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見積もりと向き合うコツ

「見積もりについて教えてください」

前回の「形」に続いて

うえださんから、そんな質問をいただきました。

ウエダさん

1.まずは見積もりだ

ウエダ
けっこう前の話になるんですけど、アオキさんが「夢を夢で終わらせないためには、まずは見積もりだ!」って話をしていたじゃないですか。


アオキ
「ググって工場探して、資料や図面送って、見積もりと納期を聞こう」っていうやつですね。


ウエダ
僕はその通りに行動してみたんですけど、工場から出してもらった見積もりが「高い!」ってなってしまったんですよ。

そこで諦める人って多いと思うんですけど、数多くの製品を世に送り出してるTENTさんは、こういう見積もりを受け取った後どうしてるのかを聞かせてもらえませんか。


アオキ
なるほど。


2.次は内訳だ


普通に日本で暮らしていて、買い物する時に「1000円」って言われたら「ああ、1000円なんだ」って受け入れて、買うか買わないかで終わりですよね。

アオキ

アオキ
だからウエダさんが言う通り、工場から想定よりも高い見積もりが来たときにも

A : あきらめる
B : 他を探す

の2つの選択肢になっちゃうと思うんです。
でもできれば、製品化を実現するために

C : 値引きを要求する

という選択肢が欲しくなりますよね。
ただし、工場は僕たちにとってパートナーなので一方的に値引きを要求するなんてことはしたくないじゃないですか。

そこで重要なのが見積もりの内訳を知ることです。


ウエダ
内訳(うちわけ)ですか。


アオキ
たとえば木製品で言うなら、材料代、カット代、削り代、ヤスリ磨き代、塗装代、印刷代、輸送代、などなどの細かい項目のことですね。

内訳を見て「塗装がやたら高いなあ」と思ったなら、なぜ高いのかを工場さんへ聞いてみる。そうすると、良かれと思って3回も塗装してくれてたりする。

製品の性質上、塗装は1回で十分なのであれば塗装工程を減らして見積もり金額を減らすことが可能になる。そんなことを積み上げていきます。


ウエダ
ふむふむ。


アオキ
見積もりを受け取ってはじめて、工場さんと対話する準備が整うというイメージです。工程をより洗練させられるように一緒に知恵を絞って見積もり金額を理想に近づけていきます。


アオキ
そしてこれは僕たちデザイナーがデザインのお仕事を受注するときも同じなんです。しっかりした内訳があった上で見積もりをしていれば、そこから対話を始められる。


ウエダ
なるほど、見積もりって単なる金額の話ではないんですね。対話の始まり…


アオキ
まずは見積もりだ。次は内訳だ!ということです。



3.小規模だからこそ


ハルタ

大きな会社で製品を作るとなると、厳密に「原価いくら以下じゃないと」とか決まってると思うんです。

でも個人が小規模にものづくりをスタートしたいのであれば、もうちょっと違う考え方があってもいいかもと思います。

ハルタ

アオキ
はじめての自社製品 BOOK on BOOK は、最初ものすごく利益率の低い状態で世に出しましたよね。どうしても出したかったから。

ハルタ
世に出すことで得られる経験って、すごく価値がありますもんね。


ウエダ
経験した今だからこそ、その話すごいわかります。


アオキ
世の中には何万も何十万もする情報商材やワークショップがあるんだから。自分の製品を作って世に出すなんていう貴重な経験は、利益率が多少低くてもやる価値があることだと思います。


ツジ
僕もそういう考え方で、まずは自分の製品を世に出してみたんです。そしたら予想外に好調で、たくさんの方に買っていただけました。

そうなると、さすがに週末の時間を使い尽くしても溢れてくる作業量になってくるので「利益についてきっちり考えないと!」って思いました。

ツジさん


ツジ
でも一度決めた価格を後から変更するのって、上げるにしても下げるにしても、お客さんに申し訳なくて。その辺はどう考えてますか?


アオキ
うーん、僕個人の考えなんだけど、最初の頃に買ってくれる人って、何処の馬の骨ともわからない人が作った不思議な製品を「えいや!」って勇気出して買ってくれてるわけじゃないですか。

後から価格が上がる分には、そういうありがたい人に「早めに買ってよかった」って思ってもらえるから問題ないと思うなあ。


ウエダ
たしかになあ




4.見積もりという開発プロセス

ツジ
世の中でそれこそコンペとかSNSとかでデザインのスタディを公開してる人って大勢いて、かつては僕もその一人だったんですけど。

お金が関わってないところで「プロトタイプです」ってやってるのは、精度の良いアイデアに至る機会を逃している気がしてまして。

アオキ
ふむふむ


ツジ
まず、実際に工場から来た見積もりを見た時に「このアイデアにこの金額を投資する価値が本当にあるだろうか?」ってすごく冷静になれますよね。

あとは、アオキさんがさっき言っていた、内訳のところ。

工程として何が必要で何が不要か。素材を加工法を変えることはできないか。細かく見直す段階でそのアイデアのコアが何なのかに向き合いざるを得なくなる。ここが本当に大きいなと思います。





