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スーパーゼネコン、なんで入社して、なんで辞めたんだっけ⑤

転職編

 私の精神は順調に回復を続け、2年が経った。

 頼られすぎて(調整不足で?)かかってくる電話は日に100本を超え、着信音が怖くなりマナーモードを外せなくなったり、プレッシャーで胃潰瘍になったりと、今振り返ると決して順風満帆ではなかったことに気が付くが、それでも精神的にはかなり安定していた。また、信頼関係の築けたメンバーと、地図に残る大きな現場を作り上げていくこの仕事にやりがいを感じ、施工管理の仕事で今後も食べていける、という自信が付いてきていた。自分のことをゴミくずとおもい、精神薬を飲まなきゃ出社できなかった数年前のことが嘘のように思う。

 一方、世の中では新型コロナウイルスが急拡大してきており、皆初めて経験するパンデミックにどう対処するべきか分からないでいた。
 そんな中、我が家に第2子が生まれることになった。
 出産予定日は長期休暇と重なっていたため、通常であれば長期休暇を利用して、出産立合いのため里帰りしている妻のもとへ帰省していたと思う。しかし、新型コロナ流行を理由に立ち合い出産はNG。そもそも妊婦は県外者との接触自体が禁止されてしまった。会社からも長期休暇中の外出に対しては強い自粛を求める通達が出ていた。

 長期休暇の8日間、半強制的に何もすることが無くなった。こんなことは、社会人になって一度たりとも訪れなかったことだった。初めのうちは映画を見たり、ゲームをしたりと過ごしていたが3日もすると飽きてしまった。その結果、ぼんやりと思考が自分自身の人生観に向かった。

最初に頭に浮かんだ疑問はこれだった。

「本当にこのままの人生が最善だろうか?」

悪い人生ではないが、たぶん最善ではない。少なくとも仕事のせいで子どもの出産に立ち会えない人生は望んでいなかった。

「では今の仕事を続けているのはなぜ?」

それは高い収入を得られるから。多くの周りの人の期待を背負い、必要としてくれる喜びを感じることができているから。

「今一番大切にしたいことは何?」

家族との時間。どんどん成長していく子どもとの時間はあとからは取り戻せない。人生はたくさんのお金を集めたり、多くの人からの期待を集めるゲームではないはずだ。

もっと人生を面白く。積極的により良い環境を目指してもいいのではないか?

偶然与えられた十分な時間からこのような気持ちが芽生えた。この気持ちも 環境の変化がもたらしてくれた結果のように思う。

その後すぐにビズリーチに登録、転職活動をスタートするに至った。詳細は割愛するが、自分でも想像していなかった企業からのお誘いが入り、無事転職にこぎつけることができた。

これまでの経験を通して「物事がうまくいくかどうかは、環境とタイミングがかなりの部分を占める」というのが、私が信じるようになった考え方だ。
だからこそ、よりよい環境は自分で選び取っていきたいし、漫然とタイミングを逃すことの無いようアンテナを張っていたいと思う。
一見すると前向きで、楽天的な考え方のようにも思うが、二度と心を病むような環境におかれたくない。そうなった場合でも逃げ出せる状況をつくりたい。という、とてもとてもネガティブな恐怖心が根底には流れている。

巡りあわせで入社を決めたスーパーゼネコンではあったが、10年間身も心も捧げた(捧げざるを得なかった)結果、いくつかの資格と、土木工事の現場監督の経験と、上段に記した考え方を手に入れることができた。

入社した頃とは価値観も大切なもの大きくかわったことに気がつく。10年前の自分が今の自分を想像できなかったように、10年後の自分は、今はまだ想像もつかないような価値観や大切なものを持っているんだろうなと思う。

今後の自分が何を思おうが、その時持っている価値観に従ってより良い環境、よりよい人生を目指せるよう、自分が成長できると考える挑戦をしていきたいと思う。

つらつらと書きたいことを書きたいままに書いてきたけれど、これでおしまいです。

これまでの経験を振り返るいい機会になりました。最後まで読んでいただいてありがとうございました。


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