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吉原遊郭田村の話。 / 20240604tue(400字)

昨年の夏、吉原遊廓で働いた。
六万五千円の高級ソープのボーイだ。
直属の上司田村は同郷だった。
彼は中学を卒業して上京。銀座でボーイをやるが凄絶な虐めに遭い人格が壊れる。逃げた吉原でも虐めに遭った。暴力行為に及んでクビになる。ライバル店の部長に店長で誘われて断る。主任で落ち着く。
田村は仕事はできたが、廊下の赤い絨毯の上でMCハマーを踊る男だった。僕はマイムでライフル銃を抱えて匍匐前進をやった。楽しかった。
僕が入店した日、田村と店長の会話が頭に残る。
「蒼井はどっちに育てます? 」
この意味は「店の色に染まる、自己中でも出来る社員になる」かだ。
どちらの社員を求めていたのか。
店の鋳型に嵌めて働き蟻にするか傍若無人な幹部にするか。
吉原遊廓でも遊郭なりの社員教育スキームがあった。
「蒼井は社員だ。バイトに舐められぬようにまず仕事を覚えろ」

短歌:

秋までに
あとは書くだけ
家移り(やうつり)ぞ
人を熨(の)してけ
職はなんでも

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