アオキ
そうそう、コストと向き合うっていうのは「値引き」とか「妥協」じゃないんですよね。アイデアをより洗練させるために必要な工程。



ウエダ
見積もりをとってから工場と対話するというのはTENTさんにとって重要な開発プロセスでもあるんですね。


ハルタ
それは確かにそうですね。そこから企画そのものや構造の見直しをすることは良くあるから。



5.ルートによって変わる


アオキ
そもそも、世の中の商品の価格がどうやって決まってるのかって、普通に生活してたらわからないですよね。


ウエダ
はい、なんとなく「この製品ジャンルはこれくらい」っていう相場感で見ている気がします。


アオキ
実際には、商品の価格にはいろんなものが乗っかっているんです。たとえば、大手量販店チェーン店に置かれている商品だと、
・材料屋さん
・工場さん
・メーカーさん
・問屋さん
・店舗さん
それぞれが利益を得なければいけないわけです。

イメージとしては、工場からメーカーが250円で仕入れたものを、問屋さんに400円で売り、それを問屋さんは店舗に600円で売り、店舗はお客さんに1000円で販売する。

アオキ
一方でウエダさんやツジさんが始めた個人でWebで直販する方法だと工場からの仕入れが250円のものを、1000円で販売する必要なんてないですよね。500円で販売しても良いかもしれない。


ウエダ
コンビニで100円で売っているお菓子、いったい原価はいくらなんやろ…?っとかめちゃくちゃ気になってくる話ですね。


アオキ
そうそう。どちらが良いと言う話ではなくて、販売ルートによって商品の価格って全然違う考え方になるんだなーって思ってもらえると、ものづくりする時に参考になるのではと思います。



6.悩み続けるくらい大切

ツジ
工場から受け取る見積もりに関しては聞いてきたんですけど、デザイナーとして見積もりを出す側の話としては、何かコツというか、気にしていることはありますか?


アオキ
ひとつ、これは経験上の話なんですけど理由なく単なる値引きは絶対にしちゃダメです。

発注側は値引きしたことなんて覚えてなくて。「引き受けたからには100%の力でやれ」と思うものなんです。一方で受注側は値引きしたことをずっと忘れないから「値引きしたのにこんなにやらされてる」と思いがち。

ツジ
めちゃくちゃわかります。

僕は昔、友人のロゴデザインを無料でやったことがあったんですけど、こっちは「ボランティアだから」って思っちゃうし、友人も「無料だから言いづらい」ってなっちゃって。結果、良いアウトプットを生むためのピュアな関係性が確立できなかった。


アオキ
お金が全てとはもちろん思わないですけど、そこにきちんと向き合うことで見えてくることもあるから。良いものを作るためにも、やっぱり見積もりは大切ですよね。


ウエダ
自分たちの見積もり金額を考えるときは、どんなふうに考えてるんですか?


アオキ
昔はかなり悩ましかったんですけど、最近は考え方としては整理されてきてます。

まず、TENTがクオリティの高いアウトプット出すためには、メンバーの各人が健康で楽しく毎日を過ごせている必要がある。そのために必要な金額は見えてくるので、基本的にはそこから工数(作業にかかった時間)で算出してますね。


ツジ
理屈ではわかるんですけど、それで算出した見積もりを出すときってめちゃくちゃ悩みませんか?高すぎないか?とか安すぎないか?とか。


ハルタ
根が真面目なんですかね。高い見積もりにもしたくなくて、正しい対価を提示したいですよね。



アオキ
やっぱりここで大事なのが、序盤にお話した「内訳を見てしっかり話し合おう」という部分。未来の作業を具体的にイメージして見積もる。難しいけど向き合うしかないですね。


ハルタ
だからまあ、正解はないというか、僕たちもずっと悩んでますよ。
でも見積もり金額に向き合うことも開発プロセスの重要な要素だと思って。悩み続けて向き合い続けるしかないんじゃないでしょうか。


ウエダ
なるほどー。なんだかんだ、お二人も悩まれている問いなんだってことがわかってホッとしました。今日もありがとうございました。


アオキ
よかった。まあ、これからも悩んでいきましょう。


ツジ
ありがとうございました。





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