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3階角部屋補講ism(高校時代エッセイ)

自称進学校である我が校では容赦無く補講が開催されていた。

僕は野球部に所属していて、それも割と練習が激しい学校だったので、補修に出て練習がサボれるのでむしろ嬉しかった。

英語の補講は校舎の3階の端の教室で行われていた。
そしてメンバーも大体同じだった。馬鹿共である。

大変不名誉ではあるが、補講のおかげで練習がサボれるのでこの時間は貴重な青春タイムでもあった。

放課後の教室、校庭から聞こえるファイトー、帰宅部が隣の教室でだべっているのも新鮮であった。我が野球部はグラウンドが校庭ではないところにあったので放課後に学校にいること自体不思議な感覚になる。これは何度補講に出場しても変わらなかった。

この日は、2学期中間試験の補講で、確か10月上旬だった。

夏は完全に去り、秋がきたかと思えばもう冬かあ、みたいな季節である。
寒がり勢はマフラーを着用し、バカップルは寒さを口実に登校時にこれみよがしにいちゃつく。女子生徒が圧倒的に多い我が校では男女の需要と供給バランスが破綻しかけており、デフレ状態になっていた。男安である。

我々坊主集団にも彼女たるものがいる輩は割といて、そろそろ俺にもモテ期が、とソワソワしている間に2年生の後半に差し掛かっていた。無情である。

10月の夕方は肌寒く、ついこの間までエアコンをつけていたのが嘘みたいだった。西日が差し込む3階端部屋で僕らは補講を受ける。過去分詞とか、分子構文とかわかりそうでわからぬ文法をわかりそうでわからぬ先生の説明で頭に入れようとする。

本当なら部活をしている時間に制服を着て勉強しているのはちょっとした罪悪感と、ちょっとした興奮が共存していて、まるで逃亡でもしている気分だった。

補講は2時間。最後に問題を解いてOKを貰えば解放、部活に行ける。
我々坊主集団はギリギリまで粘って、練習が終わる時間に走ってグラウンドに向かい、監督から小言を喰らって1日を終えた。

10月の補講であった。



生活費になります。食費。育ち盛りゆえ。。