話を聞いているんで理解できているけど、お客さんからしたら「たくさん出たなあ」としか思えない。

それよりは、すごく心に刺さる1つを丁寧に説明された方が良い。それは今の僕にとってすごく腑に落ちるお話でした。

アオキ
実は「まずは一種類に絞り込みましょう」って言うのに勇気が必要だったのは、もう1つ理由があるんです。

試作を見た段階で、のちに POCHI & JOHN になるこの案だけが突き抜けて見えていたので、これに絞り込むべきとは思えていたんです。

初期の試作


アオキ
一方でこの案は、少なくとも試作の時点では用途や機能がはっきりしていなかったので、納得いただけるか不安がありました。


小玉さん
でも、すぐに決めましたよね、これで行きましょうって。


アオキ
もう即決だったので、僕はとても驚きました。


ケンケン
最初の提案時点では、足がついたカゴなんだけどフタをするとサイドテーブルとしても使えるくらいまで想定していて。座れる想定はしてなかったんです。

左から試作の古い順


アオキ
試作を事務所で使っている時に、たまたま座って「あ、座れるね」って。


ケンケン
「座れますね」って。

ケンケン
でもあんまり機能を足しても、ちょっと違う気もして。


アオキ

そうだよね。「あれもこれもできて便利!」なんて言えば言うほど「だから何なんだ!?」って思えちゃって。もうちょっと掘り下げようってことで、TENTのみんなで話し合ったんです。

これを一言で説明すると、カゴなのか?テーブルなのか?スツールなのか?この製品の一番の魅力って何なんだろう…?




かわ…かわいい…ってことなんじゃないか。


ケンケン
ちょっと名前で呼んでみようか。『ウエノスケ シタノスケ』みたいに。

ハチ?タロウ?
…ポチで良いんじゃない?
なんて話してて。


アオキ
「じゃあ長い方はジョンかな?」とか。

最初は笑って話してたんですけど、一度呼んでみると、もうポチとジョンとしか思えなくなってきて。もうこれしかない!って。

JOHN

ケンケン
ポチとジョンって名前がついた瞬間に、僕自身すごく愛着が湧いたんです。カゴでありテーブルでありスツールでもあるという多機能さが自然な魅力として伝わる感じがして。

ケンケン
だからこそ、小玉さんと永井さんにもこの名前の意図を伝えなきゃと思って、まだ依頼されてもない段階だったんですけど、先回りしてカタログ資料を作りました。

名前を提案する際の資料のごく一部

小玉さん
ネーミングを提案された時は感激しました。そうきたか!って。


永井さん
資料も含めて、僕たちが大好きな感じですね。


小玉さん
うちの工場にも試作が置いてあったんですけど、普段はあまり喋らない感じの固い職人さんがそれを見て「なに、あのかわいいの!」って言ってくれてたりしてて。

小玉さん
だから POCHI & JOHN っていうネーミングは本当にスッと心に入ってきました。



3.人の手で作られる様子


アオキ
試作から製品に至るまでに、製造面で苦労された点はありますか?


永井さん
もともと工場をしっかり見ていただいてからの提案だったこともあり、かなり作りやすかったです。本当に少し、強度のためや作りやすさのために、見た目にはわからないくらいの変更をしました。


ケンケン
一個めの試作からクオリティが高かったので、「すご!」ってなりました。普段はなかなか、こんなこと無いんですけど。

ハルタ
鉄については安心のクオリティだったけど、木はわりとかかりましたよね。


ケンケン
ちょうどウッドショックで木材の原価が上がり続けていたこともあって、どの樹種でどこで製造するかという部分はギリギリまで検討を続けていました。

最終的にはラワン材を採用して。さまざまな木材加工先を探した結果、フライパンジュウでもお世話になっている山形県天童市の工場で加工していただいています。

木材工場の様子はこちらから


ハルタ
さっきJOHNが作られる様子を一通り見学させていただきました。

永井さんは「作りやすい」とお話されてましたけど、実際の作業を見ると、ものすごく手間がかかってますよね。

ハルタ
鉄の棒のカットも曲げも、溶接の数なんてとんでもなく多いし。

ケンケン
鉄の棒を溶接してるってことは知識としては知っていたんですけど、あれだけの本数を、きっちり水平や並行をとりながら作るのは、かなり大変なことですね。

ケンケン
見学しながら「ごめんなさい!ありがとうございます!」って思いました。


ハルタ
加工が終わった後の検品もすごく丁寧ですよね。角度を微妙に調整したり、磨いたり。こんなに丁寧に作られ送り出されてると思うと、見てる側としては愛着が湧くというか。

アオキ
工場って、見学する前は「機械がどんどん作ってる」ってイメージを持ってしまうんですけど、本当に人の手で作られてるなあって思います。

永井さん
うちはオーダー家具もやっているので、職人の手にかかっている部分がとくに多いのかもしれないですね。


小玉さん
工場に併設されたショールームからは、職人が手作りしている様子をいつでも見学できるので、お近くにお越しの際には立ち寄っていただけると嬉しいです。

見学すると、こんな面を被れます!


4.空間が明るくなる


アオキ

最後に、これを読んでいる方に伝えたいことなどありますか?


ハルタ
製造の現場を見ると、無機質な物体を作っていると言うより「かわいいアイツが生まれる瞬間」っていうのがあって。


アオキ
わかります!さっきまで部品だったのに、JOHNになる瞬間がありました。

ハルタ
本当に丁寧に、いろんな人の手が掛かって生み出されている POCHI & JOHNなので、大切に使っていただけると嬉しいです。

ケンケン
先日、中目黒の事務所にPOCHI & JOHNを飾ってみたんです。そうしたら、その場所全体がなんか「かわいいゾーン」になったんですよ。



小玉さん
それわかります!うちのお店にも展示してあって「かわいいよね」っていつも和んでます。

ケンケン
あるだけで空間が明るくなる、かわいくなる感じがあって。そういう点でオススメしたいです。


永井さん
いろんな空間に置かれている様子を見てみたいですよね。


アオキ
SNSなどで写真を上げてくれると「ああ、この子はこんなお家で可愛がってもらえてるんだなあ」って、すごく嬉しいですね。

今日はありがとうございました!


永井さん 小玉さん
ありがとうございました。




POCHI & JOHN が生まれる様子を、TENTのケンケンが1本のムービーにまとめました。現場の空気を感じていただけると嬉しいです。



POCHI




JOHN




「♡マークのスキ」は、noteにアカウントを作っていない方でも押すことができます。この記事を「いいな」と思った方は、気軽に押してみてください。

Twitterやってます
https://twitter.com/aoki_TENT
Instagramやってます
https://www.instagram.com/aoki_tent/?hl=ja
YouTubeやってます
https://youtube.com/playlist?list=PLwtR6grbO_fhFbeSa2rjDHEFZipihIivk











この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?