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思い出すのはだいたい夜。

僕は今年で大学五年目になるが、それなりに濃い時間を過ごした。

精神疾患になって家から出られなくなったり、コロナで大学をボイコットして家から追い出されたり、休学したり、休学中に住み込みでバイトしたり、その住み込み先がやばかったりで、色々あった。

どれも当時は笑い事ではなかったが、今は笑える。
それは時間の持つ効力としか言いようがないし、時間は偉大だと思う。

大半がしんどいことであった。
精神疾患に関しては今も薬無しじゃ生きていけない。
それは置いといて、休学中だ。
なかなか過酷であった。厳密には親戚の知人の仕事の手伝い、なので労働基準法ガン無視で「手伝い」だった。

それでも実家にいるよりはマシなほど親子関係は最悪だった。
まあ家庭の事情はどこも大変だろう。

過酷な状況下だったからこそ、思い切った行動が取れたり大切な思い出ができる。

あまり使うのは気が進まないが「エモい」思い出は割と持っている。

終業後に職場の後輩と朝まで酒盛りしたり、深夜の、田舎の国道をママチャリで爆走したり、免許取り立ての後輩の車で峠を攻めたり、そこでしかできないこともたくさんあった。

恋もした。
職場繋がりで関係を持ったのは8歳年上の女性だった。
バツイチだった。彼女はとても端正な顔立ちをしていて、可愛いというよりは綺麗だったが、時折のぞかせる八重歯が「可愛い」と「綺麗」を両立させていた。

僕は彼女の家まで終業後23時から自転車で1時間以上かけて通った。中古で買った電動機能が使えない電動自転車だ。ただただ重いだけの。だだっ広い国道をラブソングを背に駆け、マイナスイオン的なものと木々の匂いが体に入り込んでくると距離的に1/3進んだことになる。そこから立ち漕ぎで山を越えて下った先にある緑色のコンビニでコンドームと酒を買ってラストスパート。彼女の家に着くのは1時近くで、そこから酒とおつまみを食べながら映画を観て、映画がだいたい中盤になる頃にどちらかがスイッチを切って別のスイッチを入れる。ワンルームの、1箇所にまとまっ電灯スイッチを片手で乱雑にシャットダウンさせる。部屋が一気に真っ暗になると彼女は僕に口づけをしながら服を脱ぐ。僕の性欲は人並み(だと思う)にはあるが彼女は結構強かった。僕もそれに応じて服を脱ぐ、互いに下着姿になるともう1段階ギアが上がり、キスも愛撫も徐々に熱を帯びる。息遣いが荒くなる。互いに下着の上から体の中に入るように密着する。気がつけば互いに何も身につけておらず、そこからはだいたい正常の範囲ではない。酔いも相まって僕らは愛に籠る。

そして朝5時に起きて一緒に朝食と服をとって何事もなかったように彼女は出勤、僕は職場兼自宅に帰るのだった。

という生活を半年以上していた。

後輩にしろ彼女にしろ、多くの思い出は夜の出来事なのだ。
深夜のドライブにセックスにあれやこれ。

夜というのは意識が曖昧になりやすいのか、いや、あるいはそんな単純なものではなく、もう一つの自分がいるのかもしれない。

なんにせよ、多くの思い出は夜の出来事なのだ。


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